■ 経済学者などはなぜ低金利でデフレから脱却できると考えるのか
世の中のあんなにも多くの人たちが「デフレ不況だから金融緩和=低金利政策を」と叫んでいるのは、金利を“転嫁できないコスト”と考えたり“資金需要を調整するもの”と考えているからではないかと推測する。
しかし、これはある経済主体の一時的な経済活動には当てはまるが、長期的、そして、経済活動全体には適用できない考え方である。
人気blogランキング <-- クリックしていただくと、より多くの方に読んでいただけます。ご協力お願いします。
● 高金利が打撃を与えるかもと考えられる経済主体
“一般論”が一時的に適用できるかも知れない経済主体の一つは、家計である。
不動産や自動車を購入する場合、ほとんどの人がローンを組むことになる。
自宅や自家用車は、それ自体が収益を生むものではないから、金利が高くなるとそのまま支出の増大=負担増につながる。
しかし、この場合でも、インフレが予測される経済状況であれば、購入した物件価格も上昇し、給与も上がるので、資産とのバランスや実質金利ということを考えれば長期的な負担増にはならない。
金利が下がると、不動産などが買いやすくなったように感じられやすいが、それは錯覚である場合が多い。返済期間中に、インフレ率が低下したり、デフレになったり、給与が下がったりすれば、実質的には高負担になってしまうからである。
結局は、同じインフレ率予測のときに金利が上下したときやインフレ率予測に逆らうような金利変動があったときにのみ、“一般論”が“一時的に”適用できることになる。
(インフレ率予測と逆方向に金利が設定されても、そのような金利が設定されたことでインフレ率予測自体が覆されるからである。インフレが進んでいけば、あるときの高金利も高金利だとは受け止められなくなる)
もう一つの経済主体は、新規であれ借り換えであれ国債に依存しながら財政支出を行っている政府部門である。
政府部門は、金利が上がると国債コストが上昇することになり、同じ財政支出を実現しようとすれば、より多くの国債を発行しなければならないことになる。
ところが、金利が上がれば、上の表のようにより高いインフレ率になるのだから、税制が変わらなければ、その分税収が増えることで調整されることになる。
このようなことから、金利は実質金利が問題であり、表面金利は、“資金需要”について、限定的な経済主体に対して一時的な影響しか与えない。
● 高金利をものともせず低金利も価格に反映させない経済主体
上の表を見てもわかるように、産業部門は、輸入物価が下がったり卸売物価が下がっても、それを消費者物価に反映させようとせず、利益拡大の条件に活かそうとする。
それとは逆に、輸入物価が上がったり卸売物価が上がったときには、それらの上昇率以上に商品価格を上げて利益を確保(拡大)しようとする。
このようなコストの販売価格への転嫁は、金利にも当てはまるのである。
高金利(表面利率)で借りたお金で事業活動を行ったら、これまでより高い価格で商品を売らないと同じ利益すら上げることができなくなる。
このため、金利が上がるだけで輸入物価や給与が同じであれば、商品販売価格=消費者物価&卸売価格が上がることになる。
逆に低金利(表面利率)で借りたお金で事業活動を行ったら、これまでと同じ価格で商品を売っても、金利コストが下がった分、従来以上の利益を上げることができる。
産業部門は、輸入物価や卸売物価が下がっても消費者物価が下がらなかったように、金利が下がっても、利益を拡大しようと考え商品価格を“自主的”には下げようとはしない。
上の表の[期間C]のように消費者物価が下がるという現象は、金利が下がった分を販売価格に反映させなければならないほど消費者の需要が低迷しているということを示唆している。
2000年のように、輸入物価も卸売物価も上昇しながら消費者物価が下落したというのは、産業部門が、利益の確保よりも、企業の存続を賭けた競争状態に入ったことを意味する。そして、そのような実状が、GDPのマイナス成長になって現れているのである。
■ 金融=銀行部門はデフレを好む
産業部門は、通貨→商品→通貨という流れで経済活動を営むので、適正なインフレを好み、デフレを忌み嫌う。
通貨を商品に変えて生産活動した結果、商品価格が下落していたら、元々の通貨をそのまま保有していたほうが得だったと言うことになるからである。
しかし、銀行はどうだろう。
銀行は、通貨で通貨で稼ぐ経済主体だから、通貨価値が高まるデフレを好むことになる。
インフレが予測を超えて進めば、貸し出しせずに、換金性の高い商品を買ったほうが得という場合があるからである。
例えば、3ヶ月後に元本を全額返済する約束で3%の金利で貸しても、その3ヶ月にインフレが5%進んでいれば、金を貸すよりも換金性の高い商品を買っておいて高くなった時点で売り払ったほうが得だからである。
通貨を多く保有している経済主体は、デフレであれば、黙っていても保有通貨の価値が上がる。
そして、1%の利子でも安全確実な担保(デフレだから掛け目は下げる)をとって相手に貸せば、インフレ期と同じように利益を上げることができる。
銀行は、インフレ期においても、損をしないように金利を設定する。
中央銀行を含む銀行は、常に予測インフレ率よりも高い金利で貸し付けを行う。
銀行は、予測インフレ率を上回るようなインフレになりそうだったら、貸し付け量を減らして、インフレを抑える。
インフレを抑えるのは、金利の上昇ではなく、通貨供給量の制限である。
金利が高くても、そのコストを商品価格に上乗せして販売できると考える経済主体は、借り入れをいとわないからである。
銀行は、利子率が高ければ高いほどより大きな利益を上げることができる。
しかし、その利子率は、インフレ率を考慮した実質利子率でなければならない。インフレが予測を超えて進みすぎると、実質利子率がマイナスになり損失を被ることになる。
インフレの進行状況を雑ぱくに説明すると、貸し出し金利がまず上昇し、それを追いかけるように商品価格が上がり、最後にようやく給与が上がるというものである。
欲を出しすぎて貸し出し利子率を高くしすぎると、商品価格が上がるところまでは実現されても、給与が上がる前に消費者の購買力が物価上昇についてこれなくなり、商品が売れなくなって破綻してしまう。(担保は手に入るが、高金利で貸し付けた企業からは、利子も元本も返済されなくなる)
中央銀行が本気でインフレを抑制したいと考えれば、通貨供給量を減らし金利も下げることになるが、金利引き下げのペースは、利益を失わないよう、インフレ率低下の進行よりも遅いものになる。
デフレでありながら金利を下げないと借り手の実質的な金利負担が増大し、返済不能や企業倒産を招くことは指摘できるが、デフレは、管理通貨制では通常ではあり得ないことである。
デフレは、中央銀行が防止しようと思えば、金利をやや上げ気味にし通貨供給量を拡大することで回避できるものだからである。
米国の民間資本中央銀行であるFRBは、昨年1年間に緊急利下げを含む12回もの利下げを行い、6%であった公定歩合を1.25%まで下げている。
別のアップで、米国経済は、年率1.4%の急激なデフレに陥っていると書いたが、そうなった主要因は、FRBの金利引き下げ政策(たぶん通貨供給量も絞っただろう)である。
米国の金利低下は、株式市場に投資家の目を向けさせる役割はあるが、日本を中心とした諸外国からの資金環流をしにくくするものである。
FRBは、景気対策で金利低下を行ったと説明しているが、実際はデフレを招き景気を悪化させたのである。
公定歩合を1.25%にしたということは、FRBがデフレを予測していた(もしくはデフレにしたかった)ということである。
続く

0