千、万、億と続く数の単位をどこまで覚えているか。大抵の人は、兆か京(けい)までだろう。垓(がい)、☆(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)と続く▼そんなとてつもない単位が身近に感じられる例がある。人の体は炭素、酸素、窒素、水素などでできているが、体重七〇キロの人の場合、そのうち炭素の原子は約五百四十☆個(☆は十の二十四乗)になる
▼昨年筆者の祖母が亡くなり、火葬された。その体が二酸化炭素となって大気(五十六垓リットル)に満遍なくばらまかれたとすると、空気一リットルに平均十万個も祖母の炭素原子が含まれている計算になる▼雨に溶けて土に戻ったり、海や植物に吸収される分を差し引いても、筆者が一呼吸するたび、かつて祖母の体だった炭素原子をいくつも吸い込んでいるはずだ。
ヒット曲「千の風になって」は、ある意味で科学的といえる▼ふと詩人金子みすゞの作品を思い出した。
はちはお花のなかに
お花はお庭のなかに
お庭は土べいのなかに
土べいは町のなかに
町は日本のなかに
日本は世界のなかに
世界は神さまのなかに
そうして、そうして、神さまは
小ちゃなはちのなかに
▼宇宙にまつわる数も人体にまつわる数も、想像を絶して大きい。今日は日本数学オリンピック。恒河沙(こうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議、無量大数(たいすう)と謎めいた名の数の単位を調べながら、生命の奇跡をあらためて感じる。
※☆は「秋」の火が予の字です。
[京都新聞 2008年01月14日掲載]