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昭日町の自宅にいた。
あのあと・・・しずえさんと二人で満月を見ていたあと、
私はいつのまにか昭日町の自宅に戻っていた。
よっぽど疲れていたのだろう、服も着替えず
ベッドに飛び込み、そのまま深い眠りに落ちていった。
どれほど長く眠っていたのかは定かではない。
取り留めの無い夢の中には、えいじやしずえさん、
ママや中田先生、犬山さんに、リリーさん良太君にワンコ、
ゴン・・・それに私の両親、そして今までに
この世界で出会ったすべての人達が出てきた。
私はその人達の人生の、すべてではないが
大切なワンシーンを見てきた。
そしてママのネックレスにまつわる話も知ることが出来た。
後は私自身のこと・・・
あぁ・・・でも、それを知ったときには、
たぶん私はもうこの世界にいられないだろう。
ならば私は、
自分自身のことなど何も知りたくない。
今までどんな人生を
どんなふうに過ごしてきたかなどというよりも、
今の私にとっては、
この昭日町での生活のほうが大事なのだ。
「あんたには私達のぶんまで生きていてほしいのよ・・・」
ママが何故私にそんなことを言ったのかもよくわかる。
生きていたくても死ななくてはならなかった無念、
生への執着、残してきた者への愛、それらすべての思いを、
今だ断ち切ることの出来ない人達にとって、
生きているくせにビジターとして
この世界に存在し続ける私は、
さぞかし羨ましく、また妬ましくもあるだろう。
しかし、私は、本来いるべきあちらの世界に、
果たして私を必要としてくれている者を
残してきているのだろうか・・・
それはたんに私が忘れているだけなのかもしれないが、
もし、あちらの世界に大切な者が一人でもいるのなら、
いくら居心地が良くても、
こんなに長く昭日町に居続けることはないはずだ。
おそらく、あちらで私は
愛する者すべてを失くしたにちがいない。
その失くした者達がこちらでは存在している。
それはすべて私が想念で造り上げた幻にすぎないかもしれない。
でも、確かに、ここでは彼らにいつだって会うことが出来る。
想念であろうが幻であろうが、そんなことはどうでもいい。
今やこの世界こそが私にとってすべてなのだ。
・・・・
大きな溜息をついて私は目を開けた。
本当に眠っていたのだろうかと思えるほど、
それはとても重い目覚めだった。
私はただ目をつぶり、今まで自分の身に起こったことを
ただ思い出して考え込んでいただけではないのだろうか。
そう思えてくるような目覚めの悪さだ。
でもまあ、こんなことをいつまでも
くよくよと考えていても仕方がない。
私は首をコキコキと鳴らして動かし、
両手を上げ、グインと背筋を思いっきり延ばしたら、
カチコチだった筋肉が緩んで気持ち良く、
大きな欠伸も出て、やっと憂鬱な気分が吹っ飛んだ。
嫌なことや都合の悪いことはすぐに忘れる、
それが私のいいところでもあるのだ。
〜つづく
(ママの店12前編) (ママの店12後編)
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