「近代経済システム」における金利と物価の変動:「近代経済システム」における金利と物価の変動 1から続きます。
● 管理通貨制における金利の規定論理
現在のところ、先進諸国通貨に限っても、管理通貨制における金利の規定論理を一律的に論じることはできない。
ご存じのように、国際基軸通貨である米ドルとその他の通貨は、通貨としての性格が異なり、その他の通貨でも、国際交換性を有する通貨とそれがない通貨とに分かれるからである。
まず、日本円など米ドル以外の主要国通貨を考える。
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◆ 米ドル以外の国際交換性を有する通貨
国家と中央銀行の関係や国家政策の基盤によって、銀行利益優先か、産業利益優先かで実態が異なるため、ここでは銀行の論理を優先した説明を行う。
金本位制と違って通貨の発行量に制限はない。
そして、国際交換性があることで可能なのだが、一般的には国民経済を超える貸し出しがそれほど行われるものではない。
(ユーロそのものが国民経済を超えた貸し出しで流通を始めるものだが、それ以前の世界と考えてもらってもいいし、ユーロ圏を単一国民経済と見なしてもらってもいい)
通貨発行量の制限がないということは、借り入れ要望量と貸し出し可能量とのあいだで需給論理が働かないということである。
商業銀行が媒介するとは言え、借り手の要望に中央銀行がどう対応するかという一方的な選択である。
そして、その一方的な選択は、銀行という経済主体が内包している“資本の論理”に従うものになるはずである。
銀行は、できるだけ高い金利で、できるだけ多く貸し出しを行いたい。
しかし、利息と元本を回収して、それが実質価値ベースで貸し出し時の元本を上回っていなければならない。
貸し出し量を増やすということは、インフレ率を高める可能性を持つ経済行為である。
しかし、貸し出し量を増やさなければ迅速な“資本の増加”を達成できない。
おそらくまともな中央銀行であれば、予測インフレ率+1〜2%を“固定的な”貸し出し金利として設定したであろう。
元はタダなのだから、それで十分な利益=資本増加が得られる。商業銀行も、(予測インフレ率+1〜2%)+2〜3%といった貸し出し金利を設定しているだろう。
商業銀行の判断からは、予測インフレ率が抜け落ち、公定歩合+2〜3%になるが...。
“資本の論理”は、貸し出し金利がインフレ率を下回らないこと、すなわち、貸し出し金利は予想インフレ率以上で設定されるはずだから、実際のインフレ率が予想インフレ率を上回らないということに集約される。
5%の予想インフレ率であったものが、実際は10%のインフレ率になれば、8%の貸し出し金利であっても、実質マイナス2%の金利になってしまう。
これは、おみやげ付きで通貨を貸し出したことを意味し、利息を含めて戻ってきた通貨の実質価値は、貸し出し時点よりも減少する。
(英国などが実施している「インフレターゲット政策」は、このような意味で金融経済主体の利益に沿ったものである。産業経済主体や失業者などは、インフレになってもいいから通貨を増やして欲しいと考えるものである)
次に問題になるのは、借り入れ要望量である。
国際的な貸し出し対象にならない通貨であれば、国民経済内の借り入れ要望量が通貨に対する需要になる。
不況であれば前向きな借り入れ要望は減少し、好況であれば前向きな借り入れ要望が増大する。
銀行は、経済主体が赤字を補填するような借り入れにはあまり対応したくないので、貸し出し金利は下降する傾向になる。
逆に、前向きな借り入れが増大すれば、貸し出し金利は上昇する傾向になる。
そして、商業銀行が自己資本や預金を多く抱えていれば、最大の資本増加機会である高い金利のときにより多くの貸し出しが行われることになる。(むろん、中央銀行は、商業銀行の財務状況や“性格”を知っているので、それを織り込んだ対応をする)
後ほど説明するが、このような高金利期に、予測インフレ率が現実のインフレ率によって裏切られることが多い。貸し出し金利の上昇は、インフレを抑制するのではなく、逆に、インフレ率を高めるものである。
もう一つ副次的な問題として、インフレ率と金利の国際比較が、外国為替レートの変動要因になることである。
自国通貨高を望むのであれば、インフレ率は相対的に低く、金利は相対的に高くというスタンスになり、自国通貨安を望むのであれば、インフレ率は相対的に高く、金利は相対的に低くというスタンスになる。
銀行は、自国通貨で国際貸し出しを行う比率が高いほど、自国通貨高を望む。
(米ドルで国際貸し出しを行う場合は、貸し出し時が自国通貨高、返済時が自国通貨安という志向になる)
◆ 米ドル
米ドルも他の主要通貨と同じように、通貨の発行量に制限はない。
(米ドルは、70年まで、金本位制ではなかったが保有金量の4倍という発行量の制限を法的に受けていた)
しかし、国際基軸通貨であることから、往時の英国ポンドと同じように高い国際通用性を誇っており、その点で他の主要通貨とは根源的に異なる。
これは、米ドルに対する需要が国際的で、かつての英国ポンドと同じような国際貸し出しができることを意味する。
日本をはじめとするアジアの一部国民経済を除けば、英国ポンド隆盛時と同じように、世界のほとんどの国民経済が経常収支赤字すなわち通貨=資本不足に陥っている。
これは、イングランド銀行やその他の英国商業銀行ができるだけ有利な貸し出しを自由に選択できる状況にあったことと同じ条件を、FRBや米国商業銀行及び経済主体に与えていることを意味する。
(FRBは間接的だが)
米国金融経済主体にとって、世界を眺め、好況もしくは成長条件がありながら通貨不足に悩んでいる国民経済(経済主体)を見つけ出すことで、より有利な貸し出し条件が手に入れられるという世界経済構造である。
戦後米国が、無償か有償かを問わず、諸外国に多額の金融及び経済支援をしたことは賢明であった。
世界の通貨的“富”の過半を手にした(債権を含めると3/4ほど)米国国民経済がそれを握りしめたままであれば、そのような量の通貨を手に入れるほどの経済活動を行ってきた経済主体の経済活動を低落させるのみならず、資本=通貨が十分すぎるほどある国民経済内では銀行の資本増加手段である貸し出しも思うに任せない。
そのような状況を打開するために、諸外国の生存維持を助けるためであり自国農業の利益を維持するための無償援助を政府が税金で行い、諸外国の産業を再建するためであり自国産行の利益を維持するための有償援助と国際貸し付けを政府と金融経済主体が行った。
(世界銀行=国際復興金融公庫も米国が保有する通貨に依存したもので実質的には米国の金融経済主体)
それと同時に、米国の経済主体は、余剰通貨(自己もしくは他者)を対外直接投資に振り向けていった。
連合国の「兵器工場&生活品工場」として急拡大した国民経済内には、生産する財の転換のために必要な資本化は多くあっても、新たに資本化する余白が少なかったからである。
また、根っからの「兵器工場」=軍需産業は、“反共”と“冷戦”を支えにした国防予算(世界各地に展開する米軍基地)と同盟国への輸出に依存し続けた。
一般経済主体までが対外直接投資に活路を求めるのだから、銀行も、国際貸し出しに“資本の論理”を実現する場を求めなければならない。
一般経済主体の対外投資に対して貸し出しを行うだけではなく、戦後ある時期までの日本のように直接投資を制限していながら通貨=資本不足に悩んでいる国民経済に直接の貸し出しを行った。
戦後の米国金融経済主体は、貸し出しが国内に限られていれば、資本を増加させるかたちでの貸し出しができない状況に置かれていたのである。
そして、国際貸し出しがきちんと利息付きで返済されるためには、貸し出し先の国民経済が米ドルを稼ぐための唯一の手段である輸出を拡大しなければならない。
(ベトナムドンを今でも国際金融経済主体が受け取らないように、1960年頃の日本円を受け取ってもらえなかった)
貸し出し先国民経済の輸出に関しても、米国以外に余剰の米ドル=通貨を持っている国民経済がほとんどないという状況だから、米国が輸入を拡大しなければならないことを意味する。
現在の米国経済の惨状は、戦後ある時期まで絶対的な経済合理性であった経済活動を、その時期が過ぎた後まで継続してきたことに帰因する。
別の表現をすると、国民経済全体にとっても不可欠であった金融経済主体の国際貸し出し(一般経済主体の対外直接投資を含む)が、金融経済主体と一部一般経済主体にとっての利益のみに貢献する時期になってもなおそれが継続されたことが原因である。
少々話がそれたが、米国の金融経済主体は、蓄積した通貨量の多さから選択の余地がないかたちで国際基軸通貨となったドルを貸し出す主体であることから、絶対的には通貨=資本が不足している世界で、相対的に高い貸し出し金利を享受できたということになる。
そして、それは、かつての英国と同じように、国内で通貨=資本不足に陥っている経済主体に高金利という災厄をもたらした。
米国通貨当局が望まなくとも、米ドルが国際基軸通貨であり続け、世界全体が通貨=資本不足であり続ける限り、「相対的ドル高」と「相対的ドル金利高」になるのが、経済論理に照らしてふさわしいものである。
現実的にも、米国の金融経済主体は「ドル高」と「ドル金利高」を志向するので、ドルの対外通貨レートや国内金利の調整が遅れがちになり、産業の競争力低下が他の国民経済以上に進みやすい。
米国の銀行も、貸し出し量を増やさなければ迅速な“資本の増加”を達成できず、貸し出し量を増やすということが、インフレ率を高める可能性を持つ経済行為であることは変わらない。
しかし、これまでの説明から、発行した通貨(ドル)の相当部分が国民経済外の労働成果財取引で使われ、貸し出しの返済というかたちで利息付きで戻ってくる。
これは、米国内で生産された財に対する取引に使われない通貨が多く存在するということで、米国のインフレ圧力を減じてくれる。
米国の貿易収支赤字は3千億ドル(約35兆円)まで増加してきたが、これもインフレ抑制に貢献してきた。
国内経済主体と競争関係にある財はその価格が外の方が安いから輸入されるのであり、輸入財に負けた財は生産されなくなるから通貨量=資本は減少する。
(輸入代金はドルの流出だがその経済主体はその財を販売して輸入代金より多いドルを手に入れる(はず)。しかし、国内で販売される財に向けられる通貨量は、輸入された財を生産していた資本(労働者の給与)の減少により減っていくことになる)
貿易収支赤字部分を輸入して消費する主体がFRBであれば、通貨発行主体であるFRBが貿易赤字を補填したのと同じことなので世界的なインフレを誘発するが、流出したドルが投資で戻ってくるかたちなど他の手段であればインフレにはなりにくい。
(経常収支の赤字以上にドルが還流してくるとインフレになる)
FRBは“資本の論理”から輸入主体になることはないから、流出したドルの還流が減少する度合いに応じて米国の輸入が減少していくなかで、経常収支が均衡することになる。
(ドルの還流額と貿易収支の赤字額が等しいと仮定すれば、ドルの還流が0になる過程=貿易収支が均衡する過程で、対米輸出国の輸出は激減していき、米国の産業は少しずつ活況を呈するようになるが、米国国民経済全体は急激な縮小になる)
7/2/19

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