最近日本でも「インテリジェンス」ブームが吹いていますね。「インテリジェンス」とは和訳すれば、「諜報」、簡単にいえばスパイ活動です。つまり、CIAやKGB、MI6といった各国の特務機関によるスパイ活動のことです。この活動には、情報を取るだけでなく、情報を取ろうとするスパイをみつける「カウンターインテリジェンス」=「防諜」活動も含まれます。日本での最近の火付け役は、鈴木宗男とのかかわりで国策捜査の対象となった元外交官・佐藤優や元NHKワシントン支局長・手嶋龍一でしょう。手嶋氏は、私が9・11直後にニューヨークでテロ取材をしていたときのNHKワシントン支局長で毎時間テレビに出ていたのでよく覚えています。その、なよ、とした風貌から、世間のあらぬ噂でホモ説まで出ていましたね。しかしその風貌が相手に信頼感を抱かせ、情報を取りやすくするのですから面白いものです。
さて、日本の話はここら辺にして、毎週水曜午後8時から、NHKにあたるデンマークの国営放送「DR」でドキュメンタリー番組が放映されます。なかなか骨太なものばかりで私は毎回楽しみにしています。今晩の内容は、「CIAとデンマークとの関係」でした。要は、テロを未然に防ぐため、CIAは世界中で極秘裏にテロとの関連が疑われる者を拉致し、米軍基地などに送って拷問にかけるなどして尋問し、情報を取っています。ご存じないみなさんは驚きかもしれませんが、古来こうした諜報戦は世界各国で行われており、北朝鮮の例をみるまでもなく、日本でも似たようなことは行われていると仄聞します。番組では、CIAが拉致した者を運ぶ輸送ルートの中継点として、ヨーロッパからアメリカの中間に位置するグリーンランドの飛行場が使われている、ということを丹念な取材で裏づけしていました。
内容についてはさもありなんで、なかなか面白かったです。しかし、さらに面白いと私が思ったことは、この番組放映直後のニュース番組のトップでこのネタを取り上げ、外務大臣が生出演してコメントしていたことです。もちろん外務大臣は、「アメリカはみずから説明しなければならない」と表面上は話していましたが、外交問題にする気ははなからないわけで、デンマーク政府は調査するつもりはない、とも答えていました。しかし自社のドキュメンタリー番組のネタを直後にすぐにトップニュースで扱うということは、報道部門とドキュメンタリー制作部門が必ずしも一致しないNHKではよもやありえません。
そしてもっとも面白いと思ったのは、番組終了直後からDRのホームページ上に、番組内容はもちろん、インタビュー内容などのさまざまな裏づけ資料が掲載されたことです。マスコミは情報公開を生命線としていますが、自らの情報公開は案外おざなりなものです。日本のマスコミでDRのホームページのようなことは絶対にありえません。取材内容をそこまで赤裸々にすべて出すのは返って格好悪い、という感覚があると思います。ただ、日本のマスコミを擁護すれば、DRほどのことはそうそう世界でもないのは確かです。翻って考えれば、デンマーク人の情報公開への考えは骨髄にまで浸透しており、その結果が、汚職もないガラス張りの国家形成に役立っているといえるのではないでしょうか。そんなことをテレビ画面を眺めながら感じた一晩でした。

DRサイトから引用。中継点となった飛行場があるグリーンランド南部・ナルサルスアックの風景です。