「環境問題を見る視点:地球に生命が存在するための必要条件」
エネルギー問題
生きている地球
〜 環境問題を見る視点 〜
その1 地球に生命が存在するための必要条件
地球は、真空の宇宙空間に浮かぶ星ですから、物質的にはほとんど孤立した系と考えられます
(ここで言う地球とは、地球重力に捉えられている大気まで含めた系を指します)。
その地球上で、数十億年にわたって、生命現象が維持されていることは、驚異的なことだと思います。
こうした長期間に及ぶ生命現象が維持されてきた必要条件を考えることにします。
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〜 環境問題を見る視点 〜 近 藤 邦 明氏
『環境問題』を考える より
@生命現象に必要な物質は繰り返し利用する。
A生命現象を行うための安定したエネルギーの供給がある。
B生命現象を含む全ての物理的変化の結果生じた廃熱を宇宙空間に捨てる機構がある。
C地表近傍の温度が生物が生息できる程度で安定している。
@については、ほとんど議論の余地はないと思います。
生命現象に利用できる限られた資源で、数十億年に及ぶ地球の生命現象が維持されるには、物質の循環利用が不可欠です。
ある生命体の活動の結果生じた廃物が単に廃棄物(=汚染)として環境に蓄積されるならば、早晩生命現象は終息します。
活動を持続するためには、ある生命体の廃物が別の生命体にとって有用な資源となり、生態系全体としては、物質が滞ることなく循環することが必要です。
Aについては、太陽光によってエネルギーを得ています。
高等生物を含む生態系の存在する地球の環境を考える場合、植物の光合成は決定的に重要です。
Bについて考えるには、エントロピー(拡散の程度をあらわす量)について触れておく必要があります。
自然界のあらゆる変化によって、孤立系のエントロピーは不可逆的に増加します。
孤立系のエントロピーは常に極大に向かって単調に増大してゆきます。
孤立系のエントロピーが極大に達すると、全ての変化は起こらなくなります。
このエントロピーが極大になり熱的に平衡(=変化のない状態)に達した状態を「熱的な死」と呼んでいます。
生態系という絶えず活動する系(=常にエントロピーを増大させる系)を含みながら、数十億年にわたってその活動が滞ることなく『定常』的に営まれている地球という特殊な系(=エントロピーレベルが極大でなく、しかも増加しない系)をどう解釈するか、長年にわたって物理学者を悩ませた問題でした。
しかし、答えはすごく単純なものでした。
地球は物質については孤立系ですが、エネルギーについては入出力が可能(=開放系)なのです。
増えたエントロピーは系外、つまり宇宙空間に捨ててしまえばよかったのです。
エントロピーには二種類があります。一つは物エントロピーであり、もう一つは熱エントロピーです。
物エントロピーは物質の存在する状態、拡散の程度によって決まる値です。
熱エントロピーは熱エネルギーの温度によって決まる値です。
@で述べたとおり、地球は物については孤立系ですから物エントロピーを宇宙空間に捨て去ることは出来ません。
地球上のあらゆる活動で生じたエントロピーは最終的に熱エントロピーとして地球大気の上層から宇宙空間に熱エネルギーとともに捨て去られているのです。
Cは、例えば生物体の蛋白質は50℃程度で変性してしまい生きていくことが出来なくなります。
地球上の多くの炭素型の生命体が生きていくためにはあまり高温では都合が悪いのです。
また、あまり低温でも生命体に含まれる多量の水分の影響でこれまた都合が悪いことになります。
また、高等動物を含む地球の生態系で重要な位置をしめる植物の光合成にとってもあまりに低温では反応が進みません。
また、Bにも大きく関わることですが、地球環境に水という物質が液体そして気体の二つの状態で安定して存在できる気温であることも、エントロピーの宇宙空間への廃棄にとって重要です。
ただし、地球上に単純な生命が発生した当時は地表はもっと高温高圧であったと考えられています。
その後の天体としての地球の物理的な変化、発生した生命と環境との相互作用によって、安定した現在の地球環境が形作られたのでしょう。
ここに挙げた4つの条件のうち、一番基本的で重要なのは、AとBであり、地球が太陽光からエネルギーを受け取って地球上の諸活動を通して増大したエントロピーを宇宙空間に廃棄する機構を持ち、あたかも地球全体が一つの『熱機関』として定常的に働いていることです。
環境問題を見る視点:『安定』と『平衡』、『定常』につづく
8/7/2

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