「日本が公共事業国家になった事情:国民経済と財政 中」
世界経済を認識する基礎
国民経済と政府支出:国民経済と財政 上から続きます
● 日本が公共事業国家になった事情
財政学の範疇になるので深入りはしないが、日本が土建国家=公共事業国家になった要因としては、政治家の利権という問題も指摘できるが、財政の考え方もそのものが大きく関わっている。
600兆円という政府債務がありながらこう説明するのは気が引けるが、日本の財政は、法的には収支均衡主義に拠っている。
そして、例外的に建設国債の発行を認めていることから、投資支出ということでスムーズに国債発行=借り入れができる公共事業の政府支出が高まっていったのである。
戦後初の国債発行は、オリンピック好況の反動で不況に陥り歳入不足になった65年の赤字国債(特例債)である。
(特例法による国債発行は、例外を超えた緊急避難的なものである)
その後、赤字国債は75年まで発行されず、翌66年から建設国債(4条債)で政府支出の増加が計られた。
借換債が発行されるようになったのは、73年からである。
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[建設国債発行対象経費(公共事業)が占める比率]
65年 80年 95年
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対一般会計総額 17.2 16.1 21.7
一般会計(除く国債費・交付税) 21.3 23.0 32.4
一般会計(除く+社会保障) 25.8 31.5 45.4
[政府固定資本形成の対GDP比比較]95年ベース
日本:5.1%
仏:2.9%
独:1.8%
英:1.1%
米:1.9%
日本が先進諸国との比較でGDPに占める政府形成社会資本が飛び抜けて高いのは、政治家の利権とは一概に言えない。
(利権問題はコストパフォーマンスの問題である)
[1万台当たり高速道路延長]
km/万台 参照年
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日本:1.14 (00)
米国:4.32 (96)
英国:1.31 (96)
独:2.58 (97)
仏:3.19 (97)
[汚水処理施設整備率]
日本:71・5万人未満市町村では45(00)
米国:71(92)
英国:96(00)
独:92(96)
仏:81(94)
これらの比較から好意的に考えれば、それが望ましいものであるかどうかは度外視して、先進国並みの生活環境を造るために公共事業が重視されてきたと言うこともできる。
おそらく、「高度成長期」に、税収も伸び、公共事業を行うことで経済成長率が高まり、それによって税収がさらに伸びるという体験をしたことで、借り入れは将来の税収の伸びで順調に返済できると考えて公共事業にのめり込んでいったと思われる。
しかし、公共事業費は投資支出だから借り入れに依存してもいいと考えることを認めるとしても、投資支出であるなら、60年償還ではなく、個々の公共事業で造られる社会資本の耐用年数で償還されるべきである。
(道路:47年・港湾:49年・航空:17年・下水道:15年・廃棄物処理:15年・水道:33年・都市公園:24年・学校学術施設:29年・社会教育施設:49年・治水:49年・治山:50年で全部門平均は36年である)
これは、企業が耐用年数10年の機械設備を20年かけて償却すればどうなるかを考えればわかることである。
建設国債の償還に関してこのような歯止めがかかっていれば、政府債務の積み上げはそれなりに抑制されていただろう。
再び赤字国債が発行されることになる75年までは、一般会計に占める国債費率は5%以下で推移した。
79年にそれが10%に達し、中曽根首相と竹下蔵相のコンビになった82年以降15%にまで高まり、86年には20%と現状と同じ水準まで達した。
「バブル形成期」も、“円高不況”と称して、一般会計の20%が国債費に使われ続けたのである。
借り入れだけではない厖大な通貨が株式市場や土地取引に投入されたことでバブルは形成されたのである。
この時期に、株式や土地の取引に関わる課税を強化したり、時限的でも法人税を引き上げていれば、バブルを相当抑え込むことができたはずである。
(大蔵省は、そうではなく、バブルを崩壊させるために土地関連の課税を強化した)
しかし、中曽根→竹下ラインの統治者は、“民活”や“リゾート法”などで逆にバブルを煽る政策を進めた。
これも好意的に解釈すれば、地価や株価と同じように、日本経済が右肩上がりの成長を遂げるという思い込みでなされたのであろう。
その結果が、「バブル崩壊」であり、「平成不況」であり、「デフレ不況」である。
そして、不況対策のために厖大な国債が発行され続けたために、身動きできない財政状況にまで至ったのである。
国債発行で賄う財政支出は、途中経過はともかく、究極的には、税収で利息を支払い元本を返済しなければならないものである。
これまでの統治者が、それを忘れ、増税回避手段や減税手段として国債を活用したことで、公的債務の実質価値を軽減する政策(インフレ)をとるか、結局は、公的債務の実質価値を軽減する政策をとらざるを得なくなる大増税政策を取るような状況に陥ったのである。
(そうであれば、傷が浅い段階でインフレ政策をとるのが正しい選択であることは自明である)
国債費が15兆円であれば、現在の税収は45兆円ほどだから、3年間の税収のうち丸々1年分の税収は、国債の利払いや償還に使われるということである。
国債費が20兆円になれば(99年や00年はそう)、2年間の税収のうち一方の年の税収は、国債の利払いや償還に使われるということである。
このような現実と、預貯金の伸びが期待できないなかで借換債が70兆円から100兆円へと増加していくことが、財政のみならず国民経済全体にどういう影響を与えるかを予測できない人は国家の統治に関与すべきではない。
7/3/5

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