「続:スティグリッツ教授の提言政策批判:事象的な説明は正しいが政策提言は有効なものではない」
マクロ経済/経済政策
>[円安誘導の追い風必要]
>「円レートを引き下げることが、日本経済が成長を取り戻すために追い風になる。日本を訪れる外国人の大半は円が過大評価されていると感じている。」【なぜか日本にも円安に反対している人たちがいる。】
まず、米国など他の先進諸国がインフレで、日本だけがデフレであれば、円高傾向になるのが経済論理である。
円安誘導にことさら反対はしないが、それが輸出優良企業のバランスシートを改善させるとしても、日本経済の「デフレ不況」を解消させるものではないという理解が必要である。
「円安に反対している人たち」のなかに大手産業経営者もいるということは、この10数年で日本の貿易構造が変わってきたことの反映である。
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>「米国は、日本が経済成長を取り戻すことが世界の安定につながり、米国自身にとっても好ましいことを認識すべきだ。日本の経済が回復していく過程で発生する事態に対して、米国は報復してはならない。」
>【アメリカの報復以前の問題として、日本国内でのヒステリックな円安反対論をどうするかという問題がある。】
円安ドル高は、日米の産業レベルでは自動車や鉄鋼など限られた分野でしか対立を生まない。(日本の家電などと競争する産業が米国にないからである)
消費者は日本製品が安く買える円安ドル高を望むだろうし、政府調達も日本製品の比率が高いのであればそう望む。
円安ドル高をいちばん嫌うのは、手持ちドル資産の“国際価値”が劣化する国際金融資本である。
>[設備投資も減税で刺激]
>「米国の財務省は日本に対して減税は恒久的でなければ意味がないという浅薄な理屈を根拠に、減税の恒久化を求めている。しかし、それだけでは誰も、本当に減税が恒久化するとは思わない。むしろGDPに占める公的債務の比率の高さを考えれば、いずれその負債を処理しなければならないのだから、恒久減税などあり得ないと考えるのが道理だ。」
>【スティグリッツは、今の日本では恒久減税は現実的に不可能だし、効果もないと考えている。】
恒久減税ができないという主張は、「デフレ不況」から脱却してインフレ基調に転化できないという主張と同義である。
財政危機もインフレに転化することで危機水準を押し下げることができるのであり、インフレ転化に寄与する恒久減税(低中所得者減税)を行う必要がある。
実質ベースはともかく、名目GDPを450兆円から600兆円へというように拡大していく政策を採らなければならない。
>「時限的な措置の効力を高めるためには二つの方策がある。」
>「まず、第一の方策として消費税を減税の対象にすることだ。これは、経済全体でバーゲンを実施するような効果が期待できる。今後二年間は消費税を引き下げるので、その間にどんどん買い物をしてくださいというわけで、これなら疑ってかかる人は出ないだろう。」
誤った政策提言である。
消費税減税が終わった3年後の日本経済がどうなるかを考えれば自明である。
“特需景気”の反動で需要が一気に縮小する。企業経営者もバカではないので、そのような時限的需要拡大策にのっかって設備投資を拡大することはしない。(十分なデフレギャップを抱えているから設備投資は必要ない)
2年間の“祭”が終われば、急激なデフレに見舞われることになる。
>「第二の方策として提言したいのは、投資に対する税額控除だ。計画を上回って投資を実施した場合に、投資額の一〇、二〇、三〇%相当額を控除する。ここでも消費税の場合と同様、次元的な措置は投資財に対するバーゲンとみなせる。これなら企業は投資に動く。」
投資減税はある程度は有効だろうが、それに踏み切る企業は、元々設備投資を予定していたところと予定の前倒しにほぼ限られると推測する。
>[アジア経済統合推進を]
>【スティグリッツは「円圈」だとか「アジア共通通貨」のようなトンデモな主張をしているのではない! スティグリッツは、アメリカの保護貿易主義の害から逃れて経済発展するための方策としてアジア地域で現実的な多国間協定を結ぶことをすすめている。スティグリッツによるアメリカのダブル・スタンダードに対する批判は "Worldmust fight US steel tariffs" (ST APRIL 26, 2002 FRI) にもある。「世界経済危機でわたしが学んだこと」も参照せよ。】
>「日本の近隣国は急速な成長を遂げているのだから、地域統合は日本経済を大きく押し上げる効果があるだろう。地域統合が進展すれば、七−八%の成長を続ける巨大な中国経済の波及効果を域内のメンバーが亨受することになる。」
>【スティグリッツは日本の一部に見られる“中国の経済発展は脅威である”という考え方と正反対の主張をしている。】
アジア経済の統合を日本が主体として取り組めば、日本経済の利益になることは間違いない。
しかし、そのような統合になるためには、「デフレ不況」からの脱却が不可欠である。
そうでなければ、デフレで減少していく利益や価格競争力の維持という“歪んだ”海外進出の影響で日本経済は痛手を被ることになる。
7/9/18

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