まず、
中国企業 米国並み巨大アグリビジネスを目指す 持続不能な道に突進!?
と題する農業情報研究所の記事から
中国に米国のスミスフィールド・フーズ、タイソン・フーズに比肩する巨大アグリビジネスが登場するかもしれない。サウス・モーニング・ポスト(香港)紙の報道として米国・soyatech.comが伝えるところによると、中国最大の動物飼料生産者であり、酪農・養鶏のメジャーである新希望集団が、今後5年間に50億元(約700億円)を投入して事業を拡張、農業資材供給チェーン管理や下流の食肉加工にも進出するという。
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フォーブスによると中国第6位の富豪である集団の劉永好会長が明らかにした。集団はスミスフィールドやタイソンと協同して統合された世界的に競争力のあるアグリビジネスを建設するための中国最初の企業となることを目指す。劉会長は、スミスフィールド、タイソンに比肩する中国企業となることを望んでいるという。
新希望集団は、昨年の200億元の売り上げを5年間で500億元に増やすことを目指している。昨年は、供給チェーンの拡大を求めて、中国最大の鶏肉加工企業である山東省六和集団の株を購入した。最近、貴州政府及び地方金融機関と野菜・家禽生産で協同組合的農業供給チェーンを作る協定も結んだ。会長は、それが提供する農薬と栽培方法の利用により、農家は生産物の価格を10%から20%引き上げることが期待できると言う。
集団は、牛乳収量を引き上げるための改良乳牛種導入のために、四川省と雲南省にも大枚を注ぎ込んでいる。このプロジェクトは、一部資金を世銀の民間部門投資の腕をなす国際金融協会(IFC)から提供されている。養豚部門では、20万頭の収容能力をもつ国最大の農場を建設するために、浙江省の一企業 と協同している。劉会長は、「我々は米国モデルを採用できるかどうか検討したい」と言う。
会長は、同時に、集団が鶏の価格の50%の下落を引き起こした鳥インフルエンザの拡散で大きな課題を突きつけられていることも明らかにした。昨年後半以来、鳥インフルエンザにより蒙った損失は1億元はくだらない。「しかし、我々は契約義務を守り通し、供給を維持してきたから、競争者に対して市場シェアを伸ばしてきた」と言う。
中国もまた”持続不能”な道を突き進んでいる ように見える。米国型の工業的畜産の拡散が、”農業三次元汚染”をさらに悪化させないことを祈るのみである(中国専門家 農地”三次元汚染”の穀物生産への悪影響に警告,05.12.12)。また、中国が鳥インフルエンザのみならず、狂牛病の巣窟にならないこと も。今日ヨーロッパからアフリカにまで広がってしまったH5N1鳥インフルエンザウィルスが中国南部起源のものであることは、中国政府の否認にもかかわらず、ほぼ確認されている。また、中国 が英国から肉骨粉を輸入していたことも分かっている(イギリスの肉またはくず肉の粉・ミール・ペレットの輸出先と輸出量)。
引用終わり
最近の中国では、社会主義を標榜する国でありながら、小さな政府と市場経済を標榜する新自由主義者の方が平等を重んじる左派よりも政策への影響力が強く、学界でも主流派として君臨している。以下はその主流派の、中国経済改革研究基金会国民経済研究所所長 樊綱氏の「中国の農業に未来はあるか」と題する論文の要約である。
中国の農業問題、農村問題、農民問題といういわゆる「三農」問題を解決するには、農業、農村、農民の範疇を超越して、工業など非農業産業の発展も重視すべきである。工業など非農業産業は、農民により高い収入が得られる雇用機会を提供することができる。この点を重視して、非農業産業の雇用機会を拡大すべきである。ここで、ある基本的な経済ルールを知っておく必要がある。人間にとって、「食」という基本的な生存条件が満たされれば、生活水準の向上や国民総生産の増加、経済全体の発展は、農業自体の発展よりも、衣、住、電気製品、交通、通信、旅行、娯楽、インフラストラクチャーなど非農業産業によって決められるのである。この時、経済発展あるいは経済の近代化は、農業に従事する人口と時間の減少、非農業産業に従事する人口と時間の増加に反映される。
中国では、農民人口の割には土地が少ないことから、農業部門における労働生産性と投資収益率がともに低い。これを反映して農民の収入が低く、投資も不足している。これらの問題点を踏まえると、産業化による生産性の向上、国際化による食糧の安定供給の確保、工業化による余剰労働力の吸収が、問題の解決のカギとなるであろう。
一、農業の産業化による生産性の向上
第一に、工業が比較的発展しており、農村の労働力がすでに大量に非農業産業に移転した沿海地域では、土地の請負などの方法で土地経営の集約化を実施する。長期的に見て、中国農業はこの方向に進むことになろう。
第二に、荒涼地域の開発や、山地・低地の大規模開発である。こうした地域の特徴は、耕作に従事する農家が存在しないため、新しい資源を開発し、産業化を進めても既得権益を損なうことはなく、大規模な資本を誘致することができる。
第三に、広い意味での農業に含まれる養殖業の促進である。栽培業がまだ多くの地域で産業化経営を実施できないのであれば、先に養殖業の産業化を実施することが考えられる。中国にとって農業産業化の制約条件は、一人当たり耕地面積が小さいことにある。近代養殖業の場合、広い土地がいらないため、農業の既得利益を損なわず規模的利益を実現することができる。
第四に、生産、加工、販売の一体化した経営を通じて、加工・販売段階の規模的利益を獲得する。さらに、この利益を農産品生産向け投資の安定的な源泉とする。これは、産業化経営の重要な対象分野である。現状では、多くの農産品は、分散した小農家で生産されている。一方、加工・販売過程は産業化し、規模的利益を上げることができる。しかし、その利益は生産過程とつながっていない。このため、農業投資と、農業技術の応用・開発のための経済的インセンティブと資金が不足する。生産、加工、販売の一体化した経営の前提条件は、生産、加工、販売の各主体が利益共同体となり、農業生産を安定化させ、規模的利益を得て、加工、販売企業の利益の源泉となってはじめて、加工、販売による利益が農業に合理的、安定的に還流させることができる。
現在の土地収益状況と農民所得の構造からみれば、農家が請け負っている小さな土地はもはや「高所得の源泉」ではなく命を維持する土地で一種の「社会保障」である。中国経済が抜本的な変革を遂げ、大多数の農民が非農業産業で安定的な職業を得られるようになるまでは、土地制度を大きく変更すべきではない。
改革・開放を深化し、経済政策を適切に調整し、農業の産業化を一種の新しい営利機会に育成すれば、少なからぬ工業、商業、金融業の大企業も農業開発に投資するようになるであろう。
二、国際化による食糧の安定供給の確保
人口が多く土地が少ないため、食糧生産が伸び悩み、農業の発展が遅れている。このため、今後の対策を考える時、国内の食糧需要を満たしながら食糧価格の急騰や巨額な農業補助金を抑え、さらに農業人口の非農業産業への移転を促進することに焦点を合わせねばならない。
中国の経済成長が安定的で、工業製品が価格競争力をもち、十分な購買力を有していれば、農産品の国内価格が国際価格の水準に達した時、海外から比較的安い食糧を輸入すれば良い。これによって国内の食糧供給不足を補う一方、貴重な資源を非農業産業の発展と農業人口の他産業への移転のために使うことができる。
食糧の国際価格が国内価格よりも安いのに、輸入しないで巨額なコストを払って高い食糧を生産することは決して賢明ではない。以前、西側の学者が、中国経済が発展すればやがて自分を養うことができず2030年に3.7億トンの食糧不足に陥ると指摘した。このような見方は、中国が食糧危機に陥らないように警告を発したという学者の善意によるところもあろう。ただ、留意せねばならないのは、一部の先進国の政治家や、マスコミ、財界などが、途上国で飢饉が発生することを心配しているのではなく、アジアの成長あるいは中国の発展によって彼らの工業製品市場や雇用機会が奪われ、国際市場における食糧や原油などの価格が上昇し彼らの実質所得が低下することを恐れ、食糧危機の恐怖を宣伝しているだけである。中国が、高いコストで食糧など農産品の自給自足を実現させ、大量な資源を農業に費やし、非農業産業の発展が遅れれば、こうした人々の願いを叶えてしまうことになる。彼らにとって、工業製品市場における競争相手が少なくなり、世界経済におけるリーダーシップを維持することができる。今こそ、中国人が国際市場を利用して経済の近代化を実現する時期であり、国際価格に影響力を与える時期であり、人類の共有資源をより多く利用する時期である。我々は決して「食糧の自給自足」というトリックに陥ってはならない。大半の食糧需要が自給できれば良い。食糧の輸入先も一カ国ではなく様々な国に分散すれば、けん制されることにならないだけでなく、国際競争原理によってメリットを受けることもできる。
今後、中国は世界という広い範囲で資源配分問題を考える必要があり、考える能力も身に付けつつある。勿論、中国は自分で自分を養うことができる。ただ、自分の作った食糧で自分を養う必要がなく、自分のカネで買った食糧で自分を養えば良い。自分の狭い土地で作った食糧で自分を養う必要もなく、世界各地で作った食糧で自分を養えば良い。これは、多くの西側諸国のように、世界各地で企業をつくって自分たちを養うのと同じなのである。
三、工業化による余剰労働力の吸収
農業発展を促進するには、農民の一人当たり所得(農村の一人当たり所得ではない)の上昇が鍵を握る。農民の一人当たり所得を上昇させるには、二つの方法がある。一つは、分子である農業所得を増やすことである。もう一つの方法で分母の減少、すなわち農業収入を依存する人数を減らすことである。これは、中国農業の安定的な発展にとって欠かせない。このため、中国の農業問題・農村問題を抜本的に解決するには、大半の農民が製造業、サービス業など非農業の分野で安定した職業が得られるという農村人口の雇用の非農業化である。
これまで中国の人口分布は伝統的な農業経済に適応していた。ある土地に農作物さえ生えてくれば、人を養うことができる(人口の多い四川省は昔から農業人口が集中する典型的な地域)。
近代工業の発展は、地政学的に農地の分布と乖離し、市場(国際市場を含む)に近く交通(特に海運、河川輸送といった比較的安い交通)が便利な地域にシフトするため、以前のような「農地主導」の人口分布は必然的に変化する。これに合わせる形で多くの農民が転業し、都市部に移住するのである。
土地に依存する人口が減れば、土地の使用効率と農業の経営効率がよくなり、農業の近代化を実現することができる。農産品価格も市場の需給変化によって変動する。農業に残った労働力は専業化し、大規模な農場経営からより高い収入を得ることができる。これによって、農業と工業の一人あたり所得の格差、都市部と農村部の所得格差が縮小し、農民問題が根本的に解決されるのである。
9億の農村人口がこの論者の目指す様に近代的農業者と都市住民とに分化して生存してゆくにはあまりにも多くの未解決の問題が有ると思われ、その一つが冒頭の工業的畜産の問題にも現れている。

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