■ 「資産デフレ」が及ぼすマインド効果
地価や株価はじりじりと下がっており、そのために消費や投資に対する意欲が減退しているではないかと指摘される人もいるかもしれない。
それは、不動産や株式の売買で儲けた金で、消費財を買ったり、生産財を買ったり、さらには不動産や株式を買おうと思っている人には当てはまる。
しかし、住宅・工場・商店・事務所など実際的用途で不動産を利用している経済主体には関係ない話である。
(売りもしないのに、時価で売ったときの利益を考えてにんまりする人はいるだろうが)
株式については、その売買で得た利益で車などを買おうと思った人の消費行動を抑えることになるし、株式を利殖として考えてきた企業も、事業行動を抑えられることになる。
しかし、不動産を使って事業をしようと考えている人はどうであろうか。
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ある人が、前々から自分の商売には格好の場所だと考えていたが、買うにしろ借りるにしろ、採算がとれる価格ではなかった。
分かりやすくするために、5年前は年間賃貸料が480万円だったとする。
8,000万円を投じた商売で得られる荒利は年間750万円で、賃貸料に480万円支払うと利益は270万円になると予測した。
利益率は3.3%で銀行預金の利子4%よりも悪いので、銀行に預けてぶらぶら過ごすことにした。
そうこうしていると“バブル”とやらがはじけて、この人が預けた8,000万円も含めて銀行が貸し付けていたお金が回収できなくなったと大騒ぎし始めた。
でも、お金には名前が付いていないので、8,000万円はちゃんと銀行から引き出すことができた。
以前は高くて手が出せなかった不動産の賃貸料を見ると、360万円になっている。
バブルとやらがはじけたせいで不況になっているが、自分の商売はそこそこ独創性があるので年間荒利は以前のような750万円は無理だとしても600万円は確保できるだろう。
賃貸料の360万円を支払ったら、利益は240万円である。
利益率は、3%と以前よりも少し下がったが、銀行預金の利子は1%しか付かなくなっているので、商売を始めることにした。
この商売は大当たりこそしなかったが、人を一人雇っても、3%以上の利益率を上げられるようにはなった。
(不動産を買った人であれば、地価の下落で高かったときに較べて固定資産税も安くなるという特典が付く)
もちろん、不動産価格が下がったからチャンスと思って商売を始めた人のなかには失敗する人も出てくる。
このように、現在のように低金利政策を続けている状況であれば、不動産価格が適正価格まで下がれば、新規に事業を興す人が出てくる。
手持ち資金がそれほどない人でも、銀行に審査能力があれば、金を貸しても大丈夫な事業や人と駄目な事業や人を見分けられる“はず”だから、融資を受けて事業を始めることもできる。
それが起こっていないということは、日本にはこれ以上新たに事業を始める余地がないか、地価が適正価格をなお上回っているということを示唆している。
最初の事業を始める余地がないことが理由であるかどうかは、地価が下がっていくなかでわかることである。
(そのときはみんなで今よりは少し穏やかな生活をしていけばよいだけである)
しかし、外資が、銀行の不良債権の担保になっていた不動産を破格値で買い漁っていることから類推すれば、地価がそれなりの水準まで下落すれば、不動産に投資(不動産を賃貸)して事業を始める経済主体がそれなりにいると判断できる。
現在の不況が及ぼしているマインド効果としては、長期にわたって不況が続き終わりも見えない、失業者が増大し自分もいつそうなるかわからない、年金もどうなるかわからないなど、資産家ではない大多数の国民が感じている不安が最大である。
それが消費を抑制させ貯蓄に走らせ、その貯蓄を受け入れた銀行や郵便貯金には、経済活動を活発にするような活用先が少ない。
郵便貯金を運用する人は、愚かにも、それを株式市場を買い支えるために使って損失を出しているだけではなく、不況からの脱出さえも遅らせているのである。
■ ストック(国富)について簡単に
土地や株式を持ち続けていることでは、経済成長(フローの評価)に寄与するわけではない。
最低限、土地や株式を売ったり買ったりしたときに始めて経済成長に寄与するのである。
これは、住宅になっている不動産を考えてみればわかる。立派な家に建てて環境も気に入っているので死ぬまでそこを住処にしようと考えているので、その不動産を売る気は基本的にないとする。
5千万円で取得したその不動産を、8千万円で買いたいという人がやって来た。
しかし、同じような条件の不動産はやはり8千万円するので意味がないと考え断った。
国富というストック的尺度に照らせば、この人の住宅の価値は増大しているのだが、住み心地は変わらないし、同じように快適な不動産を手に入れるためには今所有している不動産を売った金額を全て投入しなければならない。
逆に、5千万円で取得したその不動産を、3千万円なら買いたいという人が来た。
しかし、同じような条件の不動産を3千万円で買うこともできるがわざわざ引っ越しする意味はないと考え断った。
国富というストック的尺度に照らせば、この人の住宅の価値は減少しているのだが、住み心地は変わらないし、今所有している不動産を売れば、同じような不動産を手に入れることができる。
ストックは、価額評価の大きさではなく、フローのためにどう効率よく利用されているかが重要な問題なのである。
国富は、それを構成する株式や不動産が取り引きされた結果の“時価”を、取り引きされていないものにも適用して算出した総額でしかない。
だから、限定的な取引を通じて、国富算定対象の商品を売りたいと思う人が買いたいという人を圧倒していれば、価格が下落して国富が少なくなり、逆になれば、国富が膨らむことになる。
国富が小さくなったからと言っても、土地が狭くなるわけでも、建物が低くなるわけでない。逆に、国富が膨らんだからと言っても、土地が広くなるわけでも、建物が高くなるわけでもない。
利用価値は、価格に関係なく基本的に同じである。
8/8/3
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