江戸期(時代劇)についてから続きます。
楽観派 さん:
まず私の先祖はさかのぼれる限り全て農民、漁師、船乗りでありその意味では最初から武士の価値観、存在に批判的であることをみとめましょう。
さて幕府は常に金欠状態であったと言われますが、ではその財政赤字は誰が埋めたのでしょう。大坂を中心に行われた経済活動がある時点まではその肩代わりをさせられましたが、最終的には支えきれず明治維新という形での債務不履行を迎えたと考えます。
私の”平成日本での明治維新とは”という問いかけも江戸末期と現代とのアナロジーの上で問いかけをしているわけです。
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Re: 江戸期を取り上げた意味 投稿者 あっしら 日時 2002 年 6 月 03 日
前近代のことをあれこれ書いてきたのは、「抑圧された封建社会」とか「暗黒の中世」という半ば固定的なイメージに対するイヤミだと受け止めて下さい。
(江戸幕藩体制擁護でも、江戸復古主義でもありません。様々な害悪をまき散らしてきたとはいえ、現在出来上がっている諸条件を有効利用しないのは愚かなことです。前近代の見直しは、進歩史観や近代賛美に対する揶揄です)
江戸幕府が、石高制に全面的に依存し、利益を上げている商人からは運上・冥加などを徴収するくらいでまともに徴税しなかったことを評価しています。
(そんなことを思い付きもしなかったのか、導入しない明確な論理があったのかは不勉強でわかりませんが、商人から借金をするのではなく、徴税というかたちで召し上げていれば懐具合も良くなっていたはずです。たぶん、江戸に住む商工業者は、年貢米を売ってくれたり物資を整えてくれるなど、自分たちの必要を満たしてくれる便利な使用人と考えていたと思われます。だからこそ住環境まで面倒を見たのでしょう)
商人への本格的な徴税や農民(ムラ)に税の金納を求めれば、貨幣経済が広がり深化していったはずです。
それは、多くの人の生活形態を変えていくことになります。
明治維新後の「地租改正」で多くの自営農民が零落していったことからある程度類推できると思っています。
(それに対する修正が戦後の「農地解放」で、戦後の高度成長を支える一つの要因でもありました。自民党政治や歪んだ農政をもたらした要因でもありますが...)
統治原資が自営農民からの年貢米と金貨の生産に依存していれば、否応なく自営農民拡大保護策をとらざるを得ません。
(そうしなければ、統治基盤が瓦解します)
貨幣形態での徴税であれば、商工者の利益を重視していく政策を採ることになったでしょう。そして、必需品の米は、農民から安く買えばいいということになります。
江戸期は、食品・織物・生活用品などの産業も拡大し、年貢の金納も増えていったので、「規制緩和」で産業活動を活発化させていれば、もっと早い段階で近代化が実現できていたという人もいますが、外国に商品販売市場を見出すか、幕府が諸藩をつぶすかたちの“経済侵略”でもしなければ、近代化は実現できないものです。
近代経済システムの成立条件でもあり発展条件である「過剰生産力を市場拡大によってクリアしながら資本を増殖させる」という現実条件が消滅しつつある現在、江戸期のような共同体(国家)内経済システムがどういう論理に基づくものだったのかを見直すことは意義があると思っています。
IT革命であれ、ロボット導入であれ、生産性向上の進展は、個別の企業の利益には貢献しますが、市場の拡大が頭打ちになった現段階では、その企業も属する総体としての近代経済システムの寿命を縮める働きをします。
楽観派 さん:
さて武士がはたして相対的に善意の統治者であったかどうかです。私が一番気に入らないのはそれが特定郵便局長のように世襲されたということです。”君、君たらずとも臣、臣たらざるべからず”や死を美化する葉隠れ武士道といった倒錯した美学に代表される武士的価値観そのものが嫌いなのです
(これは好き嫌いですから議論しても意味がありません)。
さて本題ですが、江戸幕府(中央政府)が大坂の商人から借金したときに当然証文を書いたと思いますが、これは国債とどう違うのでしょう?当時は市場が不完全だったのと富の偏在があり大坂の商人が主に国債を引き受けただけと理解します。ではこの国債は価値の減損なく償還されたのでしょうか?もし償還されたのなら確かに武士は善意の存在かもしれません。
一方で、藩(地方政府)は藩札を発行しましたが、こちらも大坂の商人(主に鴻池)から借金(地方政府債の発行)をすることでかろうじて廃藩置県までいきのびたのですが、この藩札が廃止されたときに鴻池は減損なしの償還を受けたのでしょうか?もし債務不履行がおきたのであればむしろ商人が一方的に武士(官僚)により財産を没収されたと考えるべきでしょう。なぜなら初期の明治政府は主として旧士族により運営されていたからです。
Re: 近代の一つ前の時代を考える意義 投稿者 あっしら 日時 2002 年 6 月 04 日
最初に、質問に答えておきます。
(簡単すぎて申し訳ないと思っています)
江戸期の統治者が商人から借りたお金は、国債(公的債務)と考えることができます。
商人の富の源泉が何であるかや革命が起きたことはとりあえずおくとして、借金したお金を返済できなかったのは契約違反です。
(敗戦後の公的債務切り捨ても同じ契約違反です)
アナーキーで自堕落なことを好む性格ですから、武士に限らず、支配者や統治者を好ましい存在とは思っていません。
武士道も嫌いですし、敗戦という難局時に重要な統治者でありながら、職務を全うせず自死を選択した阿南陸相の振る舞いも批判的に見ています。
(統治や権力は必要悪だと考えているので、アナキストではありませんが)
幕藩体制が統治形態の範であるとか、武士が善意の統治者だとは思っていません。
もちろん、近代国家の統治者も古代国家の統治者も善意の統治者だとは思っていません。
善意の人もいれば、他を犠牲にした欲の実現に走る人もいたはずです。
これは、被統治者にも同じように言えることです。
問題にしたかったのは、善意か悪意かということではなく、いい思いをしたいと考えている統治者や支配者が、それを実現するためにどういう判断と行動をするかということです。
短い生で終わる個人の欲を実現するためであれば予測不能の振る舞いが出てきますが、子孫や同類の欲も実現できるようにしたいと考えれば、統治者の振る舞いに経済社会的な規定が加わり、それなりに合理的なことが行われると思っています。
江戸期のような農業を基盤にした石高制であれば、農業を維持発展させることが統治者の利益を実現することになります。
そして、農業が発展すれば余剰が生まれるので、商品作物・加工食品・工芸品も育成されていきます。
このような経済社会を支える条件は、経済を疲弊させる戦乱を抑え、農業従事者の没落を避けるという安定です。
(倹約令が頻繁に出されたというのも、経済的余裕の反映であり、国民の経済的没落を避けるための措置だと考えています)
農業は自然的制約性が強い産業ですから、その問題を根本的に解消することはできませんが、農業従事者が棄農しなければならないような状況はできるだけ避けるという政策が採られます。
このように書くと江戸賛美義的に受け止められるかも知れませんが、産業構造が違っても同じことが言えると考えているので、あえて持ち出しています。
国民経済に占める工業や商業のウェイトが高くなっても、同じ考え方が適用できます。
さらに言えば、どんな経済社会でも、農業(食糧生産業)が基底の産業であるとは変わりません。
ある経済社会が食糧を輸入に依存しているとしても論理的には同じことです。
(幸か不幸か、ここ数十年の日本は、そのような根本的な問題を顧みる必要がない経済状況にあったというだけです)
前に書いたように、そこそこの量の貨幣を手にできる人が増え、その貨幣で何でも手に入るという“貨幣の全能化”が、社会=人の生存基盤がどういうものであるかを見えにくくしていると思っています。
近代経済が生まれたのは、技術の進歩や思想=価値観の変化によるものではありません。
それらが、芽としては存在していたとしても、近代経済の原動力になったわけではなく、近代経済の発展のなかで育まれたものと言えます。
(西欧的価値観がアメリカ大陸での強奪を推し進める要因でもあったことは認めますが...)
具体的に言えば、産業革命発祥の地である英国は、北米大陸を後背地としインドを経済的に支配していたことで近代経済に移行することができたのです。
“囲い込み”や農民の都市流出は、そうなっても食糧が得られる条件がなければできないことです。英国の需要を上回る生産力を持つ機械制工業は、生産物を外で販売できる条件がなければ成り立ちません。
また、余剰労働力(失業者)の“脱出先”としての北米の役割も極めて大きなものがあります。
英国に北米(米国)がなかったときに、英国が18世紀から20世紀にかけて行った政策が採れたかどうか、英国にインドやその他の支配地域がなかったときに、英国が18世紀から20世紀にかけて行った政策が採れたかどうかを見直すことは、非常に大きな意義があると考えています。
わたしは、どちらか一方でも欠けていれば、英国の産業革命は、成功しなかったというより、成立さえしなかったと考えています。
現代の世界は、近代経済の歴史的収奪過程を経て、英国に北米やインドがなかったときに相当する条件が生まれているのに、あるという条件で成立し発展してきた経済システムを今なお継続しようとしています。
このような認識を持っているので、近代の一歩手前の歴史時代を捉え直すことに意味があると考えています。
7/7/12

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