「公的年金問題は“余剰資本”の問題 その2 《年金問題の本質は“高齢化”にあらず》 4」
世界経済を認識する基礎
その3からの続きです
● 公的年金問題は“余剰資本”の問題 その2
経済活動を自立的完結的に担っている経済主体は、国民経済=国家の負担を他者に押しつけようとしても、必ず自己に負担が戻ってくる存在であり、誰も負担しないことや負担を減らすことを選択しても、総需要の減少というトガを受けるという存在なのである。
現役世代の就業者が増加し、公的負担増になっても個々の就業者の可処分所得が変わらないか増加し、年金世代も給付水準が維持されるのであれば、経済主体は、給与アップによるコスト増加を財の価格にわずかながら転化させて販売量を確保できるので、利益は少々減少するがそれほど酷い落ち込みではない。
(こういう政策を採らなかった場合は、財の販売量も価格も下落し、利益が出る経済主体は稀という経済状況に陥る。経済主体が資本化している生産設備のウエイトが大きいからである)
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中央銀行からの直接借り入れで政府支出を増加させるのではなく、資本活動=供給の増加による通貨量の増加であれば、資本活動によって制御されているのでハイパーインフレは起きない。
何より大きな効果は、死ぬ時期は不確定というなかで“老後の不安”にさいなまれている人たちが、貯蓄ではなく消費活動に励むことである。
(彼らは余裕の時間をたっぷり持っているのだから、貯蓄を少しずつ取り崩して消費活動にいそしむことになれば、需要拡大効果は大きい。願わくば、海外旅行は程々で、国内旅行にいそしんで欲しいが...)
輸出競争力に関しては、競争関係にある国民経済との相対的な財価格関係になるが、財の価格が上昇すれば為替レートは、それに連れ、自国通貨安の方向に動く。
そして、10兆円を超える規模の経常収支黒字を維持し続ける必要はないから、一時的に国際競争力が低下しても、経常収支黒字が減少していくことで自国通貨安傾向に振れることから相殺される可能性もある。
輸出競争力は、レート変動という小手先よりも、「労働価値」の上昇で高めなければならないものである。
「労働価値」の上昇は物価抑制機能を持っているが、これは、そのまま給与上昇余地を生み出していることを意味する。
「労働価値」を上昇させて、それと同等に給与を上昇させれば、競争関係にある国民経済の通貨政策にもよるが、外国為替レートが高くなることもない。
「労働価値」の上昇こそが、様々な政策の自由度を保証するものである。
日本には蓄積された高い生産技術と製品開発力があり、それをさらに高めるための現在的な技術開発活動力もある。
需要が減少していけばそれを活かせる条件が減少するが、需要が維持されるなら、それを「労働価値」上昇に活かすことができるのである。
このような政策の実施を嫌って、地理的に密集しているという好条件で一人当たりの所得水準が世界最高そして平均的教育レベルも高く勤勉でもあるという日本から逃げ出す経済主体は、経済論理を知らない愚かな経営者を抱えているということである。
逃げ出す経済主体があるとしても、ことさら不買運動をしなくとも、根拠地が日本であることを選択することになる。
日本がこのような絶好の経済条件を維持できるのは、ぎりぎりで今後3年ほどだと予測している。
「デフレ不況」による経済主体の資本減少がさらに進み、製造拠点の海外移転が進むことで貿易収支が赤字に転落すれば、日本が「遅れて到達した先進国」であることから、欧米諸国以上の経済的ダメージを被ることになる。
日本国が政策を転換できるために残された時間はきわめて限られていると考えている。
もう一つ付け加えると、“高齢化社会”という人口構成の変動は、日本だけが抱えている問題ではなく、出生率低下が共通現象である先進諸国すべてが、差異はあるとしても共通して抱えている問題である。
[2020年時点の65歳以上人口比]
日本:27.8%
独:22.5%
仏:20.5%
英国:20.2%
米国:16.3%
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先進国:19.3%
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中国:11.5%
失業率という視点で言えば、現時点では日本・英国・米国が同等の水準で、ドイツとフランスは10%水準である。
米国は、65歳以上の人口比率が低いとはいえ、経常収支の赤字と政府債務は図抜けて大きい。経常収支の赤字が資本収支の黒字で穴埋めされなければ、その分、供給=需要は減少し、失業率も上昇していくという構造になっている。
先進諸国は、共通のテーマとして人口構成変動問題に合理的に対応しなければならない状況なのである。
明確に言えるのは、この問題に合理的に対応した国民経済のみが持続的な活動力を確保できるということである。
国民の平均的所得水準=生活水準を切り下げる国民経済は、経済的活動力が低落し、そこを根拠とする経済主体も衰退していくことになる。
※ 最近「世界の工場」となりつつある中国をどう調整していくかという問題があるが、基本的には、人民元の変動相場制への移行で調整すべきだと考えている。
暫定としたように、これがベストな政策と考えているわけではないが、税制など現在の公的規定要素が変わらないことを前提にすれば、現在政府が志向している「現役世代負担増+年金世代給付減」政策よりも、国民経済と国民生活の両方が安定的で活力あるものになる。
税制など現在の公的規定要素が変わることを考慮した政策は、このシリーズのまとめとして後日書くつもりである。
7/3/6

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