かつての日本の正しい死生観として、「深沢七朗氏の書かれた『楢山節考』に胸を打たれた」と語った人物がいます。働けないような状態になったら、自ら死を選べ、と言いたいのでしょう。
「日本尊厳死協会」顧問の「死の権利協会世界連合」世界会議での挨拶です。この会議は 2004年10月1日、都市センターホールで開催されました。
この「日本尊厳死協会」顧問、実は奥田碩日本経団連会長その人です。
また、「日本尊厳死協会」理事長 井形昭弘氏は水俣病政府側参考人、介護保険制度、医療制度改革では医療保険福祉審議会老人保健福祉部会長、など医療行政に深く関わった人物です。
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尊厳死協会は故太田典礼氏によって一九七六年に設立され現在の約十一万人の会員を有します。同協会は、「尊厳死の宣言書」(リビングウイル)で大量に会員を獲得した協会です。
「尊厳死の宣言書」の内容は、
(1)不治で死期が迫っていると診断された場合には徒(いたずら)に死期を引き延ばす延命措置は一切断る
(2)苦痛を和らげる処置は最大限に実施するよう求める
(3)数カ月以上いわゆる植物状態に陥ったときは一切の生命維持措置をやめる というものです。 協会の根幹は【「死」についての権利と、「自己決定権の確立」をめざして活動を推進しております】(尊厳死協会協会ホームページより)とあるように、死の権利、つまり、自己決定権は、死まで及ぶという「死ぬ権利」の獲得を目指した団体です。
ちなみに故太田典礼氏の著書から、以下に引用します。
「…私は前から医師として安楽死の実践をしていたのであるが、論文として発表したのは、有名な名古屋高裁判決の出た翌年の三十八年で、『思想の科学』八月号の「安楽死の新しい解釈とその立法化」である。日本における論争はすでに昭和の初期から始まっており、とくに刑法学者の間では肯定論が有力になりつつあったが、医学関係者は僅かな先覚を除いてはほとんど否定的であった。私はこれに対して積極論を述べたのであり、臨床医としては最初のものであった。むしろ、おそきに失した感があったほとである。でも手応えはまったくなく、非難も起こらず無視された格好だった。ただ一人旧友の松田道雄から激励のハガキを貰っただけであった。
ところが十年ほどたつと、安楽死事件が相ついで起こり、それに対して世間の同情が集まり議論がまたさかんになって、私の論文の転載を求める雑誌や出版社があらわれてやっと注目され出した。…」(19800227 『反骨医師の人生』、p.249)
尊厳死協会
http://www.arsvi.com/0p/et-nsk.htm
また、現在の井形昭弘日本尊厳死協会理事長は、かつての「脳死臨調」のメンバーで、厚生省の審議会の中でも「脳死・臓器移植」の問題を担当してきた人物です。彼は、冒頭にある「死の権利協会世界連合」の世界会議で基調講演を行い、「臓器移植は三十数例行われ定着した」と述べ、次には「尊厳死法」が出されるという文脈で語っていました。彼に関して詳しくは付録を参照してください。
さて、同協会の働きかけが実を結び尊厳死を巡り法制化を求める動きが進んでいます。
昨年二月には、超党派の国会議員による「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長・中山太郎衆院議員)が発足し、法案を作るために定期的にヒアリングを続けるなど活動していました。
3月29日、参院議員会館で開かれ同連盟の会合後、同議連幹事長の渡辺秀央参院議員は、記者団に富山県の射水(いみず)市民病院で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題について、「(尊厳死の)法律を社会が必要としているという問題提起ではないか。社会不安にもつながり、難しいからと先送りはできない」と述べ、法制化に向けた議論を加速させる考えを示しました。
尊厳死立法の要点(議員連盟の骨子案から)
何人も、末期の状態で生命維持の措置を受容すべきか否かを自ら決定する権利を有する
末期とは「合理的な医学上の判断により、助かる見込みがなく、死期が切迫していると認められる状態」をいう
末期の状態で延命措置を拒否する事前の意思表示は15歳からできる
末期の状態の確認は、担当医を除く医師2人以上で行う
本人の意思表示に沿った医師の行為には民事・刑事上の責任を問わない
生命保険契約上、自殺とはみなさない
意識を回復する見込みがない「持続的植物状態」も末期に準じて扱う
同議連の要請を受け終末期医療のあり方について検討している厚生労働省の研究班(主任研究者、林謙治・国立保健医療科学院次長)は、延命治療中止について、法的整備が必要とする林次長の見解を盛り込んだ報告書をまとめました。
以下毎日新聞6/15より
富山県・射水市民病院での人工呼吸器取り外し問題などを踏まえ、尊厳死の法制化やガイドライン作成を求める声が強まっている。報告書は、国民の間でもさまざまな意見があり、法制化などの難しさを指摘した。そのうえで、林次長の私見として、ガイドラインをつくったとしても「法的整備が必要ないということにはならない」と盛り込んだ。一方で、長期的には、緩和医療や在宅ケアの充実で、延命治療の中止などの倫理的・法的問題が解消される可能性があるとした。
もちろん法制化への反対の声もあります。「法制化すると、重度障害者や重病人に『早く死ね』というような心理的圧力が加わりかねない」「命ある限り精いっぱい生きぬくべきだ」等、また昨年六月には学者、患者団体役員などが「安楽死・尊厳死法制化を阻止する会」が設立されています。
一つは、死の自己決定は、知性への信頼により成り立っています。はたして、人間の知性は、自分の死をゆだねるだけ信頼できるのか。
二つには、自分の命だから自分で決めるという、命の私物化を助長してしまうのではないかという疑問。それと、苦しみは何も生み出さないという現代の苦しみを否定した幸福観への疑義です。
人類の歴史は苦しみを通して成長し、老や死という回避不可能な苦を通してトランス・フオーメーション(質的転換)を成し遂げてきました。苦しみを否定した社会の未来に何があるというのでしょうか。
また法制化への危惧として、近年、癌の告知や終末期の介護保険の適用など、医療費をどう低く抑えたらよいかという価値基準で医療の動向が左右されている傾向があります。経済の論理で、死の自己決定を法制化したのでは人類の汚点です。仏教タイムス065.3.16日付 掲載原稿「尊厳死」法制化へ 浄土真宗本願寺派 西原祐治氏より引用
との意見も表明されています。
当ブログでは今後数回にわたってこの問題を取り上げてゆきます。
付録:井形昭弘氏関連記事
水俣病訴訟の被告側証人:
「水俣病患者に認められる感覚障害の責任病変部位が中枢神経系にあるのか、末梢神経にあるのか」は、関西訴訟において大きな争点になってきた。被告側の「あやふやで、無責任で、かつ実際の患者の訴えや現実の臨床的事実から目を逸らした」主張は、永木氏やLe Quesneらの過去の多くの末梢神経における電気生理学的研究の成果や死亡した有機水銀中毒患者の剖検・病理学的研究を元にした、原告側の反論・批判によって論破された。当然のことながら高裁「控訴審」判決においてさえも、見事に退けられた。 しかるに、井形昭弘氏は、なおも「軽症の水俣病患者では、末梢神経が正常でもおかしくはない」というようなコメントを公然と行っている。
中央公害対策審議会・水俣病問題専門委員長:
◆朝日新聞 2002年7月18日 「水俣病 国、申請封じ図る 91年の中公審 地域指定解除を提案」
「91年に水俣病の総合対策を講じた中央公害対策審議会・水俣病問題専門委員会(井形昭弘委員長、14人)が、公害健康被害補償法の指定地域となっている熊本県水俣市など不知火海東岸の指定解除を、国の提案で極秘に検討していたことが当時の議事録から分かった。 当時、熊本、鹿児島両県で感覚障害などを訴える2900人の申請者の扱いに困っていた環境庁は、再申請も含めたすべての申請を禁じるため、指定解除の必要性を強調した。指定解除されれば、新たな認定申請はできない。
◆2003/12/25 大阪地検、井形昭弘(元鹿児島大学学長、元熊本県・鹿児島県水俣病認定審査会委員)の偽証罪での告発を不起訴とする。
◆「井形・元中公審専門委員長 メチル水銀中毒、「水俣病でない」は詭弁」
熊本日日新聞2004年12月1日朝刊
http://www.kumanichi.co.jp/minamata/kiji/20041201.1.html
◆井形・元中公審専門委員長 「判断条件拡大なら新たな争いの恐れ」
http://www.kumanichi.co.jp/minamata/kiji/20041201.2.html
◆チッソ水俣病関西訴訟を支える会
http://www1.odn.ne.jp/~aah07310/index-j.html
■薬害エイズ
第136回国会 厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会第3号 平成8年6月
参考人 国立療養所中部病院・長寿医療研究センター院 井形昭弘
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/136/1212/13606031212003c.html
■老年学/老年医学
日本老年学会会長 井形昭弘
http://www.congre.co.jp/rounen2003/html/aisatu01.html
http://www.congre.co.jp/rounen2003/
■認知症
認知症(痴呆)高齢者ケアマネジメント推進モデル事業 中央検討委員会委員名簿
http://www.itsu-doko.net/model/20040805.html
国際アルツハイマー病協会第20回国際会議・京都・2004
名古屋会場 平成14年10月14日(月)体育の日
基調講演「痴ほう症をより理解してもらうために必要なことは」
井形 昭弘氏(名古屋学芸大学学長/愛知県健康科学総合センター長)
http://www.e-65.net/forum/forum_past1.html
■介護保険制度
井形昭弘 公開講座「夢の長寿社会−介護保険を起点として」
http://www.kaigo.gr.jp/teach/igata.htm
■医療制度改革
医療保険福祉審議会老人保健福祉部会 井形昭弘・部会長
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/ansin/an032801.htm
◆中央環境審議会環境保健部会長
平成9年12月16日 中央環境審議会総会結果 環境保健部会長 井形昭弘
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=2289