「米国では、医療保険なしが最大の臓器提供要因 ドナーの16.9%が無保険 北東部の病院も危険」
医療・臓器移植
守田憲二氏のサイト
死体からの臓器摘出に麻酔? 掲載記事から
ハーバードメディカルスクール(現在はカリフォルニア州のHighland Hospital勤務)のAndrew A. Herring氏らは、2003年の全米入院患者のデータを分析し、臓器提供者(ドナー)の16.9%が医療保険の無保険者であること、医療保険を欠くことが臓器提供の最大の因子であることを明らかにした。移植患者(レシピエント)の無保険者は0.8%だった。
論文はInternational Journal of Health Services38巻4号p641〜p652に“Insurance Status of U.S. Organ Donors and Transplant Recipients: The Uninsured Give, but Rarely Receive”として発表されている。
http://pnhp.org/organ_donors/からPDFファイルがダウンロードできる。
臓器提供者 移植患者 他の全入院患者
(n=1,447) (n=4,962) (n=7,971,320)
主たる支払い者
メディケア 14.6% 44.2% 37.2%
メディケイド 2.6% 9.0% 18.5%
私的保険 45.8% 44.2% 36.6%
無保険 16.9% 0.8% 4.6%
その他 20.1% 1.8% 3.1%
平均在院日数 3.5日 15.6日 4.6日
平均費用 33,367ドル 174,259ドル19,634ドル
(メディケアは「高齢者医療保険」メディケイドは連邦政府と州政府が共同出資する低所得層向けの「医療扶助」です。)
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米国では、医療保険なしが最大の臓器提供要因 ドナーの16.9%が無保険 北東部の病院も危険
Herring氏らは、米国の入院患者の在院日数の20パーセントに相当するデータを分析し、797万7729回の退院データから、1,447人の臓器ドナー(170人の生体臓器ドナー、47人の角膜ドナーを含む)と4,962人のレシピエントを識別した。これは同年の臓器ドナーの49%、レシピエントの94%のデータの分析に相当するという。
臓器ドナーの16.9%が無保険だったのに対して、レシピエントの無保険者は0.8%、他の全入院患者の4.6%と大差があった。多変量解析によっても、無保険であることは、他の人口統計学な要因よりも臓器提供の強力な予測因子だった。他の臓器提供と関連した因子は、若いまたは中年の成人であること、男性であること、白人非ヒスパニックそして北東部の病院だった。
Herring氏らは「(医療保険を欠くことが臓器提供の大きな因子である)傾向は、移植コミュニティーの価値観や意図を反映しているとは信じない」としつつも、米国の医療システムを“The U.S. health care system denies adequate care to many of the uninsured during life. Yet, in death, the uninsured often give strangers the ultimate gift.”と批判している。
この分析は臓器ドナーの49%しか識別していないが、Herring氏らは「残りのドナーがすべて被保険者でも、全ドナーの無保険者率は他の入院患者の2倍あるだろう。私達の分析は、たぶん保険をかけていなかった臓器ドナーの割合を控えめに見積もっている。支払い人が「その他」の20%の患者の多くが、実のところ無保険だけれども、臓器調達組織がそれらの医療費を支払ったことが考えられる」としている。
当Web注
1. 臓器ドナーの平均在院日数が3.5日と短く、臓器調達組織が費用を支払ったとみられるケースの多さも注目される。受傷時のショックで一時的に脳死判定基準を満たしていたり、治療中に投与された麻酔などの影響で脳死判定基準を満たすかのように偽装された患者を生体解剖している恐れがある。
2. ハワイで入院した患者の家族が、高額医療費を理由に臓器提供を迫まられたものの、家族が断って救命を要求した結果、生還した事例を山口氏が報告している。:*
3. 移植患者のほとんどは、生涯にわたり免疫抑制剤の服用が必要なため、充分な医療保険に加入してない患者が移植を受けるケースは少ないと見込まれる。移植患者のうち無保険者0.8%とその他1.8%に、海外から渡航してきて移植を受けた外国人患者の存在が想定される。外国人患者を除外したデータであるのか否かについては、論文に記載がない。
4. American journal of nursing 2007年6月号p21は、Pediatric Transplantation 2007年3月号からの引用として、米国の医療保険制度が移植患者の生存率を下げていることを伝えた。要旨は「11〜17歳で腎移植患者の1年生存率は脳死腎移植95%、生体腎移植96%に対して、5年生存率が脳死腎移植60%、生体腎移植72%と低い。服薬不履行の50%は年間1万4千ドルかかる免疫抑制剤を買えないことによると見込まれる。ほとんどの保険会社は薬剤保険に生涯限度額の制約を付けている。メディケアは障害者認定されない限り、移植後36〜44ヵ月後または小児患者が大人になった時点で保険適用が切れる」
(American journal of nursingは資料名を示していないが、引用元はHealth insurance considerations for adolescent transplant recipients as they transition to adulthoodhttp://www3.interscience.wiley.com/journal/118490809/abstractと思われる)。
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ハワイ・マウイ記念病院、救命可能な患者から臓器摘出が常識?
生還を祈る母親に、医師は「治療費が最低でも1日約30万円」
臓器提供を拒否して治療継続を要求、生還したTさんの10年間
月刊総合ケア(医歯薬出版)第12巻8号 (2002年8月号)は奈良市・やまぐちクリニックの山口 研一郎院長、作業療法士の西口 嘉和氏、中出 幸子氏、和田 志野氏による『「全臓器提供」より奇跡的に生還した女性』を掲載した。
この女性:Tさんは24歳になったばかりの1991年12月、会社の慰安旅行でハワイに行き、乗用車がカーブを曲がりきれずに1.5mの崖下に転落。同乗者の1人が死亡する大事故で、後部座席に乗っていたTさんも頭部を強打し昏睡状態になり、地元のマウイ記念病院へ搬送された。
来院時、深昏睡、両側瞳孔拡大、除脳姿勢をとっていたTさんには気管内挿管が行われ、人工呼吸器が装着された。頭部CTでは@右前頭葉、頭頂葉、側頭葉にまたがる脳内出血をともなう脳挫傷A両側脳室内出血、が生じていた。
事故翌日、大阪府内の両親が現地に到着。Tさんの生還を祈り続ける母親。それに対し病院側はTさんが遺書(「ドナーカード」のことと思われる)を所持しているか否か確認し、両親を困惑させた。事故後3日目、意識状態が改善する傾向が見られた。必死に見守る両親に対し、医師は治療費が最低でも1日約30万円になることを伝えた。そして、現在、臓器不全で移植を待っている人が数多くおり、「Tさん1人で20名の患者が助かる」とつけ加えた。入院当時のカルテを見ると、外傷とは直接関係ないと思われるさまざまな臓器について、詳細なチェックが行われている。
娘の死を予想だにしなかった両親は、全臓器提供の話を「眠れない位のショックな話」と受け取ったものの、気を取り直し「20名の人の命を助けられるのなら、娘一人の命が助からないはずはない」と確信し、臓器提供を拒否、医師に治療の継続を願い出た。その後の治療は日本の救急医療機関とは比べものにならないほど徹底していた。
翌年1月に挿管チューブが抜け、1月中旬、空路、大阪府内の病院へ。機能回復の治療、訓練を開始。1月末はじめて発声、2月中旬に不安定ながら歩行が可能となった。同時に導尿用バルーンも抜去。7月初旬、自宅へと退院した。1992年12月中旬、「症状固定」の診断書が作られた。

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