Teluさんがコメントで書かれていたムハンマド風刺画を再掲したデンマークメディアについては、コメントのレスで書くのは少々もったいないので、本記で扱いましょう。
今回の暗殺計画の容疑者逮捕の翌朝の国内各新聞は、ムハンマド風刺画の一枚を再掲しました。17紙に上ったとのことです。その結果はなかなか激しいもので、難民が固まって暮らしている地区を中心に全国で、車や学校が焼かれ、イスラム系の若者が多数逮捕されました。さらに折悪しく、政府がイランへ外交団を派遣する直前で、イランが政府に詫びを求めてきたため、とんでもない、と突っぱね、結局派遣が中止にもなりました。
これに対し、デンマークのメディアは毅然としています。全国紙POLITIKENの主筆、トゥイエ・セーデンファデンは再掲した理由について、「風刺画の情報をあらためて伝えることと報道の自由を訴えるため」と述べています。報道の自由については、「脅威にさらされれば連帯することは大切だ」と主張。他紙では話し合って同時に掲載に踏み切ったところはあったかもしれないが、POLITIKENは独自の判断だった、とのことです。その結果が17紙一斉掲載だったというわけです。
もちろんメディアも結果を予想していなかったわけではないでしょう。容易に想像できたはずです。しかしそれでも掲載に踏み切ったところに、主義主張のためには万難を甘受してでも貫き通すという一種の潔さを感じます。さらに、「Solidarity(連帯)」という意識がデンマーク人の血脈の中に流れており、普段は競い合うメディアが本当のいざというときには団結するという姿勢に、私は率直に「格好いい」と思いました。
今回の再掲について、イスラム教社会を理解しない「メディアのおごり」という人もいるとは思います。しかしセーデンファデンは「もはや現在の社会は万人に人気がある社会ではない」とも言い切っています。こうした社会の中で、意見が異なれば徹底的に論争を戦わす、というのがデンマークなのです。この手法はデンマーク人にとっては、宗教の信条のようなもので、これを回避させられることは、イスラム教徒が風刺画掲載に激怒するのと同じぐらい琴線に触れることなのです。いうなれば、風刺画問題は、信条対信条の戦いで、どちらも譲れない線であり、もう後は時が解決するのを待つしかないのだと思います。
POLITIKEN紙より。デンマークは中古車が多く、車体保険に入っている車は比較的少なく、かなりの車がかわいそうに焼かれ損だそうです。