「金本位制における金利と物価の関係::「近代経済システム」における金利と物価の変動 4」
世界経済を認識する基礎
管理通貨制における物価変動:「近代経済システム」における金利と物価の変動 3から続きます。
● 金本位制における金利と物価の関係
過去の経済システムなのだが、同じ「近代経済システム」なので、金本位制の金利と物価がどう関係しているかを考察してみたい。
経済主体が考えるコストと財価格の関係は、管理通貨制と変わらない。
違いは、通貨の貸し出し量が、中央銀行が保有する金の量で規定されているということである。
以下のどの場合も、国内向け紙幣発行量を規定する保有金量とし、輸出入を考慮外とする。
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[金利上昇]
1)通貨量一定
中央銀行の保有金量が一定であれば、金利が上昇しても通貨量は変わらない。返済された通貨が新たな貸し出しに回るだけである。
この場合は、財への需要は変わらないから、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、どちらであっても利息の増加で経済主体の利益が減少する。
経済主体が財の価格上昇に固執すると、販売量低下→資本化減少→需要減少という悪循環で不況へ向かう。
2)通貨量増加
中央銀行の保有金量が増加し、金利を上昇させるとともに通貨量も増加する。
この場合も、財への需要は増加するがその分財の供給も増えるので需給関係は同じで、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。
3)通貨量減少
中央銀行の保有金量が減少し、金利を上昇させたが総通貨量は減った。返済された通貨がそのまま中央銀行に残る。
この場合は、財への需要は減少するがその分財の供給も減少するので需給関係は同じで、財の価格を上昇させたことで財の販売量が減少したり、財の価格を上げることができないことになり、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。
このように、通貨量の変動は、増減いずれの場合でも同じ結果をもたらすが、経済主体が利息を支払うことで、一時的に再資本化できる通貨が減るので、利息がすぐに貸し出しが回らない限り、一時的には需要減少方向=物価下落に動く。
しかし、借り入れをした経済主体の利益が減少し、再資本化を増加させようとすれば、より借り入れに依存しなければらないため、経済活動は抑制すなわち不況に向かう。
[金利下降]
1)通貨量一定
この場合は、財のコスト低下で財の価格下落余地が生まれるが、通貨量は変わらないことから財の供給も財への需要も変わらないので財の価格も変わらず、経済主体の利益が増加することになる。
得た利益をすぐに資本化することで、財の生産量と販売量は増えるが、財の価格は変動しない。但し、この増加は、それほどの量ではなく、金利の下降傾向が止まればなくなる。
(銀行が受け取る利息の減少がもたらす効果である。これにより、失業者が減少する)
2)通貨量増加
この場合は、通貨量は増加したことで財の供給も財への需要も同じように増えるので財の価格も変わらず、“1)通貨量一定”の場合と同じ結果になる。
3)通貨量減少
中央銀行の保有金量が減少し、金利が下降し総通貨量が減少した。
この場合は、通貨量が減少したことで財の供給も財への需要も同じように減るので、財の価格も変わらず、経済主体の利益が増加することになる。
得た利益を資本化すれば、財の生産量と販売量が増えるが、財の価格は変動しない。
通貨量が減ったことで失業者は増大しているが、これにより、少し緩和される。
このように、通貨量の変動は、増減いずれの場合でも同じ結果をもたらすが、経済主体が利息として支払う通貨量が減ることで、迅速な資本化が行われやすくなり、経済活動の活発化すなわち好況をもたらす。
金本位制であれば、経済学が語っている「高金利は物価上昇を抑制し、低金利は物価を上昇させる」という理論がある程度通用するとも言える。
(余剰通貨を持つ経済主体や家計が多ければ、高金利でも物価が一時的に上昇することは、管理通貨制の場合と同じ)
しかし、冷静に考えればわかるように、輸出入を含めないここまでの想定であれば、インフレは通貨現象とするマネタリズムのほうが通用性が高い。
なぜなら、
高金利は利息として引き上げる通貨量を増やすことで、労働成果財に向けられる通貨量を減らし、物価を下落させる。
低金利は利息として引き上げる通貨量を減らすことで、労働成果財に向けられる通貨量を増やし、物価を上昇させる。
という論理になるからである。
次に輸出入を考慮に加えてみる。
どの場合も、輸出が増加すれば、財の価格上昇につながり、経済主体の利益を増加させる。輸出が大きく増加すれば、財の大幅な価格上昇や経済主体に大きな利益増加をもたらす。
(金利上昇によるコスト増加も、輸出増加による財の供給量減少により、財の価格上昇がスムーズになり吸収されやすくなる)
輸入の増加は、それにつれ輸出も増えるのであれば、金保有量を増減させないので、国内向け通貨量には影響を与えない。輸入経済主体が通貨を支払って正貨を手に入れ、減った正貨を輸出経済主体が補ってくれれば、輸入経済主体が支払った通貨を再度貸し出しに回るからである。
(輸入増加が基本保有量の減少になれば、通貨量が減るため、国際借り入れをしないと不況になる)
しかし、輸入される財が国内の経済主体と競争関係にあるものならば、財価格の低下そして経済主体の利益減少に結びつき、その財を生産する資本=通貨の量を減少させていくので、物価を下落させる。
そして、相手との相対的な比較になるが、財の価格下落は輸出競争力を高め、財の価格上昇は輸出競争力を低下させる。
(金為替本位制の固定レートだから、価格変動が変動制相場制とは逆に働く)
このように、金本位制も、物価と金利が直接結びつくわけではなく、輸出入の変動が物価の変動に大きな影響を与えることがわかる。
このように、通貨管理制でも金本位制でも、「労働価値」の上昇をベースにした競争関係にある財の輸出入差の増減が、本質的な物価変動規定要因であることがわかる。
7/2/20

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