小説です。
青い海、青い空、青い風
ここは僕らの青い地球。
――― the blue world ―――
〜第四次世界大戦〜
一の三
それは、菫とカオリが見学に行く、二日くらい前のこと。
「はい。転校生です。・・・水然時菫さんです。皆さん仲良くするように。では以上」
そんな、適当なことをカオリ達のクラスの担任が言って、菫は前に立たされた。少しクラスメイトの間で、ざわめきが広がる。というのも、菫は有名な企業会社の娘だからだ。水然時という名字は、今の時代ほとんどいないので、水然時企業としか、かんがえられないのである。また、それが事実なのでしかたがない。
「よろしくお願いします」
一応、社会辞令で菫は礼をしながら言う。転校は慣れっこなので、初めて顔を見るクラスメイト達の表情にもあまり困惑しない。
「菫さんの席は、カオリの隣です」
担任が言って、カオリが軽く手を挙げる。彼女の椅子にはなぜか、一本だけ松葉杖が立て掛けてあった。菫は言われたとおりにカオリの隣の席に座る。機械学園というものだから、机や椅子には特殊機能でもついているのかと思っていたが、普通の鉄製の机と椅子だったので、少しがっかりした。黒板用の巨大スクリーンもだが、菫が前通っていた私立の学校のほうが新しくて、機能が充実していた気がする。
菫がいろいろ思考していると、隣のカオリが微笑みながら話しかけてきた。
「菫さん。香川カオリです。よろしくね」
「菫でいいよ。よろしく」
「それじゃあ菫、うん、とってもいい名前。カオリって呼んでね」
「うん」
少しどきどきしたが、菫はうれしかった。転校したときは、いつも自分から話しかけないと、みんなに遠巻きにされてしまうことがよくあったからだ。それは、自分の家系に問題があるとわかっているが、しかたがないので無視していた。今回は、友達ができるかもしれない。それは菫にとっては、とてもわくわくするものだった。
「それでは、MTは終了。では」
「起立ッ!敬礼ッ!」
担任が言った後、クラスの運営委員代表(代議員というらしい)が、言った。生徒は軍隊みたいに、きちんと整った敬礼をした。菫は少しびっくりして、変な敬礼になってしまったが、そのうちきっと慣れるだろう。
その後、担任が出ていってクラスメイト達は、友達同士で固まって次の授業の準備をしていた。
カオリに話しかけようと菫は、こちらに向かって歩いてくる人を三人見つけて、話すのをやめた。
「菫は、私達のグループでいいよね?」
カオリが、菫を含む四人に尋ねる。
「うん」
即答したのは、土色の髪と瞳の少年――カオルだった。
「いいよ」
その次に、桜が頷いた。護は、菫を無視し、何もいわなかった。菫は、少し罪悪感みたいなものを感じる。
「よし、それじゃあ決定」
カオリが、笑顔になって一本だけの松葉杖を使って、ゆっくりと立ち上がる。
菫は、桜と護にものすごい罪悪感を感じていた。なぜかというと、実は桜と護は菫の兄妹だった。菫には、異母兄妹がたくさんいた。それは、浮気というものではなく(実際は浮気になってしまうのだが)、菫の父親が頭のいい子供をつくるために、たくさんのすばらしい頭脳を持った天才に子供を作らせたのだ。菫は、水然時家の正妻の子供ではなかった。父親は、金もたくさんあったし、顔もそんなに悪くなかった。昔から、結構もてたらしかった。そして、桜と護は菫と両親が同じ唯一の兄妹だった。しかし、小さいときに問題が起きて、護は親戚の家に桜はなんと孤児院に送られた。菫は、そのことに罪悪感を感じるのだ。菫がこの学園に転校したのは、父親の命令だった。菫は、父親に逆らうことはできなかった。桜や護とは違うのだ。やっぱり、自分が一番大切だった。菫は、自由を殺してまで、裕福で安全で贅沢な生活をえらんでしまったのだ。
カオリを先頭にして、五人は歩き出した。菫は、どこに行くのかわからなかったが、尋ねるのも少し怖かった。
父親も、桜と護がこの学園にいることはわかっていたはずだ。それに、わざとこのクラスに菫を入れたのだから、こうなることは父親もわかっていたのだろう。菫は、そう思ったが今更と思い直して、我慢することにした。我慢することには慣れていた。昔から、ずっと。
「これから、二時限は自由時間なんだけれど、私達の部室に来る?」
カオリが振り返って、菫に尋ねる。菫は他に何もすることがないので、ただ頷いた。
そのまましばらく歩き続けて、部室棟と呼ばれる部分にたどり着いた。そこのずっと奥の地下三階に、カオリ達の部室があった。そこには、「地球環境改善化計画部室」と書いてあった。
カオリが、ボタン(随分旧型のもので、菫はこんな物がまだあったのかと少し感心した)をいじくって、分厚い自動ドアが、いやな音を立てて開いた。
「ようこそ、地球環境改善化部室へ」
カオリが菫に向かって、言った。彼女は、綺麗な花がぱっと開いたような笑顔だった。菫には、その笑顔がとても眩しかった。
部室の中に入ってみると、いろんな物が散乱していた。二世紀ぐらい昔の印刷物(菫はほとんど見たことがなかった)や、大きな機械(多分これも二世紀前ぐらいのものらしい。製造番号にそれらしきことが書いてあった)などがあった。菫は、よくこんな物が長い間壊れずにいたなと感心した。
そして、他にも普通ではあり得ないような物があった。
曲がるはずのない大きな機械などの上で、半透明の少女がエイッとか言って、飛び跳ねていた。
たぶん、幽霊とかの類に入るだろう物(人?)だった。
「幽霊、ですか・・・・」
菫は、幽霊には慣れていたが、こんなところでお目にかかれるとは思っても見なかったので、ため息混じりに呟いてしまう。
「うん。私は幽霊?かな?だよねーカオリ」
とか、半透明の少女が菫に笑いかけて、カオリに尋ねる。
「幽霊だと思うけれどね・・・・」
カオリも呟く。
「うん。私は幽霊の、平井実果です。よろしく!えーと・・・」
「人間の水然時菫です」
実果というらしい半透明の少女(幽霊)が、自己紹介したので菫も自己紹介した。。
「うん。人間だよねー菫って呼んでいい?実果って呼んでね」
「いいよ」
「でも、菫はただの人間じゃないよねー」
実果が、突然変なことを言った。
「え?」
「菫は、私と同じだから」
菫の疑問たっぷりの呟きの後、カオリが実果に言った。
「そうか、そういうことかー。だから変な感じがしたのかー。うん。納得」
実果がまた呟く。が、菫には全然意味が分からない。
「えーと、話の意味分かんないんだけど・・・・」
菫が尋ねると、実果が言った。
「だから、菫はカオリと一緒で、魔法使いだっていうこと」
絶句した。実果とカオリと護を除く、菫を含む三人は絶句した。
「なんで、知ってるの・・・・」
菫が、尋ねる。
「だって、私は魔法使いだから」
説明は、これで十分だというふうに、カオリは笑って見せた。
でも、それはこれからの悲劇の前兆だったのかもしれない。

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