「借金漬けの米国経済とそれに支えられた世界経済はソフト・ランディングができるか?: 下」
産業主義近代の終焉
借金漬けの米国経済とそれに支えられた世界経済はソフト・ランディングができるか?: 上からの続きです
問題は政府債務ではなく家計債務
● 失業問題:
00年10月から02年6月の間に、失業者が290万人増加し、840万人に達した。
失業率は3.9%から5.9%に上昇した。
● 家計状況:
米国の家計消費支出は、景気後退が始まった02年6月時点でも年率換算で3%の伸びを見せた。
米国の賃金上昇率は00年半ばに頭打ちになって、02年には90年代初頭の不況時と同程度まで落ち込んでいる。
失業者の増加と賃金の低落でも消費が増加しているのは、借金の増加に負っている。
家計の債務は80年の対GDPで50%から78%に増加している。
ある銀行の会長は「ローンの審査に通らないのは、破産した放火魔くらいなもの」と言っている。
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00年以降、個人所得は急速に低下しているが、個人債務は伸び続け、消費の伸びさえ超えている。
01年末は、個人消費の伸びは過去40年間最低の2.5%まで落ち込んだが、家計の債務は4年連続で8%の伸びを見せた。
これを可能にしたのが住宅バブルである。
02年6月の一戸建て住宅の価格は、対前年比で10.4%上昇した。
米国人は値上がりを続ける家を抵当にして謝金をし、それで消費を維持してきた。
※ P.88
● 住宅抵当金融公社:
住宅バブルと低金利で借金を膨らませ、その資金で消費を拡大する米国民の動きを支えてきたのは住宅抵当金融を担当する三大公社である。
ファニー・メイ(連邦モゲージ金庫)、フレディ・マック(連邦住宅抵当会社)、FHLB(連邦住宅金融銀行)の資産総額は、01年6月以降、1年間で2480億ドルも増加した。(年率13%の増加)
98年を基準にすると、133%の増加で、金額にして1兆6600億ドル(約183兆円)増加している。
このような資産増加の基礎である住宅ローンは、95年には6390億ドルであったローン貸し付け残高が、02年には2兆ドル(約220兆円)を超えた。
◎ 市中銀行など住宅ローンの貸し手は、借り手の債務不履行リスクというババを政府系三大公社に回して安全圏に居続けようとしている。
住宅ローンが低下することで、借り換えを行い現金を手にする家計が増えた。
貸し手の多くが住宅価値の120%まで貸し付けている。その現金がすべて消費に回った。
02年8月の時点では、住宅ローンの新規申し込みのうち借り換えが71%にまでなった。
グリーンスパンFRB議長は「住宅ローン利率の低さが住宅の売上とキャピタルゲインの両方を大いに強めた。ローンの借り換えで家計に入った現金は、00年前半には200億ドルしかなかったが、01年第3四半期には750億ドルまで増えた」と語っている。
米国の不動産バブルがあとどれだけ間もつかは、住宅ローン金利がこの後どこまで下がるのか、米国人が個人所得よりも勢いよく値上がりしている住宅をいつまで購入できるかの二点にかかっている。
今年6月以降の利上げで住宅ローン利率が下がる時代は終焉した。
住宅購入力の変動は、全米不動産協会の住宅購入力指数でわかる。
住宅購入力指数は、02年6月時点で過去3年半で最低になった。
住宅価格が上昇し、所得が落ち込むなかでそれほど住宅購入力指数が下がらなかったのは、住宅ローン利率が記録的な低さにあったからである。
住宅購入力指数推移:
99年:139.1
00年:129.6
01年:137.3
02年:129.6
米国の家計は貯蓄率が00年と01年には1%まで下落した。
(59年から98年の平均貯蓄率は8.4%)
借金漬け・所得減少・貯蓄なしという家計状況から、個人破産の申請者が急増している。
史上最低とも言える低金利時代に個人破産が急増しているのだから、金利が上昇すれば、債務者家計のさらに多くが破産することになる。
国家はともかく、所得よりも債務のほうが増加していく状況は、企業であれ個人であれ長くは維持できない。
その終焉はイコール消費ブームの終焉である。
家計が疲弊して借金を減らしにかかると金融業界は大打撃を受ける。
連邦政府系の不動産抵当公社や金融公社、不動産抵当証券の発行元、それに市中銀行のすべてが債務を膨らませることをためらなわない家計を市場として成長してきたのだから当然である。
そして、苦境に陥った金融業界が家計と企業に対する追い貸しを断ち切ると、金融収縮が襲うことになる。
ダンカン氏は「言うまでもないことと思うが、いかなる理由によってであれ金利が上昇をはじめれば、ゲームオーバーなのである。金利が上がれば不動産価格は下がりはじめ、ローンの借り換えもおしまいだ。住宅ローンの債務不履行や滞納などが増加し、しかも資産効果も裏返しになり、消費が崩壊するのである。その時にこそ、アメリカの大消費時代には幕が引かれることになるだろう。」(P.99)と説明している。
★ 参照書き込み
『「産業資本主義」の終焉:外国為替レートの変動論理:固定相場制と変動相場制の違い』
『「産業資本主義」の終焉:購買力平価を大きく超える「円高」になっている理由:“円高恐怖症”自体がその一因』
『「産業資本主義」の終焉:日本が「世界同時デフレ不況」をかろうじて押しとどめている:対米金融35兆円の意味』
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質問1. 日本企業が1000億ドルを手に入れると、日本企業だけでなく、政府が1000億ドルも手に入れるメカニズムは何でしょうか?
A1:政府そのものではなく、中央銀行を含む政府当局と考えてください。
日本企業はドル建てで輸出代金を受け取ると基盤通貨である円に転換します。
輸入代金や対外投資などでドルを必要としているひとが保有している円との交換を超えるドルは、中央銀行が発行する日銀券と交換されることになります。
資本収支までを含む国際収支の黒字だけ日本円の発行高が増加し、その代わりに政府当局が保有するドルが増加することになります。
現行の国際通貨制度では、日本の国際収支黒字は「企業が手に入れる日本円」と「政府当局が手に入れるドル」を生み、最終的には、「企業が手に入れる日本円」と「政府当局が手に入れる米国財務省証券」と「米国政府が手に入れるドル」というかたちになると考えることができます。
戦前のような国際金本位制であれば、「企業が手に入れる日本円」と「政府当局が手に入れる金」になっていたので、日本は通貨供給が増加し、米国は通貨供給が減少する結末になり“貿易の抑制”(米国の輸入抑制)につながりました。
金が1000億円分増加すれば、ベースマネーを2500億円まで増加できたので、輸出で稼いだ企業+1500億円の通過供給の拡大が可能でした。
米国が日本から借り入れることも、その利払いや元本返済を“正貨”(金)で行わなければならないので抑制されたはずです。
戦後世界とりわけ80年代以降の世界経済は、ドル為替本位制の“ダラダラ制度”を支えにした米国の輸入拡大=「世界の需要者」に牽引されてきたわけです。
7/5/15

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