せんせいのおしごとについて  読書メモ(09.6〜)

 上田学『日本と英国の私立学校』(玉川大学出版会、2009年)を読んで思うに、イギリスの私立学校には政府の補助を受ける私学と補助を受けない私学とがあって、当たり前のことだが補助を受けない私学の学費は何十万円とか何百万円とかしていて(ポンドの価値によって大きく変わるけれど)、一方で先生の給料が授業料に比べて高くないのは、おそらくは先生の仕事が何でもかんでも抱え込まないからとか、イギリスにおける学校の先生の職業威信の問題だとかいうことの違いなのだろう。
 この話と、濱口桂一郎『新しい労働社会』(岩波新書、2009年)とが一本の線で結びつく。濱口氏によれば、「終身雇用」「年功序列」「「企業別組合」という「日本型雇用システム」の本質は、どういう種類の労働をするか(=職務を単位とした契約)によらない雇用契約に由来するという。つまり雇用の維持とはメンバーシップの維持であって、必要な労働者を採用し不必要な労働者を解雇するということは、「正社員」に対しては行われてこなかったし、「調整弁」としての非正規労働者には主婦や学生など労働者ではない身分を備えた者が携わってきた。
 日本の教師の仕事内容が学校に関するあらゆることであるのは、「聖職」観だとか教授の自由とかいう文化的側面もあるけれど、こういう日本型の労働慣行によるところも大きいように思う。非常勤講師という「調整弁」が子育てするお母さん先生や大学院生が多かったりしたことも、同じ構図だと思われる。
 ためしに自分の仕事を「職務」という概念に基づいて分解して、それぞれをアウトソーシングしてみたと考えよう。はたして、今の自分1人と比べたとき、費用対効果はどちらが高いのだろうか?

「授業する人」+「クラブ顧問する人」+「担任する人」+「掃除の指示する人」+「保護者との連絡する人」+「進路相談する人」+「カウンセリングする人」+「校務運営の会議する人」+「会議の資料つくる人」+「プリント印刷する人」+「試験問題つくる人」+「採点して集計する人」+「試合の引率して審判する人」+「京都や近畿の役員する人」+・・・・

 要するに、学校という組織に所属する正規教育職員、というのが「教師の仕事」なのであろう。そして、これを時間労働問題として計算しようとすることが問題解決にはならないということだろうし、だからといってホワイトカラーエグゼンプションの導入というのも根源的な解決策ではないような気もする。
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2009/11/3  14:57

投稿者:まとめました

池田信夫先生と濱口桂一郎先生:「障害者就労支援事業」と「障害者の労働者性」
http://d.hatena.ne.jp/apj_yamagata/20091102

http://d.hatena.ne.jp/apj_yamagata/20091102

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