国際エネルギー機関(IEA)が7日、無制限の経済成長を助長する従来の立場を変え、諸国政府にエネルギー政策の劇的転換を要請する報告書・”World Energy Outlook 2006(WEO-2006)”を発表した。これは、グレンイーグルス(スコットランド)及びサンクト・ぺテルブルク(ロシア)における二つのG8サミットの要請に応え、各国がどうすれば化石燃料への依存を減らすことができるかを検討したものだ。
600ページに上るこの報告書の全容は未見だが、IEAのクロード・マンディル事務局長は、「WEO-2006は、我々が今日直面している現在のトレンドの投影に基づくエネルギーの将来は暗く、不安定で、高くつくことを示す。しかし、それは、政府の新たな政策が、いかにしてクリーンで、クレバーで、競争力のある代替エネルギーの将来を創り出すことができるかも示す」と言う。
IEAが2010年に非OPEC原油のピークを予測していることと併せ、オイルピークが現実のものになろうとしているのだろうか?
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Press Release:The World Energy Outlook 2006 Maps Out a Cleaner, Cleverer and More Competitive Energy Future,11.7
http://www.iea.org/Textbase/press/pressdetail.asp?PRESS_REL_ID=187
この報道発表によると、現在の趨勢を変えるための新たな政策がない場合にエネルギー市場がどう変化するかを示す”基準シナリオ”の下では、世界の一次エネルギー需要は2030年までに53%増加する。その70%は、中国、インドを中心とする途上国での増加である。OECD諸国とアジア途上国の石油・ガス輸入は需要よりも速く増加する。世界の石油需要は、2005年の84mb/d(日量百万バレル)から2030年には116mb/dに増え、石油供給増加の大部分は少数のOPEC主要国が満たす。非OPEC諸国の原油生産高は2010年代半ばにピークに達する。2030年の世界の二酸化炭素排出量は、現在よりも55%増え、400億トンに達する。これらの趨勢により、消費国は厳しい供給破綻とそれから生じる価格ショックにますます弱くなり、世界の気候変動の程度も増幅される。
他方、”代替政策シナリオ”は、世界中の政府が現在考えている政策と措置を実行すれば、エネルギーの将来が大きく改善されることを示す。このシナリオの下では、世界のエネルギー需要は、2030年までに10%減る。これは現在の中国の全消費量に等しい。二酸化炭素排出量は、16%減少する。これは現在の米国とカナダを合せた排出量に等しい。OECD諸国の石油輸入と二酸化炭素排出は2015年までにピークに達し、以後減少し始める。エネルギー利用効率の改善がエネルギー節約に最も貢献する。原発と更新可能なエネルギーの利用の増加も化石燃料需要と二酸化炭素排出の削減に寄与する。主要国におけるちょうど1ダースの特定された政策による二酸化炭素削減分が世界の排出削減分の40%を占める。これらの変化は、エネルギー政策の三つの基本的目標ー安全保障、環境保護、経済効率の改善ーすべての達成に資する。
マンディル氏は、これらの政策は非常にコスト効率的で、追加コストは生じるが燃料支出の節約がすぐに上回るようになる、一層効率的な電気製品への需要サイドの投資は特に経済的で、これらの製品への1ドルの投資により回避される発電・輸送・配電インフラストラクチャーへの投資は2ドル以上になると言う。
しかし、こんなことは本当に実現できるのだろうか。バイオ燃料の急速な拡大は、既に食料・飼料穀物の不足と価格高騰を引き起こしている。エネルギーと食料の衝突を回避するために不可欠なバイオ燃料製造技術 (現在のような砂糖キビ、トウモロコシ、大豆ななどではなく、木材・作物残滓、草、藁などを原料とするバイオ燃料生産技術)は大きく出遅れている。森林を破壊するパームオイル・バイオ燃料の拡大は、却って温暖化を加速する恐れさえある。原発の増加は、将来の莫大なコストと温暖化に勝る危険をもたらすかもしれない。
電力消費量が少ない電気機器の開発と普及はどこまで進むのだろうか。企業は省エネ電気製品の開発を進める一方で、新製品の売り込みでますます電力消費量を増やす恐れがある。英国では、ますます大型化する薄型テレビの普及で、テレビによる二酸化炭素は排出量は2010年までに70%増加するという政府諮問機関の報告がある(Flat screen televisions 'will add to global warming',Independent,11.1)。
wood and crop residues, grass, straw
報告は、これらの問題にどう答えているのだろうか。
IEA 世界経済破綻と気候変動の回避を目指すエネルギー政策転換を要請
農業情報研究所(WAPIC)06.11.8より転載
また、下記関連記事も記になるところです。
国際エネルギー機関 世界中の政府に原発建設促進要請へ
農業情報研究所(WAPIC)06.11.3
フィナンシャル・タイムズ紙によると、国際エネルギー機関(IEA)が、来週発表される”世界エネルギー見通し”で、世界中の政府に新たな原発の建設をスピードアップするように要請する。IEAの32年の歴史において初めてのことという。
World urged to build more N-plants,FT.com,11.1
報告書発表に先立つインタビューで、IEAのビロル主任エコノミストが、気候変動とエンルギー供給安全保障が後戻りできなくなる前に行動しようとするなら、明日にも決定することが必要だ、政治家はためらう有権者に原発が安全で必要であると説得する必要がある、投資家にも投資を促す必要があると語ったという。
この報告は、昨年夏のG8会合で、政府がいかにしてエネルギー安全保障を強化し・地球温暖化と戦うかに関するガイドラインの策定を要請されたことに答えるものだ。それは、原発は、オーストリアのようなそれを違法としている国以外のすべての国がエネルギー安全保障と気候変動にかかわる目標を達成するための”不可欠の手段”であり、石炭・ガスと競争でき、ウラン資源も十分にあると論じる。
事故の危険は世界中いたるところに広がる。廃棄物も積みあがるばかりだ。解体やその後の廃棄物処理の費用はどう見積もっているのだろうか。既に解体工事が始まっているフランスの軍事用ウランを生産し・使用済み核燃料を再処理するMarcoule工場の解体費用(廃棄物処理費用は含まず)だけでも60万?(約1兆円)と公式に見積もられ、実際にはそれでも大きく過少評価になると見られている。ル・モンド紙は、核エネルギーは”目も眩むような”費用をもたらすと言う(Le CEA, laboratoire du demantelement de l'heritage nucleaire,Le Monde,10.27)。温暖化に勝るとも劣らぬ災厄が生まれないと保証できるのだろうか。

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