「飲茶・台湾料理「中国茶館」(池袋)/飲茶と台湾料理の話2」
おいしい話
えびのアーモンド揚げ。これはかなりチャーミングなお料理。
からっと揚がっていて、アーモンドの香りが素敵。写真を撮り忘れたが、揚げ物はこの他にカニ爪も食べた。カニと餡(あん:中に詰める具の事。必ずしも小豆のあんこを意味する訳ではない)のひき肉が風味豊かだったし、パン粉でフライにしていて中国料理としては目新しい、おいしいカニ爪であった。この料理の盛り付け、ケチャップの添え方がおしゃれでかわいい。ひとくちに中国料理といってもいろいろで、内陸の四川地方なんかでは独特の調味料や特産品があるし(名物料理である麻婆豆腐に欠かせない豆板醤や花椒など)、海に面していて海外との交流が古くからあった上海や台湾なんかはケチャップやバター、ウスターソースといった洋風の材料をいち早く取り入れてきた。上海のシェフがカニのバター蒸しを紹介していたのを本で見た事があるが、うまそうだった。
桃饅頭。ふかふかの皮にしっとりした蓮の餡がうまいっ。
写真にはないが肉まんの皮もふかふかだった。このお店は小麦粉の味を引き出すのが上手だ。およそ全ての点心の皮がほんとにおいしい。饅頭とか包子(パオズ:肉まんとかあんまんとかの事。小龍包も実は餃子ではなく包子の一種である)の皮は日本人はふかふかとやわらかいのが好きだから、上海や台湾のタイプが好みであろう。小麦粉料理が盛んな北京では包子の皮はもっと引き締まっているしサイズも小さいのが好まれる。ふかふかも引き締まって弾力があるのも、あたしはどっちも好きだ。
日本人は甘いものを食後に食べるが、中国人の感覚では甘い点心は特に「甜点心」と呼ばれ、甘くない点心「鹹点心」と区別されてはいるものの飲茶においては甘いものも塩味のものも一緒に食べると捉えているようだ。でもやっぱり食後に甘いものっていうのが我々としては嬉しいよね。これは烏龍茶ゼリー。お茶がおいしいこのお店イチオシのデザート。
烏龍茶ゼリーの部分には殆ど甘味はついていないが、上から濃厚で甘ったるいコンデンスミルクをかけているので、一緒に食べるとちょうどいい。さっぱりしつつもつるりんぷるりんとろりん、飲茶を幸せに締めくくってくれる。
おいしい飲茶でおなかいっぱいになったし、ゆんきょんちゃんも満足してくれたようだし、あたしはごきげんだった。店を出て駅へ向かう我々をエビス通りの電飾いけふくろうが頭上から見送ってくれた。「いけふくろう」と称するふくろうは池袋という街のシンボルで、駅の構内など至るところで出くわすが、電飾のいけふくろうはあたしの知る限りここだけ。ありがと、ばいばい、また来るよ。いつも来てるだろ?
先述のように飲茶の主役はむしろお茶であるのだが、結局お茶の写真は撮らなかったな。折角なので少しお茶の話をしよう。中国では4000年前から茶を利用していたが、飲用というよりは薬用の場合が多かった。お茶の神様である陸羽の著書『茶経』により紀元前2700年頃にお茶が人々の口に入った事が確認されている。この書は7000文字ほどの小さな書物だが、陸羽がお茶で人々の病気を治した事も記されている。飲用が一般的になったのは2千年前とされ、1400年ほど前の唐の時代にはお茶の飲用がいっそう広まった。庶民がお茶を飲むようになったのは1000年ほど前の宋の時代からだ。
現在中国茶は発酵の段階によって色による名称で区別されている。緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶(西洋の紅茶と同様)、黒茶で、緑茶は不発酵でフレッシュ、黄茶が最も発酵レベルが低く、黒茶が最も発酵が進んでいる。緑茶は「龍井茶」が有名、日本の緑茶に近いが香りが強くて味が濃い。白茶は新芽の白毛が特徴的で、お茶を蒸らす際にガラスなどを使うと白い毛が揺れて広がるのが美しい。黄茶は淡い香りと味わいを身上とし、中国では年をとらなければ黄茶の味わいはわからないとされている。烏龍茶や観音茶など日本でよく知られる中国茶は青茶に属する。紅茶好きな人ならキーマンという名の中国紅茶(「祁門紅茶」)をご存知ではないか。渋みがなく大陸的おおらかな味わいの紅茶である。プアール茶は黒茶に属する。菌の活発な活動を生かして作られる黒茶の深い香りと味わいにはややクセを感じる人もいるかもしれないが、脂肪を洗い流す力が最も強いとされるのが黒茶であり、油っぽい料理と取り合わせるのならお勧めだ。こうした区別とは別に緑茶や青茶などに花の香りをつけたものは花茶と呼ばれる。ジャスミン茶がそれ。ちなみに良いジャスミン茶というのは白い花びらの量が少ないのですよ。手間隙掛けて茶葉に花の香りを移しているので、花弁の量を多くする必要がないのだ。それに対し香りを出す為に花弁の量だけ多くしてあるジャスミン茶というのは余り手間を掛けずに作られた証拠である。
日本人が茶器に凝るように、中国人も茶器(中国では「茶具」と称する)にはうるさい。緑茶はじっくり低温で入れるが、烏龍茶は高温で蒸らす方がおいしいとされるので急須は丸いものが良いとされるとか、お茶の飲み方によって湯のみも様々であるとか。例えば黒茶は10回20回と湯を入れなおして何度も楽しむべきなので蓋付きのマグカップ状のもので飲むのが良いだろうが、お客様と優雅にお茶を楽しむのなら景徳鎮で作られた「青花(青い柄のボーンチャイナ)」の小ぶりな茶杯で楽しむのが風流というものだ。ボーンチャイナ、製陶の技術が発展したのはお茶が庶民の間でも飲まれ始めた宋代以降であり、「青花」のようなボーンチャイナが生まれたのもこの頃。景徳鎮では職人を良く言えば終身雇用、ぶっちゃけで言えば生涯幽閉して製作にあたらせたと伝えられる。ここに中国において陶器の皿を愛でる文化が成立するが、贅と巧の髄を凝らした品々は大航海時代以降には海のルートを通って遠くヨーロッパへたどり着く。ルネサンス以降、ヨーロッパにおいても製陶が盛んになり、後にウェッジウッドやジノリなど絢爛豪華なブランドが文化の一端を担う事になるのだが、東西のこういう交流史についてはまたいつか。
アフタヌーン・ティーに関する記事をご覧あれ。アフタヌーン・ティーとかハイ・ティーとか呼ばれる英国式習慣(アフタヌーン・ティーは以前の記事で書いた通り。ハイ・ティーも要するに午後から夕方にかけてのお茶の時間だが、肉や魚が供される事が多い。アフタヌーン・ティーが上流階級のお茶の時間とすれば、ハイ・ティーは庶民の実質的な夕食か)は英国の統治を受けた国々にも勿論伝わっているが、シンガポールのように中華系も多く住む国ではスコーンなどと並んで点心も供されるらしい。中華風アフタヌーン・ティーもしくはハイ・ティー、或いは英国風飲茶の感あり。

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