■ 日本の国家財政の概況
日本(地方自治体を含む)の債務は、900兆円(対GDP比1.8倍)を超える膨大な額まで積み上がっている。
(国債残高や借り入れについてはきちんとデータが公表されているが、基礎年金国庫負担分など本来繰り入れられていなければならないもののやり繰りで生じている隠れ債務や、郵便貯金・簡易保険料・年金積み立て金を使った財政投融資で回収不能になっているものがどれくらいあるかについては明確な提示がない)
個人金融資産は1400兆円だが、企業の純金融負債と個人の金融負債を合わせると500兆円だと言われているから、株式を含む差し引きの民間金融資産は900兆円である。
企業の分割所有権の価額を示す株式資産を除外すると、公的債務は民間金融資産を完全に超える規模まで膨らんでいることがわかる。
日銀が100兆円の国債を保有すると同時に日銀当座預金を30兆円まで膨らませているのは、このような資金ポジション状況を如実に反映したものである。
日銀当座預金の30兆円は、金融不安を払拭するためというより、銀行が国債を引き受けたり政府部門に貸し出すための原資と考えたほうが妥当である。
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「産業資本主義」の終焉:国家財政と国民経済:租税とは「活動成果」や「活動力」の移譲である。投稿者 あっしら 日時 2004 年 8 月 05 日
このような状況は、日本の政府や地方自治体は既に、国内民間からの借り入れができなくなったことを示している。
財政全般は、下記の推移データからわかるように、政府の歳出が増加傾向にあるなかで税収のほうは減少傾向を示している。
【国債発行高・歳出・税収・名目GDP推移】
新規国債 歳出 税収 名目GDP(兆円)税収/名目GDP
=================================
83年度 13.5 50.6 32.4 285.5 11.3%
84年度 12.8 51.5 34.9 306.8 11.4%
85年度 12.3 53.0 38.2 327.4 11.7%
86年度 11.3 53.6 41.9 341.9 12.3%
87年度 9.4 57.7 46.8 359.4 13.0%
88年度 7.2 61.5 50.8 386.7 13.1%
89年度 6.6 65.9 54.9 414.7 13.2%
90年度 7.3 69.3 60.1 449.9 13.4%
91年度 6.7 70.5 59.8 472.2 12.7%
92年度 9.5 70.5 54.4 483.8 11.2%
93年度 16.2 75.1 54.1 480.6 11.3%
94年度 16.5 73.6 51.0 491.2 10.4%
95年度 21.2 75.9 51.9 500.0 10.4%
96年度 21.7 78.8 52.1 514.1 10.1%
97年度 18.5 78.5 53.9 520.6 10.4%
98年度 34.0 84.4 49.4 512.4 9.6%
99年度 37.5 89.0 47.2 508.0 9.3%
00年度 33.0 89.3 50.7 513.0 9.9%
01年度 30.0 86.4 49.6 500.9 9.9%
02年度 34.9 87.8 44.3 497.6 8.9%
03年度 36.4 83.6 41.8 501.3 8.3%
04年度 36.5 82.1 41.7
景気対策や社会保障関連の増大で歳出が増加する一方で税収が減少するという隘路に陥り、それを補うために新規国債の発行を増加させていったことで財政危機が深化したという構図である。
税制との関わりで見ると、消費税アップは、財政危機からの脱却に貢献するどころか、逆に財政危機を深化させるものであることがわかる。
98年に消費税が2%アップされたが、それで税収が3〜4兆円増えるという政府のふれ込みとは違って、98年度の税収は4.5兆円も減少し、その後も税収はスパイラル的に減少している。
『
「産業資本主義」の終焉:消費税(付加価値税)は国民経済を破壊する“悪魔の税制”:消費税なら物品税の拡張適用が本道』で説明したように、デフレ状況で消費税(付加価値税)をアップすればGDP(付加価値)を縮小させてしまうので、消費税そのものは増収になるとしても、法人税や所得税がそれを上回る額で減収になるからである。
そのような現実は、上記表の名目GDPに対する税収比率を見ればすぐにわかる。
バブル崩壊後の不況下ということでは同じ経済条件にあった95年から97年までは名目GDPの10%を超える税収があった。
(97年は拓銀・山一証券という一大金融危機が噴出した年である)
ところが、財政危機を解消するためというふれ込みで消費税がアップされた98年度は、対名目GDPの税収が9.6%になり、それ以降03年までずっと10%を切っており、02年度と03年度は9%を切るまでになっている。
付加価値税である消費税がアップされたことで、企業の付加価値(売上・粗利益)が減少し、法人税が減収になるとともに、付加価値の減少をカバーするために人員削減や給与削減が行われたために所得税も減収になったからである。
これは、9%台だった対GDP税収率が8%にまで下がったことで推測できる。
また、消費税は「輸出免税」という“国家詐欺”が適用されているから、輸出の増加で景気が一時的によくなっても消費税の増収にはつながらない。
98年の消費税アップが日本をデフレ・スパイラルに突き落としたという厳然たる論理を踏まえないままの財政議論は、空虚な机上論であり、日本経済破壊行為につながる危険極まりないものである。
【GDPデフレータ前年比推移】
90年度:+2.4%
91年度:+2.7%
92年度:+1.4%
93年度:+0.4%
94年度:−0.1%
95年度:−0.6%
96年度:−0.8%
97年度:+0.7%
98年度:−0.5%※消費税5%にアップ
99年度:−1.7%
00年度:−2.0%
01年度:−1.2%
02年度:−1.8%
03年度:−2.4%
政府は、デフレ状況では剥き出しの「国民経済破壊税」となる消費税を07年度から再びアップしようとしているのである。
(民主党も消費税増税派が主流を占めている)
そして、消費税アップに対して「弱い者いじめ」というレベルで批判する勢力はあっても、企業を含む国民経済を破壊する愚かな政策という視点でまともに批判する人はほとんどいないという惨状を見せているのが現在の日本である。
(日本共産党も消費税率を3%という“改良主義”を掲げているだけである。消費税が経済的弱者を直撃するだけの問題なら、消費税税率を変更しなくても、所得税の課税最低限を引き上げたり社会保障関連給付を増額すれば済む)
95年度と03年度を比較してみると日本経済と財政の関係がよく見える。
新規国債 歳出 税収 名目GDP(兆円)
===============================================================
95年度 21.2 75.9 51.9 500.0
03年度 36.4 83.6 41.8 501.3
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増減 15.2 7.7 −10.1 1.3
税収の落ち込みと歳出の増加を新規発行国債の増発で賄うことによって名目GDPがなんとか維持されていることがわかる。
(17.8兆円−15.2兆円=2.6兆円は直接の借り入れ増加になっているはず。国債の発行に拠らない直接の借り入れはこの間急速に増加し、100兆円規模まで達している))
税収の41.8兆円も、7.7兆円の歳出増加で増加する所得税・法人税・消費税に支えられてかろうじて達成されたものと推測する。
おそらく、7.7兆の歳出増加がなければ、39兆円ほどの税収にとどまったと思われる。
(3兆円ほどの税収減:消費税国庫分4%だけで3千億円ほどあるが、黒字・赤字すれすれの企業の多い現状では7.7兆円の追加需要は実効税率30%の法人税の税収に大きな影響を与える)
財政支出という点では、郵便貯金・簡易保険・年金積み立て金を主たる原資とする財政投融資も見る必要がある。
財政投融資は、道路公団や住宅金融公庫などの特殊法人に貸し出されて事業支出につながるものである。
【財政投融資規模推移】
00年:38兆3千億円
01年:32兆5千億円
02年:26兆8千億円
03年:23兆4千億円
04年:20兆5千億円
このように、この4年間で18兆円程度の減少と、およそ半減している。
この大幅な減少が、原資の減少によるものなのか、国債引き受け増加のあおりを受けたものなのか、焦げ付きを恐れてのものかはわからないが、日本のGDPを押し下げていることは確かである。
(住宅金融公庫については、民間銀行の住宅ローンでカバーされているのでGDPの押し下げにはつながっていないはず)
政府債務の問題に戻る。
国債費(16.8兆円)が政府歳出に占める構成比は21.3%で、税収の42.1%にも達している。(国債費の構成比がかつてよりも下がっているのは、予算規模が10兆円も拡大しているからである)
これも、償還費は8兆円ほどだから、償還期限を迎えた国債を借換債でツケ回ししていることで抑えられている控えめな数字である。古い国債を新しい国債に差し替えて借り入れを延長する借換債の発行は100兆円規模に達している。
(財務省官僚は、金利が3%を超える国債を2%未満の金利に差し替えることで利払いが減少し負担が軽くなると考えているのだろうが、元本も60年以内には償還しなければならないのだから、デフレと相俟ってトータルの負担は急速に増大していることになる。20年後や40年後は官僚を辞めているとか生きているわけではないからと考えている無責任な官僚もいるだろうが(笑))
国債利払い費は8.7兆円で、税収の20.8%を占めている。これは、5年分の税収のうち1年分は国債利払いで消えてしまうということである。
91年の11兆円が国債利払い費のピークだが、税収に占める割合は18.4%だった。
国債利払い費はバブル崩壊後の14年間で140兆円近くに達している。(ほとんどが郵便貯金・簡易保険・銀行・生命保険会社に支払われ、預貯金者や保険加入者にも少しは還元されている)
04年度予算の税収は41.8兆円だから、それを基準に考えれば、14年間で3.3年分の税収を利払いに使っていることになる。
「デフレ不況」が続けば、税収の半分が国債費(利払い+償還)に使われるのもそう遠くない。
そうなると、2年間の税収のうち事業歳出に使えるのは1年分だけで、残りの1年分は過去の債務履行のために費やされるという異常事態になる。
【政府債務残高推移】
債務残高 前年比増加 新規国債発行
==============================================
97年:355兆円
98年:395兆円:40兆円:34.0兆円
99年:437兆円:38兆円:37.5兆円
00年:493兆円:56兆円:33.0兆円
01年:538兆円:35兆円:30.0兆円
02年:607兆円:69兆円:34.9兆円
03年:669兆円:62兆円:36.4兆円
04年:703兆円:34兆円:36.5兆円
今となっては30兆円を超える新規国債発行額が当たり前のように思われているが、上記【国債発行高・歳出・税収・名目GDP推移】を見ればわかるように、少し前までは10兆円台でも膨大な国債発行規模だと恐れられていた。
87年度から92年度までは10兆円未満の新規国債発行額である。
すぐ上の表を見てわかるように、政府債務残高は、新規国債発行額分だけ増加するわけではなく、直接借り入れや債務保証の増加によっても増加する。
国債は、1年未満の短期国債と10年以上の長期国債を合わせたものがほぼ80%を占めていた。
99年度からは、国債引き受け主体の金利上昇リスクを減らすためだと思われるが、長期国債の比率が減少し、その分中期国債の比率が増えている。
新規国債発行額は、93年度から16兆円台になり、95年度から20兆円台、98年度からは30兆円、02年度からは35兆円規模と徐々に膨らんでいった。
ということは、“財政危機”だとか“国家破産”だと言われてきたこれまでの「国債サイクル維持」は実のところたいした話ではなく、「国債サイクル維持」が本格的な難題になるのは、新規発行額が20兆円を超えた95年から10年を迎える来年からで、とんでもない難題になるのは、34兆円規模になった98年から10年を迎える08年からということである。
(99年から2〜6年の中期国債の比率が増加しているので、借換債による先送りは膨大な額になる)
借換債発行高が150兆円規模を経て200兆円規模になるのも1年単位の話になる。
これは、預貯金や保険料が国債に固定化され続けることを意味するので、民間で資金需要が増加したときは日銀に国債を売って調達せざるをえない。
冒頭で説明した民間金融資産との関係から言えば、新たに国債を引き受ける余剰資金は民間にないから、日銀が実質的に直接引き受けせざるをえない。
(形式的には日銀が銀行に資金を供給して国債を引き受け、銀行が資金を必要とするときは日銀が銀行保有国債を買い取って供給するというものになる。日銀が保有する国債に対する利払いは実質的にゼロだから、その分、政府の債務負担は軽減(実質は一定)されることになる)
断言するが、「デフレ不況」のまま07年度から消費税がアップされば、名目GDPが縮小することで税収が減少し社会保障関連費が増加することから新規国債発行額が増加し、日銀が実質的に直接引き受けする国債の量は急増することになる。
そうであっても、デフレ状況下で「国家破産」や「預貯金封鎖」はないから、その点での心配はない。
その代わり、国民の公的負担がさらに増大し、それによりGDPがさらに縮小し、国民生活の困窮と国民の不安が増大することになる。
「国家破産」や「預貯金封鎖」によって国民生活が向上し国民の不安が解消できるのなら、そのほうがましだが、それさえできない“蟻地獄”にはまっているのが現在の日本なのである。
“財政危機”を緩和するためには、税制改定を含む経済政策の根底的な変更でデフレから脱却し、緩やかなインフレのなかで名目GDPを拡大するしかない。
国家財政と国民経済:政府支出とは国家機構を媒介にした「活動力の交換」である
に続きます。