24才の梅雨の時期、10年前。
ホンダに置いてあった赤い中古車に心を奪われ、その場で契約した。
初めてドライブに出かけたのは首都高、ベイブリッジ。
羽田線からベイブリッジに向かい、橋へ続く曲がりながらの坂を高速度で走り抜けようとしたとき、いきなり右後輪がバーストした。
結局ベイブリッジ直前で路肩に停車し、非常タイヤに交換。湾岸に迂回して浦和に戻ってきた。
俺が10年乗ったプレリュードBB1はそんなデビューを飾った。
初めて車を買った俺は、この車で出かけるのが本当に好きで、館山だの富浦だのに毎週のようにこの車で釣りに出かけた。当時は助手席に誰もおらず、気の向くままに走り回った。千葉県のいろんな釣り場に。
しばらくすると助手席に座る女性が現れた。あるとき「このクルマ、ドアが二枚しかないじゃん!」と言い、(車高が)低いだの、酔うだの散々言い散らかした。どうやら好みは別れるようだ。ついでにいわゆるスーパーカーに憧れた世代は俺達の世代で終わりのようだった。生活感の無いバブルなクルマ。それに憧れる人種と嫌悪する人種に別れるようだ。
その彼女は家から200Km離れた町に住んでいたから、しばらくの間は週末になるとドライブがてら彼女の町に向かい、走行距離はグングン延びた。
いくつか愚痴を言うが、彼女もこの赤いクルマが来るのを楽しみにしていたし、僕は僕で自分のクルマに彼女を乗せて走る事に幸せを感じていた。
高速でのプレリュードは時速130Kmからでも加速ができ、(恐怖で)ベタ踏みには出来ないほどの性能がある。まあ例えばクラウンとかでも平気で時速160Kmで走るが、車高の低さを考えるとプレリュードの140Kmはなかなかの緊張感を体感できる。ついでに4WS(前後車輪操舵)だから高速のカーブも凄く滑らかに駆け抜ける。140キロでの4WSステアリング、これは気持ち良い。叫びながらアクセルを踏む。駆け抜ける。
10年の間、たいしたトラブルも無く、たださすがに歳を取り車検の度に部品交換が必要になり、請求書には平気で28万とか書かれるようになった。それ級の金額でも3回は通した。毎年の自動車税もいつの間にか1割増(初登録10年以降)になった。
結局、助手席でブーたれてた彼女と結婚した。
それはそれで幸福な事なんだが、
プレリュードの使用期限を定めたとも言える。
生活スタイルの変化。二人の趣向的な合意、金銭的な制限。
様々な理由で赤いプレリュードを乗り換える時期になってしまった。
明後日、プレリュードと引き換えに新しいクルマが来る。ストリームRSZ。プレリュードに比べれば平凡だが、良いクルマだ。
昨日、夜、妻を隣に乗せ、首都高C2線を一周した。ガンガン踏んだ。赤い切符が来てもおかしくない速度。まだまだこいつは走れる。
しかし、ここでお別れだ。
ここでお別れだ。17歳のプレミー。
今までありがとう。
すごく楽しかった。
またいつか、一緒に走ろう。
