なかなか更新出来ずにすみません
4月末に予定している『木花』の新作の展示会に向け
忙しくしています
その他にも今年の夏に向けての準備で
油断ならない時期です
さてさて、やっとの思いで
本題である藍染めのレポートをお届けです
無錫から乗り合いバスにちょっとしたコネで
予約無しに乗せてもらい
(そのせいで乗れない人もいたが…そこが中国)
長江を渡って南通へ
霞がかった天気でますます向こう岸が見えない
川と思えないほどの川
バスを乗せたフェリーも何回も往来するためか
とても効率のいい面白い作りになっている
前後どちらからでも車が乗り降り出来て
対岸に着いたら車はバックする必要なく
そのまま進行方向に降りられる車専用の船
日本にもあるのか分からないが僕は初めて乗った
海とは違い波は無いので穏やか
途中荷運びの船がすれ違う
聞けば家族でその船を住まいにしながら
年中各地を転々としているらしい
その船には学校に行かず暮らす子供も居たりするわけだが
酷く過酷な環境にも思えるし
船で暮らすなんて子供の頃読んだ絵本の世界みたい
と、思えたりもする
船内のトイレは(日本人からすれば)尋常でなく
ただ溝がありそこにアレをする
溝の緩やかな傾斜の先には
壁に開けられた穴
アレらは川に垂れ流されるが
アレならまだましで
近年は水銀や化学薬品等の汚染が問題になってるらしい
かつての日本の様だが
高度経済成長の渦中にあっては
誰もなりふり構ってられないよな…
岸に着くと一斉に車が降り
船はまた車を乗せすぐに出発していった
バスターミナルで降り江さんと待ち合わせる
『木花』の商品を染めから縫製まで
手がけてくれているのが江(コウ)さんの工房だ
そんな彼との初対面に先ず感激
江さんは二甲の印花不工房の経営を任せられている
奥さんの家系が代々印花布の職人さんで
奥さんの弟さんが職人の頭として技術を継ぎ
家族で印花布の仕事を守り営んでいる
江さんは本職の法律の仕事以上にのめり込むほど
印花布について熱く語る
言葉は分からないが熱意が伝わってくる
僕等とそんなに年は変わらない江さんが
頑張っている姿を見てとても刺激になるし
頼もしいなと思う
車で40分ぐらい走って(これまた延々真っすぐ)
二甲の工房に着いた
写真やビデオでは見ていたが思ったより広い感じ
染めたての印花布が出迎えてくれた
江さんの奥さんのお父さん
僕等の間での通称“お父さん”が彫りの職人で
いつも完璧に原画通りに仕上げてくる
僕等としては版の構造的な便宜性の面から
お父さんの方でアレンジしてもいっこうに構わないのだが
そこは職人魂が許さない
デザイナーの意向に極めて忠実なのだ
地べたまで頭が下がる思いであるのと同時に
もっと印花布の版の事やノリ置きの作業時の事など
こちらが勉強しないといけないと
かねてから痛感していたので
やっと来れたやっと生で見れると思った
そして直接職人さん達と握手できた
ありがとうと

<一作目の睡蓮の版を持って江さん。とても熱心に色々と教えてくれました。>
今回新しく5つのデザインを起こしてもらった
もちろん東南植物楽園の自然環境がモチーフになっている
中でもエリさんが初挑戦した『蓮』の柄が難航した
複色といって濃淡のある藍を2色と地色の3色で
表現される複雑な工程の柄で
工程上限界ギリギリの複雑さになってしまった
しかし、お父さんの方でも柄の持つ艶やかさを
十分に理解してもらっていて
イメージを崩さない程度にアレンジして仕上げてくれた
工房に実際に出向いてコウさんやお父さんの話を聞いて
その難しさがよく身にしみて分かった
『蓮』に限らず他の柄も同様に難度の高い柄になる
彼等はそういった新しい感覚が
自分たちを育ててくれるし刺激になると言ってくれる
そう言ってもらえると僕等も嬉しいが
もっと作業効率を考慮したデザイン(図案)をするために
ますます印花布を知らないといけない
本当に行って良かったし
またこれからも、もっと良い図案を考えたいと思った
エリさんと僕であった

<東南植物楽園のアイキャッチにもなっている「車輪」や、月の満ち欠けと「オオゴマダラ」が孵るところをあしらったもの、楽園の「水牛」や「鯉」の連続柄など、忠実に彫られた版。>

<「蓮」の間からバン(水鳥)が見え隠れする柄。複色用に版が2つある。とても上手くカジュアルに表現出来ていると思う。複色で上手く立体的な奥行きも出ている。もともと日本でも好まれる唐草などのルーツも「蓮」から来ているし、様々な意味で今期のテーマ的な柄になった。商品になるとひと際映えるので、お楽しみに!>
この印花布工房はお父さんで5代目
100年以上の歴史があるんですね!
代々受け継がれて来た藍甕はとても良く染まる
深い深い藍色が出る
その歴史の分の深みだろうか…
甕は2つあって交互に休ませながら
時に酒を入れて藍を元気づけるそうだ
本当に生きているって感じですね
僕達の生活の中で最も身近なインディゴブルーといえば
やはりデニムパンツではないでしょうか
インディゴの由来でもあるインドに始まり
中国、ヨーロパ、アメリカ、日本で盛んに行われていた
ポピュラーな染織が藍染めです
藍色に染める事で綿が強くなるので
(一説には蛇よけの効果もあるとか言われていました)
作業着であるデニムパンツには
インディゴブルーが使われたそうです
その他にも防虫、抗菌効果、紫外線防止や
遠赤外線による保温
逆に放熱などの恒温効果もあると言われています
(実際に使っていて、生乾きでも臭くなりにくいし、汗臭さくなりにくいっていう実感があります。凄いねっ)
正に世界中で愛される実用的な染めものだったわけです
面白いのはその染めに使う原料の植物が様々で
多種あるという事です
インジカンという成分が含まれる植物が
藍染めに使われます
タデ科、マメ科、キツネノマゴ科などがあります
(琉球藍はキツネノマゴ科になります。僕等の印花布の藍も琉球藍と同じキツネノマゴ科です。兄弟なんだねっ)
植物の中のインジカンという無色の成分が分解され
インドキシルという物質になり更に酸化し
繊維分子と結合してインジゴという藍色に発色します
この発色までに複雑な還元と酸化の化学変化を
微生物の発酵の力を借りて行います
そのせいもあって独特の匂いがあります
庶民の染料として大量に作られていた
日本や琉球の天然藍も
今ではわずかに残るばかりで
現在ではドイツで開発された(1880年)合成インジゴによる
インディゴブルーがほとんどでしょう
そんななか天然の藍染めの効果を知ると
人間の自然から得る叡智に感動するし
なによりもその味わい深い藍色に魅了されます
中国の藍も琉球藍も
上手く現代の生活に取り戻して
大事に後世に伝えていきたいものです
その一端にも満たないわずかな片鱗かも知れないが
僕等も担うところがあるかと思うと
誇れる気持ちです
だから印花布を身にまとう機会を得たあなたも
誇らしくあって良いと思います
一番にモノが生きている場面とは
使用されている時です
その時こそ博物館に飾られているよりも
真に輝いていると思います

<お父さんの手はやはり染まっています。カッコいいね!>

<版をもとにノリ置き。約1m×12mの反物に1つの版を連続させてノリ置きしていきます。ノリは石灰と大豆の粉を混ぜたもので、乾くとしっかりとマスキングされます。因に、おヒゲのダンディーはお父さんの弟さん。>

<藍甕に浸けては酸化させ、また浸けるこれを繰り返します。>

<乾いたら頑丈なノリを刀で削ります。この工程上、生地の厚さに限界があります。ニットなどは生地が破けてしまいます。>

<ここが江さん達の縫製工房。とっても可愛らいしい、と言っちゃ失礼かな。これまた最小限の設備で皆頑張っています!本当ありがとうみんな!>

<江さんファミリーと一緒に!そしてこれまた美味しい会食。野菜も魚も美味しかった〜。ごちそうさまです。>
二甲でたっぷり藍に染って1泊
また上海へと戻るのだが
上海までの帰りの道のりは大変でした
川面が霧で視界が悪く
長江の船が全面ストップで別の港から出る事になった
そこで見ず知らずの方の貨物車に
いくらか払って乗せてもらい
荷物でいっぱいの中
まるで難民の様にうずくまる事6時間
これもまた楽しい貴重な体験でした
フェリー待ちの大渋滞の中
逆走して割り込む車がちらほらいた
なんでもコネを使って乗り込む奴らとの事
日本の様にお利口に並んでられない
ルールはありがたいものだが
それは世界共通ではない
のんきに構えていたら
食事にもありつけなければ
トイレにもたどり着かない
あっちこっちでサバイバル
最も知らない人の車に乗っている僕等は
電波少年並みに逞しいわけだが…
上海にもどって最後の仕事
最終的な材料の調達や頼んでおいたサンプルの確認だ
そして仕事が終わったら買い物もしたい!と
空き時間にショッピングで女性同士盛り上がるのを
羨ましそうに思う男性一人…
の、僕であった