米国経済にとっての「ドル安」の意義 から続きます。
■ W.ブッシュ政権の“覚悟”
81年に誕生したレーガン政権は、「債務国家」として歩む道を選択した。
01年に誕生したW.ブッシュ政権は、どういう道を選択したのだろう。
当然、迷っているのではなく、選択は終わっている。
W.ブッシュ政権というとW.ブッシュ大統領を買い被りすぎになるので、米国政権を政策表明と政策実現(軍事力)の重要な代理人にしている世界経済支配層は、選択を終わっている。
だからこそ、米国経済と米国財政を揺るがすことになる「ドル安」と「低金利」を放置しているのである。
「ドル安」ということは、ドルというババを他の通貨を保有する人に押しつけたがる人が増えているということである。
わかりやすく言えば、経済支配層が、ドルではなく他の通貨(現金ということではなく、通貨で手に入れられる証券や実物資産を含む)を選好しているということである。
93年から7年かけてたっぷり膨らませたドル資産を、他の通貨資産に組み替えているというのが現在進行している「ドル安」の内実である。
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もちろん、米国株式市場の株価下落過程にもドル資金は投入されている。空売りと精算の買いのためにも厖大なドル資金が注ぎ込まれている。
これは、世界経済支配層と米国経済主体を含むその他経済主体とのあいだで繰り広げられる金融資産争奪戦である。
そして、その勝利は予め決まっている。経済政策の制御力に勝り資金量にも優れている支配層が勝利することになる。
現在他の通貨資産になっている資金も、米国株式市場が終末的崩壊を迎えれば、米国株式市場に向けて流れ込むことになる。優良資産を保有していたり、収益力に優れている企業の株式を超破格値で買い占めるためにである。
その結果起きるのは、高値の時に株式に資金を投入し、安値になったときに株式を売却することになる一般経済主体から経済支配層への“通貨の移転”である。
うんと捨象として言えば、「経済支配層が保有していた株式をその他経済主体が高値で買い取り、株価がパニック的に崩壊したときに、経済支配層が底値で株式を買い戻す」という構図である。
もっと単純化すれば、「50億ドルを投じている企業オーナーが株式時価総額が100億ドルになったときに保有株式を売却し、数年後に、株式時価総額が30億ドルになったときに買い戻す」というものである。
この企業オーナーは、いったん手放した企業のオーナーに戻るだけではなく、加えて現金70億ドルを手に入れたことになる。
企業に投じた50億ドルを差し引くと20億ドルの丸儲けである。
(買い戻し価格をよりいっそう低くするために、実体のない損失や不正経理を活用したりもする)
このような“ドル資産の移転”は、米国国民経済の失速をもたらす。
“ドル資産の移転”を受けた経済主体(支配層)は、機が訪れるまで資金を使おうとしない一方で、“ドル資産の移転”で支払った経済主体は、債務を支払えなくなったり、お金不足で日常の生活に支障をきたしたりするようになるからである。
こうしてアメリカ経済は、深刻な「デフレ不況」に陥る。
世界最大の輸出市場である米国の「デフレ不況」は、主要国に輸出不振を招来する。
それを通じて、米国の「デフレ不況」が世界に輸出されることになる。
資金を厖大に膨らませた経済支配層は、それを機に、各国の株式市場を操作し、「デフレ不況」に喘ぐ諸国の優良企業株式や優良資産を超破格値で買い漁る。
W.ブッシュ政権は、このような状況に米国経済や世界経済が陥ることを覚悟したと考えている。
これは同時に、米国政府債務の「デフォルト」を意味する。
経済支配層は、米国債から手を引いているはずである。そうであるならば、外国経済主体であろうが、米国経済主体であろうが、米国債というババでどういう災厄を被ろうが知ったことではない。
貯蓄率が0%という米国国民経済では、日本のように自国の預貯金で国債を消化することはできない。
厖大な資産を抱えている経済支配層は、米国政府がきちんと債務を履行するために、増税というかたちで自分たちの資産が流出することを認めない。
民間銀行であるFRBも、経済支配層の資産価値が目減りしてしまう「米国債の直接引き受け」は行わない。(ドル紙幣を印刷して供給量を増やすことが利益に適うときはそうしてきたが、利益に反するときは行わない)
議会が政府債務の上限引き上げを承認しようが、そのために発行される国債を引き受けてくれる経済主体がいなければ画餅に終わってしまう。
米国債のデフォルトで、利払いだけで3,000億ドル(約36兆円)以上浮くことになる。
これは、4,400億ドル(約53兆円)という経常収支赤字=資本収支黒字には達しないが、5%の利率で計算したものだから、平均国債利子率が7%であれば、4,200億ドル(約50兆円)と経常収支赤字にほぼ匹敵する金額になる。
預言者ではないので、このようなことがいつ目に見えるかたちになるかはわからない。
しかし、既にその方向に進んでおり、目に見えるようになるのもそう遠い先ではないだろう。たぶん、今年から来年にかけて明白になるのではないかと推測している。
W.ブッシュ政権を中心とする先進諸国は、そういう経済状況下で、「対テロ世界戦争」を戦わなければならないことになる。
それは、世界経済の構造を緊急に再構築しなければならないことを意味する。その予測については別の機会に行うが、現在とは大きく違うものになるだろう。
少し気になるのは、1ドル=1ユーロに収斂させようという気配が感じられることである。これをベースに英国がユーロ通貨同盟に加われば、日本を除く主要先進国に、通貨統一を進めやすい条件が生まれることになる。
W.ブッシュ政権が決意したのは、最強軍事国家として世界覇権の道を歩むことである。
今回書いてきた予測を裏切ることができるのは米国民だけである。
米国民の多数がW.ブッシュ政権が吹く笛の音に付き従うのなら、この予測は避けられないと思っている。
W.ブッシュ政権は、国内の“反乱”を抑え込むために、テロ対策に名を借りた未曾有の「治安強化態勢」を敷いている。
7/9/1

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