「普通の人」の金融資産に対する見方は、 「
マネーサプライの定義のついて」 で書いた内容と関わりがあることですが、同じ貨幣が同時的に複数の経済取引に使われているという“危ない橋”に対する問題意識が希薄だと思われます。
経済学者のなかには、国債問題を「家庭内の貸借関係」と見立てたり、政府の資金運用部が半分ほど保有しているのだから心配は要らないと説明する人までがいます。
国債の経済効果は脇に置いて、国債の発行・引き受け・利払い・償還のサイクルを見ることで、そのようなもっともらしい説明が正当なものがどうか考えます。
人気blogランキング <-- クリックしていただくと、より多くの方に読んでいただけます。ご協力お願いします。
レス4:「国債サイクル」による金融資産の侵食とハイパーインフレへの道 投稿者 あっしら 日時 2002 年 4 月 24 日
国債が、30兆円の新規財政赤字向けと70兆円の利払い・借り換え向けで合わせて100兆円分発行されるとします。
これをうまく消化するためには国債引き受けに向かう貨幣が新たに100兆円なければなりませんが、経済学的には、新規分と借り換え分は意味が違うものと考えられます。
新規分の30兆円について、銀行などの引き受け手は金融資産を異なる形態に変えて保有しただけだと考えますが、経済論理的には、金融資産30兆円が歳出というかたちで“消費”されるものです。
言い換えれば、使うあてがない経済主体の金融資産を国家が代わりに使ってしまうものです。
政府のそうした消費のおかげで、売り上げを拡大したり、給与を受け取ったり、土地を売って金融資産を増やす人などがいることが重要であり、それが“使ってしまった”ということを意味します。
歳出で金融資産を増やす人がいるのですから、国債による歳出が消費ではないという主張は、100万円の束が200万円の束だと主張するようなものです。
そのように考えないことが、数多くの子会社をつくってありもしない厖大な資産を計上した「エンロン詐欺」やグローバルスタンダートと崇める米国会計基準のデタラメさを許しているとも言えます。
ここで問題になるのは、使ってしまったお金を返すことができるのかということです。
結論を先に言うと、預かって保管していたお金を返すことはできますが、使ってしまったお金を返すことはできません。
使ってしまったお金を返すことはマジシャンでも無理であり、錬金術師や真正の超能力者のみができることです。
この視点が抜け落ちると、国債問題をはじめとして経済の動きが見えなくなります。
では、借り換え債分の70兆円とは何なのでしょうか?
この70兆円は、新規分のような“金融資産の消費”ではなく、“金融資産の移転”として捉えられるべきものです。
すなわち、国債の利払いと償還は、株式や土地で得る利益と同じようなものとして考えなければならないということです。
政府債務が増大し借り換え分の国債発行が増えるということは、株価や地価が上昇していくことに似た経済現象です。
利子・借り換え分の70兆円が現金資産で引き受けられることで、かつての引き受け手が国債という形態で保有している国債金融資産に対して約束の利息が支払われたり、保有している国債が償還により元の現金資産形態に変わります。
しかし、日本国債の実態を冷静に考えれば、新たな借り換え国債の引き受け手と利払いを受けたり償還される国債の保有者はほぼ同じ経済主体です。
マクロ的には、保有されていた国債という金融資産が現金という金融資産の保有に変わったということを意味します。そして、新たに保有する国債については、保有していた現金という金融資産が国債という金融資産に変わったということになります。
日本国債のほとんどが、銀行・資金運用部・生保を中心とした機関投資家によって引き受けられています。
これは、預金・貯金・保険料といった金融資産が国債を引き受けていることを意味します。
新規分国債で預金・貯金・保険料の一部を政府が消費し、利払いや償還の期限が来たら、借り換え国債を預金・貯金・保険料の一部で引き受けることで、古い国債の償還や利払いを受け、元の預金・貯金・保険料の一部に戻るようにしているということです。
先ほど「使ってしまったお金を返すことはできない」と書いたように、財政赤字を埋めるために発行した新規分は使ってしまったものですから、預金・貯金・保険料の一部はなくなっています。
財政赤字が累積で300兆円であれば、たとえ、預金・貯金・保険料のマクロ的な残高数字は変わっていないとしても、そのうちの300兆円分は既に消費されてなくなっているのです。
借り換え国債分は、同じ預金・貯金・保険料の器のなかの話になるのでピンとこないかもしれませんが、預金・貯金・保険料全体の30%が借り換え国債の引き受けに使われているとしたら、30%は過去の預金者・貯金者・保険料支払い者のために金融資産が移転したことになります。
全員が預貯金を引き出したり保険を解約する(保険金を受け取る)わけではないので、問題は表面化していませんが、預貯金の引き出しや保険の解約が徐々にでも進んでいけば、この問題が表面化します。
どういう問題かといえば、株式や土地と同じで、誰がババを掴まずに済み、誰がババを掴むのかということであり、「バブル崩壊」のように、一気に多くの人がババを掴む事態が発生すると日本経済全体がとんでもない状況に陥ることです。
(ババを掴む人を出さないまま、日本経済全体をとんでもない状況に陥れることもあります)
株式市場や不動産市場も、それらに流入する資金が増大しているあいだは多くの人が自覚しませんが、流入する資金が減少に転じると価格が下落し始め、問題が自覚されるようになるのと同じように、国債発行額と預金・貯金・保険料といった金融資産の余裕額とのバランスが狂うようになれば、「国債問題」が表面化します。
「金融資産の消費」と「金融資産の移転」による国債のやりくりというサイクルを維持しやすい条件は、実質給与の上昇とインフレを伴う経済成長が継続していることです。
国債利子率とインフレ率が同じであれば、利子と償還で価値的には同額の金融資産を移転すれば済みます。
実質給与が上昇していれば価値的な税収も増大し、インフレのなかで税制変更を遅らせばそれによっても税収が増大させることができます。
また、経済成長と実質給与が上昇することで、預金・貯金・保険料も増大しますので、金融資産の余裕額も増大します。
赤字国債の発行で財政支出を増やし、実質給与の上昇とインフレを伴う経済成長を実現していけるのなら、“国債のサイクル”を破綻させないで続けることができます。
現状の日本経済は、“国債のサイクル”が破綻しないようなものでしょうか?
実質給与は減少しています。
デフレが続いています。
経済成長はマイナスです。
デフレのなかでも国債には1.5%程度の利子が付いていますから、実質価値としては、利子と償還でより多くの金融資産を移転させなければなりません。
実質給与がデフレ率以上に下降しているので実質価値での税収も減少します。
また、経済成長がマイナスで実質給与も下降しているので、預金・貯金・保険料もそれほど増大しないため、金融資産の余裕額もそれほど増えません。
そして、失業者の増大や大幅な円安などであるターニングポイントを迎えると、金融資産が減少することになります。
(将来への不安や企業の投資が不調などの理由で貯蓄は増大していますが、インフレ時と違って、それは、消費(需要)を削って達成されるものですから、経済成長を下押しすることになります。その結果、さらに失業者が増え、貯蓄も、増大ではなく減少するようになります。円安で原材料や製品の価格が上昇すれば、同じ規模の生産や販売を行うためにより多くの資金を使わなければならないので、企業の貯蓄が減少します)
“金融資産の移転”で「国債のサイクル」が維持できなくなったとき、政府が実行できる手段はいくつかに限られます。
米国債のように過半数が外国の投資家によって買われていれば、米国政府が「対外債務のデフォルト」を行うことで米国経済への衝撃を“少々”緩和することもできますが、日本国債の場合は、95%が国内投資家(前述の内容)に保有されていますから、利払いのデフォルトはあっても償還までしないデフォルトは行われないと見ます。
いくつかの対応策を考えてみます。
● 日銀が国債を引き受ける
これは、表立ってそうなったとは説明されないでしょう。
なぜなら、今現在も、実質的に日銀引き受けといえるかたちで国債を消化しているからです。
日銀が商業銀行にじゃぶじゃぶ日銀券を貸し出し、商業銀行は、その日銀券で国債を引き受け、日銀券が必要であれば国債を日銀に売るという取り引きが行われています。
現在のところは、この手法が商業銀行の資産構成“改善”のために使われていますが、商業銀行が国債を引き受けられなくなったときにも“応用”できるものです。
日銀の月間国債買い切り額を1兆円から5兆円に増やせば、60兆円の“余力”が生じます。
この手法は、政府債務の増大とともに、否応なく日銀の月間国債買い切り額を増やしていくことになります。
これは、生産的な資金需要という価値的な裏付けのない日銀券が大増発されることを意味しますから、日銀当座残高が異様に膨らまない限り、ハイパーインフレをもたらすことになります。
利払いや償還にのみこの手法が使われればまだ“救い”がありますが、財政赤字を補うためにこの手法が使われれば、実体経済に生産的な価値の裏付けがない日銀券が出回ることになり、ハイパーインフレに結びついていくことになります。
(他の対処策も併用されると思いますが、これがもっとも可能性のある対処策だと思っています。失業者の増大→所得税や各種保険料の減収が進むなかで、生活保護受給者の増大・年金受給者の増大に対応するための財政赤字が膨らみ、ハイパーインフレへの道を歩み始めると考えています)
下 に続きます。

0