少し前の資料です。アジアの農業は新大陸やEUに比べ一人当たりの耕作面積が少なく、農業人口の多いことが特徴です。IFAPの話題からアジアの農業が抱える問題を見てゆきます。
平成13 年9 月東京でWTO 関係と食料安 全保障の問題について、アジア各国の農業団体幹部等と情報の共有や意見交換を図ることを目的にIFAP アジア委員会が開催されました。
この会議の中で開かれたパネルディスカッションでのパネリストの主張を紹介します。
「WTO 農業交渉に関するアジア農業者の展望」と題した、 韓国、フィリピン、スリランカ、「持続可能な農業の開発 と食料安全保障の達成」と題した、カンボジア、インドネシアの農業団体の主張です。
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韓国
「WTO 農業交渉は、UR 合意が各国農業にどのような影響を与えたのかを徹底的に分 析することから始めるべきだ」とし、UR 合意の実施状況について検証の重要性を指摘し た。 「UR 合意以降の韓国の農業を取り巻く状況は厳しく、1986 −94 年と1995 −98 年を比 較した場合、輸入額は50.9 %増え、貿易赤字は48.3 %増加した。 また、輸入農産物の増加 と国内支持の削減により、穀物自給率は2000 年には29.7 %まで下がった。 」
そのような状況を指摘したうえで、次の3 点の提案を行なった。
(1)交渉は、農業の特別な役割と多面的機能を考慮に入れ、様々な農業の共存が図られる よう柔軟性が確保されるべきである。
(2)輸出入国間および開発途上国と先進国の間における権利と義務のバランスを図るべき である。
(3)来たるWTO 閣僚会議では、個々のセクター間でトレードオフができるよう、包括的 なラウンドを立ち上げるべきである。
このうち、農業の多面的機能と食料安全保障に焦点をあて、「安定的な食料生産を確保 するため、各国の農業政策は柔軟性が与えられるべき」と主張した。
フィリピン
途上国の立場から食料安全保障の重要性を強調し、「食料安全保障は本質的な課題であ り、生得権であり、農村及び全国的な経済の発展にきわめて重要な条件である」と指摘し た。 食料安全保障が達成されない主な原因として、@生産に対する支持が脆弱なことによ る低生産性、A自然的な不利、B不十分なマーケティング・システム、C貧困をあげ、「貿 易は、基礎的な食料の需要に対して、外国の供給に不適切または過度な依存を招きかねな い。 現行の貿易ルールが不公平、不平等なため、地域での農業生産を減退させ、途上国の 貧困な農業者や消費者を不当に不利にしている。 貿易ルールは、農村開発、貧困の撲滅、 持続可能な食料安全保障のために、十分な時間、柔軟性、安全弁、機会を提供しなければ ならない」と主張した。
スリランカ
「スリランカ経済は基本的に農業に根ざし、農業形態は、茶、ゴム、ココナッツなどの 輸出用農産物を生産する商業的農業生産と、米、野菜、果実、その他様々な穀物等の非商 業的農業生産からなっている。 また、非商業的農業のほぼ100 %が小規模生産者で、1 人 あたり農地面積は0.25 〜1.0ha 、そのほとんどが借地である」と、まず自国の農業の概況 を説明した。
また、「政府による様々な生産奨励計画により、米は自給を達成したが、その結果とし て、小麦粉、トウモロコシ、砂糖、乳製品、その他大部分の穀物は完全に輸入に依存せざ るを得なくなった」と指摘し、政府に対し、@輸入関税の引上げと、A季節的で腐敗しや すい農産物に対して、新たなセーフガードの導入を要求していることを表明した。 さらに、
(1)スリランカは食料純輸入開発途上国であるため、WTO から国内支持を獲得する必要 がある。
(2)セーフガード措置を柔軟に適用することで国境措置を調整したい。
(3)食料安全保障のための国内支持として開発途上国に「開発ボックス」を創設し、削減 約束から除外すべき。 との主張を行なった。
カンボジア
FAO の担当官であり、その立場から、「カンボジアの重要品目は他のアジア諸国と同 様に米であるが、米の増産だけでなく農業の多様性も重要と考え、1997 年に食料安全保障 のための特別計画を開始した」とし、自ら携わったプロジェクトについて紹介した。 「農 林漁業省に推進委員会を設け、4 地方7 ヶ所で試験地域を選別し、農業者に対し、水管理 や農業の多様化等に関する適切な技術の指導・育成(キャパシティビルディング)を行なっ ている。 これは、農業者フィールドスクール(FSP)という実地研修とともに、作物の 集中化および多様化、水管理、実践分析等の10 週間にわたる教育課程の研修を組み合わせ たものである。 これにより、この特別計画に参加した計1,491 名の農業者(うち女性39 %) の多くが技術革新と新生産方式により、農業生産量と収入がともに増加するという結果を もたらした。 技術革新とともに農業者自身の意識改革(知識と自己決定能力)も等しく重要である」とし、「経験と人材を共有する農業者組織を確立していく中で、この特別計画 を継続させることが重要であり、結果として食料安全保障の確保につながると確信してい る」と締めくくった。
インドネシア
アジア農業の特色として、「アジア農業は広大な森林に囲まれた地形と関連し、その中 で農業文化が構築されており、単に市場の利益や経済的側面のみで語ることはできない」 と指摘した。 その上で、インドネシア農業が社会に果たす役割として、@食料安全保障、 A製造業のための資源提供、B雇用の創出と労働力の供給、C政府の歳入源および外貨の 調達、D環境、景観、清浄な空気および水等を含む多面的機能の5 点を挙げた。
食料安全保障については、「最終目標として各世帯レベルで実現することが重要である。 農業は全ての側面に関わっており、そのことを認識し政策を実施しなければならない」と 主張した。
(注1)IFAP (国際農業生産者連盟)
1946 年に設立され、現在60 カ国から85 の農業団体が加盟する民間国際機関。 各国農業団体の相互交流や協 調を通じて、消費者への安定した食料供給、農業者の経済的・社会的地位の改善などを目指している。 日本 からは、JA 全中、全国農政協、全国農業会議所が加盟し、96 年5 月から全中会長が執行委員を務めている。 国連の経済社会理事会では「カテゴリー1 」の高い地位が与えられている。 現在、会長はオランダのジェラ ルド・ドーンボス氏。
資料 全中HPより