今年の2月から2ヶ月に渡って進めて来た
大変ユニークなプロジェクトがある。
琉球ガラス村からの仕事依頼で、
ガラス商品のブランディングとアイテムのデザインなんだが
琉球ガラスの商品開発ではない。
普通はそう来る所だが、なんと
北海道のガラス商品の企画なのだ。
なぜ、北海道かというと、
琉球ガラス村が北海道へ進出し、
新たな工房と直営店を設立したわけです。
しかも、日本最北端の稚内(わっかない)に
『北緯45°北のガラス館』と銘打っての展開です。
そこで、琉球ガラス村のノウハウから
国内でも珍しい
産業廃棄物であるホタテ貝の殻を、原料に添加した
“ホタテガラス(仮称)”を開発したのです。
(殻より焼成した炭酸カルシウムを原料に使う)
琉球ガラスは米軍統治下で廃ビンを溶かし
再生ガラス製品とした、発展の経緯が有名です。
今回の“ホタテガラス”のプロジェクトは、
再生ガラスを一歩進めた、いわば
再生資源ガラスなのです。
琉球ガラス村は業界でも先駆けて
国外(ベトナム)に工場を造った事でも知られている。
県内に留まらない攻めの経営があったからこそ、
現在の琉球ガラスの市場が確立されたと言っても
過言ではない。
(琉球ガラスと命名し
世に打ち出したのも同社である。)
ただ、その事が保守的、もしくは過剰に自閉的な
一部の体制から「県産品市場が乱される」との
批判にさらされる事も少なくない。
その様な安直な意見というのは、現在の日本経済発展を
完全に無視した考え方と言ってもいい。
間違いなく手仕事や工業労働というのは、
アジア諸国へ移行しているし、
工芸の世界もその例外ではないわけだが。
それはマイナスの要因よりプラスの要因が大きい。
その様な社会全体での低価格、品質向上等の
発展があって初めて、
個人工房や作家などが自己表現の場を得ているはずだ。
(ユニクロで安い作業着を買っているはずだ!)
今回のような、沖縄から県外への進出は、
ややもすれば、この様なやっかみにも似た
屈折した批判をかいかねない。
なぜ、琉球ガラスが北海道に進出する必要があるのだ、と
それは当然、企業だからである。
伝統工芸を伝えていく役割を担った、
日本最大の宙吹き工芸所であり、
新たな新天地を求めたフロンティアスピリッツを忘れない
逞しい一企業でもあるのだ。

<急な冬物はユニクロで。富良野“北の国から”のロケ村と北一ガラス>
話が固く長くなりましたが…
で、僕達に声がかかりました。
急ピッチで企画が進められて行きました。
北海道へも行きました。あんな雪だらけの景色を
初めて見ました!
っていうトロピカル系の僕達ですが、
商品開発に土地柄はあまり関係ないんじゃないかと
今の所考えています。
この様なプロジェクトを必要とするマーケットにおいて
文化的に大差はないはずです。
Tシャツにジーンズを履いて
コンビニやインターネットで買い物をするはずです。
飛行機にも乗って現地へ行けるし。
その様な環境を最大限に使ってリサーチし
あと、なんといってもイメージを膨らませて、
“ホタテガラス”にストーリーとカタチを見出しました。
『北45°』と『ヴィーナス・グラス』です。
北緯45°という最北端の記号としての“45°”が強烈だったので、『北45°』という商品ブランドを考案してロゴをつくり、イメージを統一しました。和風でモダンなイメージです。北欧に負けるもんかっ!って感じで。
ヴィーナス・グラスコンセプト文より
現在国内のおよそ8割りを占める北海道のホタテ生産。古くから大変有名な特産物です。かつてペリーが来航した際に新種として函館から持ち帰り、その学名を「Patinopecten yessoensis(JAY)(蝦夷産の櫛のある皿)」と命名されるほどです。フランスにおいてはサンドロ・ボッティチェッリの名画「ヴィーナスの誕生」に由来して、ホタテ貝を別名「conque de Venus(ヴィーナスの貝)」と呼びます。この事から、女性的で色彩溢れる繊細なガラスのイメージと“ヴィーナスの貝”と美名を持つホタテ貝とが絶妙にマッチするのです。
神秘の愛と普遍の美の象徴でる女神“ヴィーナス”。その“ヴィーナスの貝”を主原料にした、北のガラス館オリジナルグラスシリーズ名を“ヴィーナス・グラス”と名付けます。神秘と創造の大地北海道、その地で誕生した北のガラス達に最も相応しい、繊細で瑞々(みずみず)しいイメージです。可憐な女神の新たな神話のはじまりです。
打ち合わせ風景&アトリエを埋め尽くすガラスのサンプル…。
『北45°』と『ヴィーナス・グラス』の刻印もバッチリ入っています。
とにかく、琉球ガラス色を払拭するというのが
ある種、テーマでもありました。
これは、逆に琉球ガラスが何をもって琉球ガラスかを
知るためのプロセスでもありました。
ポイントは“色”と“厚み”でした。
ホタテ原料を使用している『ヴィーナス・グラス』は
あえてクリアーで勝負。
そして出来る限り薄く仕上げてもらいました。
職人さんの卓越した技術があってこそです
イメージフォト
(
サンプルの撮影の為、カラーは実際の商品と多少異なります)
徳利猪口セット(お猪口が徳利の口にぴたっとはまります)と、ソースボトル
直線的ラインの『アダム』曲線的ラインの『イブ』大中小のサイズがあって、様々なシーンで使えます。『アダム』と『イヴ』は、それぞれ一つの型から、スモール、ミディアム、レギュラーのサイズが出来ています。少なめの気泡がアクセントになり、薄く仕上げているものの手作りの心地よい揺らぎがたまらない魅力です。早速家でも重宝しています。
今回、オリジナルカラーを作りました。四季をイメージした、スプリンググリーン、サマーラベンダー、サンセットオータム、ウィンターブルーの4色です。下の写真は『春夏秋冬』というグラスです。右が「春夏」(スプリンググリーン、サマーラベンダー)で、左が「秋冬」(サンセットオータム、ウィンターブルー)です。あまり見た事のない色の組み合わせで、キレイに仕上がりました。
因に雪は青かったのだ…。
あとは実際の販売が待っています。
これからが勝負ですね。
売れろ〜!!
チャンスがあれば、
沖縄でも皆さんに実物を紹介したいと思っています。
今回この仕事を通して、琉球ガラス村のポテンシャルの高さ
ひいては沖縄の現代ガラス工芸の可能性を
強く感じました。
デザインの力が少しづつ認められている証拠に、
僕等の様な小さなデザイン屋にも
こうして声がかかるのだと思います。
単に装飾としてのデザインではなく、
デザイン的に思考するチームとして機能する様に
働きかける仕事が出来ればいいなと思います。
県内の方こそ、この様なデザイングラスの動向に注目し、
レトロテイストの琉球ガラスもモダン琉球ガラスも
自分の生活の中にも取り入れないとソンですよぉ!
上/『グラスガーデン』(イヴ)
下/『フローラグラス』
※hidenobuデザイン
今回は、シンプルで使いやすいグラス達を紹介しました〜
この他にも、楽しいグラスが登場しますよ〜
また紹介しますね!
