経済成長と「信用創造」:近代的預金と「信用創造」 3から続きます。
● バブル形成と「信用創造」
「信用創造」の側面から、「バブル形成期」と「高度成長期」の違いを簡単に見てみる。
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[貸出残高/通貨発行残高及び実質GDP伸び率の推移]
貸出残高/
通貨発行残高 実質GDP
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60年: 6.6倍 13.3%
61年: 6.6倍 11.9%
62年: 6.6倍 8.6%
63年: 7.1倍 8.8%
64年: 7.3倍 11.2%
65年: 7.5倍 5.7%
66年: 7.6倍 10.2%
67年: 7.4倍 11.1%
68年: 7.2倍 11.9%
69年: 7.0倍 12.0%
70年: 7.1倍 10.3%
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80年: 7.1倍 2.8%
81年: 7.5倍 2.8%
82年: 7.5倍 3.1%
83年: 8.3倍 2.3%
84年: 8.6倍 3.8%
85年: 9.3倍 4.4%
86年:11.2倍 3.0%
87年:11.6倍 4.5%
88年:11.5倍 6.5%
89年:11.0倍 5.3%
90年:11.1倍 5.3%
ちなみに、00年の貸出残高/通貨発行残高は7.3倍である。
通貨発行量の絶対額も小さく経済主体の資金需要も旺盛だった「高度成長期」よりも、経済主体も余剰資金を持つようになった「成熟期」に入った83年以降のほうが、通貨発行残高に対する貸出残高の倍数は大きく、「バブル形成期」の86年以降になると、さらに大きくなり11倍を超えている。
期間の通貨発行残高・貸出残高・GDP成長率・物価上昇は、
通貨 貸出 実質 名目 卸売 消費者
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60〜70年 4.5倍 4.8倍 2.6倍 4.6倍 1.1倍 1.7倍
80〜90年 2.1倍 3.2倍 1.5倍 1.8倍 0.9倍 1.2倍
となる。
この表を見ると、60年代は通貨発行残高・貸出残高・名目GDPが4.5倍から4.8倍の間でほぼ揃っているのに対し、80年代は、それらが2.1倍・3.2倍・1.8倍とばらけ、なかでも特徴的なのは、通貨発行残高の倍数よりも、名目GDPの倍数のほうが小さいことである。
マネーサプライと経済活動の関係を計る指標として“マーシャルのK”があるが、その考え方をM2+CD/名目GDPで計算すると、66年は0.77で、86年は1.01である。
(通貨は通貨に収斂されるという考えを持っているので、マネタリーベースをM2+CDでは捉えないが、“マーシャルのK”という経済指標については、「信用創造力」と「金融財取引比率」で規定されるものだと考えている。別の表現を使うと、貯蓄比率が高く金融資産の取引に使われている通貨の比率が高いと、“マーシャルのK”が高くなるはずである)
“マーシャルのK”ならぬ“あっしらのK”(冗談)として(貸出残高倍数/通貨発行残高倍数)*(貸出残高倍数/名目GDP倍数)の値を算出すると、「信用創造力」と「金融財取引比率」という状況がよく見えると考えている。
式中の(貸出残高倍数/名目GDP倍数)の値は、小さいほど労働成果財の経済活動に通貨が使われ、大きいほど非労働成果財(金融財)取引に通貨が使われていることを示唆する。
式中の(貸出残高倍数/通貨発行残高倍数)の値は、大きいほど「信用創造力」=貯蓄比率が高く、小さいほどそれが低いことを示唆する。
算出した“あっしらのK”は、60年代が1.113、 80年代は2.709である。
“あっしらのK”は、言い換えれば、“バブルのK”とも呼ぶべきものである。
通貨発行額に較べて預金残高が多くしかもそれが多く貸し出され、貸し出された通貨が金融資産取引に使われれば使われるほど、バブルはより大きく形成されていく。
80年代に、大蔵省及びその管理下にあった日銀と銀行が“あっしらのK”を60年代と同じ水準に保っていれば、劇的な崩壊に結びつくバブルは形成されなかったはずである。
経済主体が事業活動を拡大したり継続するために必要な資金量を超える貸し出しが行われ、それが、通貨的利益拡大を目的とした株式や不動産などの金融資産取引に投じられたことで、破滅的な崩壊に結びつくバブルが形成されていったのである。
類似的な指標として、実質GDP倍数/貸出残高倍数が考えられる。
これは、貸し出しが「労働価値」上昇にどれほど貢献したかといった指標で、値が大きくなればなるほど、貸し出しが、「労働価値」の上昇に貢献した、すなわち、最新生産設備に更新されるために使われたことを意味する。
60年代は0.54で、80年代は0.47となり、60年代は80年代の1.15倍である。
この値が小さくなれば、通貨がバブル形成的に使われたということになる。
通貨がバブル形成的に使われたことは、60年代に較べると「労働価値」の上昇ペースが大きく低下しているのに、貸出残高増加に見合うほど物価が上昇していないことでもわかる。
先ほど「労働価値」上昇を推計するのに使った(貸出残高倍数/卸売物価倍数/就業人口倍数)に適用すると(就業数倍数は1.13倍)、80年代の「労働価値」上昇は2.9倍になる。崩壊したことでバブルがあったことがわかっているので、貸出残高のほとんどが労働成果財の生産活動に投じられたとは言えず、この2.9倍には信憑性がない。
「その調整として“あっしらのK”を利用すると、80年代は2.709だから、80年代の「労働価値」倍数2.9は、2.9/2.709=1.07になる。」
これは、80年代に家計実収入が実質財価格ベースで1.24倍になっていることから、整合性がない値と判断できる。
“あっしらのK”算定式中の(貸出残高倍数/名目GDP倍数)の値は、60年代が1.02で80年代が1.78である。
この値を使うと、80年代の暫定「労働価値」倍数2.9は、2.9/1.78=1.63と調整することができる。
この数値あたりが、80年代の国民経済的に見た「労働価値」の上昇値ではないかと推定される。
GDPデータを基礎とした「労働価値」上昇の算定式を、暫定的に、(貸出残高倍数/卸売物価倍数/就業人口倍数)/(貸出残高倍数/名目GDP倍数)とする。
データが揃っている60年以降を10年刻みでまとめたものは次のようになります。
通貨 貸出 実質 名目 卸売 消費者
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60〜70年 4.5倍 4.8倍 2.6倍 4.6倍 1.1倍 1.7倍
70〜80年 3.5倍 3.4倍 1.6倍 3.3倍 2.0倍 2.4倍
80〜90年 2.1倍 3.2倍 1.5倍 1.8倍 0.9倍 1.2倍
90〜00年 1.6倍 1.0倍 1.1倍 1.2倍 0.9倍 1.1倍
就業者 実収入 消費支出 調整収入 調整消費 労働価値
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60〜70年 1.1倍 2.8倍 2.6倍 1.6倍 1.5倍 3.8倍
70〜80年 1.1倍 3.1倍 2.9倍 1.3倍 1.2倍 1.5倍
80〜90年 1.1倍 1.5倍 1.4倍 1.3倍 1.2倍 1.6倍
90〜00年 1.0倍 1.1倍 1.0倍 1.0倍 0.9倍 1.3倍
※ 通貨=通貨発行残高・貸出=貸出残高・実質=実質GDP・名目=名目GDP・卸売=卸売物価指数・消費者=消費者物価指数・就業者=就業者数・実収入=勤労者家計・消費支出=勤労者家計・調整収入=実収入倍数/消費者物価倍数・調整消費=消費支出倍数/消費者物価倍数で、労働価値は、(貸出残高倍数/卸売物価倍数/就業人口倍数)/(貸出残高倍数/名目GDP倍数)で算出した値。
7/2/16

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