「 暫定規制値 or 暫定基準値 農業情報研究所」
原子力・核問題
暫定規制値 or 暫定基準値 農業情報研究所12月21日
厚労省が食品中に含まれる放射性セシウムの現行暫定規制値に代わる新たな規制値案をまとめた。以下は、これを伝えるマスメディアの報道の見出しである。
食品の放射性物質 新たな基準方針 NHKニュース 11.12.20
乳児用は50ベクレルに 食品中の放射能で新基準案 朝日新聞 11.12.21
一般食品100ベクレル 飲料水10ベクレル 放射性物質の新基準値案 産経ニュース 11.12.20
セシウム新基準値案に母親ら食の安全確保で歓迎 福島民友 11.12.21
セシウム食品規制を強化へ…牛乳50ベクレル 読売新聞 11.12.21
4分類 規制値厳しく 新設の乳児用50ベクレル 牛乳は4分の1に 東京新聞 11.12.21
厚労省:乳児用食品は50ベクレル…セシウム新規制値案 毎日新聞 11.12.20
これを見るだけでも、暫定規制値に基づく「公衆防護」システムへの各社の理解度を知ることができよう。「基準」としたのは 最低だ。何も分かっていない。
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国際放射性防護委員会(ICRP)の「放射能緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸原則」に基づくこのシステムは、汚染食品からの被ばくで生じる確率的健康影響(がんや遺伝的影響)には「しきい線量」が存在せず、被ばくした線量が大きくなるほど発生する確率が大きくなることを前提としている。従って、現行暫定規制値として採用された介入のための「指標」を提示した原子力安全委員会報告も、「本指標は,飲食物中の放射性物質が健康に悪影響を及ぼすか否かを示す濃度基準ではなく,緊急事態における介入のレベル(防護対策指標)、言い換えれば,防護対策の一つとしての飲食物摂取制限措置を導入する際の判断の目安とする指標である」とわざわざ断っている。
ICRPによれば、「防護措置の導入はいかなるものであれ、影響を受ける個人にいくらかのリスクをもたらし、また、財政的費用と社会的・経済的秩序の混乱によって社会に対して害を及ぼす」。正当化される介入のレベルとは、「回避される放射線損害を含めたある防護措置の便益が、その実施に付随する放射線に関係のないリスク、財政的費用、および社会的混乱といったような定量化できにくいその他の影響による損害より大きい」レベルでしかなく(ICRP Publication 63『放射能緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸原則』 日本アイソトープ協会)、それ以下では健康悪影響がない「安全基準値」などそもそも存在しないのである。
それにもかかわらず、不勉強なマスコミは介入のための「規制値」を「基準値」などと言うものだから、一体何の基準なの?「安全」基準としか考えられなくなってしまう。そして、この値以下のものも受け入れない「公衆」を風評加害者に仕立てあげるのである。いかに低線量でも、ゼロでないかぎり必ず「影響を受ける個人にいくらかのリスク」があるのだとすれば、風評というものもそもそも存在しないはずのものではないか?
ただ、「規制値」と言うマスコミの言うことも鵜呑みにはできない。例えば読売新聞、「新規制値は、食品について1キロあたり1200ベクレルを指標とする米国や、同400〜1250ベクレルとする欧州連合(EU)と比べると相当に厳しい」と言うが、これは公衆が摂取する食品の1割程度しか汚染されていないという前提の下で設定されたものだ。5割が汚染されている(本当は全部汚染されているのかもしれないが)という仮定に基づく日本の規制値とは比較できない。東京新聞も「規制値」という言葉を採用するが、新たな規制値案が基づく被ばく限度・年1ミリシーベルトは、「日本で自然界から浴びる放射線とほぼ同じ。多くの食品に含まれる放射性カリウムによる内部被ばくは、年〇・一七ミリシーベルト程度とされる」などと余計な言葉を付け加える(食品のセシウム 新規制値案 母親「ゼロを目ざすべき」 農家「しっかり補償を」 「超えた場合も冷静に」識者 東京新聞 12月21日 朝刊 27面)。それで何が言いたいのか。食品に含まれる人工放射性物質からの年1ミリシーベルトの被ばくなど問題外と言いたいのだろう。そうでなければ、だからこそ「食品に含まれる人工放射性物質からの」の追加被ばくは極小にとどめねばならないと、さらに付け加えるはずだ。

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