2012/8/16

ジム・ホールのアランフェス協奏曲と言えばポール・ディスモンドとマイナー・ナインスなのだ  木曜:Jazz & Classic Library

よく、昔ジャズ喫茶で流れていたなぁ。。。

昔と言っても僕の場合は1970年代だ。
当時ジャズ喫茶が全盛期であったと言っても、ピークは過ぎてやや下り坂の兆候が見え隠れしていた。

それまでのジャズ喫茶は、照明あくまでも薄暗く、私語あくまでも禁じられ、スピーカーの音量あくまでも大、、、、おまけに店内は煙もうもうでコーヒーにタバコとジャズは切っても切れない関係にあった。

つまり、決して健全な憩いの場ではなかったが、かと言って犯罪の巣にはほど遠い善男善女の溜まり場だった。

今の(たぶん)中学生や高校生のジャズファンなら、ネットでYouTubeを見たり聞いたりして、お気に入りが見つかればiTunes Storeで1曲単位にダウンロード。少しずつ買い貯めて行くところだろう。
もしも、今、僕が中学生ならそうしている。

当時はネットもYouTubeもiTunes Storeも無いから、じゃあお気に入りのジャズをどのように貯めていたかと言えば、ジャズ喫茶とレコード店のジャズ売り場がその全て、つまりYouTubeの代理をしていたわけだ。

今も昔も若年層はお金が無いから、自分で所持するレコードは毎月選りすぐりの中から「どうしてもほしい」ものだけを買い、それ以外はジャズ喫茶でリクエストして聞いて覚えてしまうのだ。
時には仕事で必要な曲をジャズ喫茶のガタガタ揺れるテーブルで採譜したりもした。

その頃、ジャズ喫茶も曲がり角を迎えていて、昔流(薄暗い、私語禁止、大音量)を貫く店に対して、店内を明るめにしてコーヒーの味を競い音量はほどほどの店も誕生していた。
もちろん客はどちらもあんまり変り映えするものではなかったが、マスターと気軽に会話出来るカウンター席が僕はお気に入りだった。

“かたぶつ”に見えるジャズ喫茶のマスター達も人の子。
哲学で飯を食っているわけではないのだ。
そんな事が見えて来た高校時代にこのアルバムはよく行きつけのジャズ喫茶で流れていた。


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『CONCIERTO/Jim Hall』(cti/1975年)

1.You'd Be So Nice to Come Home To
2.Two's Blues
3.The Answer Is Yes
4.Concierto de Aranjuez
5.Rock Skippin'
6.Unfinished Business
7.You'd Be So Nice to Come Home To [Alternate Take]
8.The Answer Is Yes [Alternate Take]
9.Rock Skippin' [Alternate Take]

Jim Hall – guitar, acoustic guitar
Paul Desmond – alto saxophone
Chet Baker – trumpet
Roland Hanna – piano
Ron Carter – electric upright bass
Steve Gadd – drums

recorded at Van Gelder Studio on April 16 and 23, 1975.

ジャズギターの革命児と呼ばれたジム・ホールも今年で82歳になる。
それでも精力的で、この夏は同じギターリスト、パット・メセニーのジャズワークショップにゲスト出演するなど、コンスタントに活動しているようだ。

ジム・ホールの名前を初めて見たのは小学校6年の時で、ピアニスト、ビル・エバンスのアルバム『Undercurrent』(blue note/1963年)だった。二人の美しいデュオは印象的なジャケット写真と共に永遠の記憶に残る。

個人的にジム・ホールのアルバムで一番好きなのは高校時代に買った『Where Would I Be?』(Milestone/1971年録音)で、このアルバムの事は以前このブログで取り上げている。

→2006年5月18日ブログ『ブレンドという音を発見したアルバム・・・・Jim Hall 木曜:Jazz & Classic Library』http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20060518/archive

当時マイルス・デイビスのバンドやチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーで売り出し中だったパーカッションのアイアート・モレイラが参加した素晴らしく軽快で躍動的なジム・ホールの世界がぎっしり詰まった名盤だ。

僕は元々弾けないくせにギター好きで、ジャズに触れる切っ掛けもギターのラリー・コリエルを追っかけてだった。そのおかげで早々の時期に後の師匠となるゲイリー・バートンの音楽に辿り着いて中学の頃にはビブラフォン奏者を目指したのだから人生は不思議。

だから僕の中ではギタリストは今でもアイドル。

ただ、高校の時に、それまで自分が聞いて来たラリー・コリエルを始めとしたヤングゼネレーション・ギターリストとは違う、どこか“渋め”なジャズ・ギターリストを無性に聞きたくなった時、ちょうどのタイミングで『Where Would I Be?』がリリースされたので飛び付いた。
もちろん、他に大御所と呼ばれつつあったジョー・パスやケニー・バレルのアルバムももちろん入手しての話だ。

やはり昔ビル・エバンスのアルバムで聞いていたジム・ホールが僕には一番しっくり来ていたのだけど、数多くのアルバムをリリースしているジム・ホールにしては珍しく、その『Where Would I Be?』の次はベースのロン・カーターとのデュオが出て以来しばらくブランクになってしまってアルバムを増やすタイミングを逸してしまった。

高校生だから次々と新しいアルバム、新しいミュージシャンに興味が湧くもので、その時に4年間もアルバムが発売されないと、どんどん記憶の彼方へと整理されてしまうのだ。

そんな状況だったので、このアルバムは当時高校音楽科で寮生活をしていた津山のジャズ喫茶『邪美館』でよく流れていた。

ジム・ホールがアランフェス協奏曲を演奏した、というのがジャズ雑誌に載っていたのを目にしていたので、行く度に耳を澄まして聞いた。

改めて、このアルバムをCDで手にして聞いてみようと思って、
コーヒーを入れて飲みながらスタート・・・・っと、っと、っと・・・ちょっと手が止まった。

あれ?

僕の記憶にはこんな演奏ないゾ!

ソングリストにあるように、アルバムはやり尽くされたジャズスタンダード“You'd Be So Nice to Come Home To”で始まるのだけど・・・・

僕の記憶では最初からアランフェス協奏曲だった・・・・・

はっはぁ〜ん

すぐに謎は解けた。

当時はレコード、LPだ。
LPというのは両面に音源が記録されていて片面の許容量が23分と決められていた。
なので23分を超えるものは裏面、つまりB面に収録されていたわけだ。

ジャズ喫茶はレコードを次々と流すが、それは片面だけと決まっていた。
表面(A面)も裏面(B面)も流す、というのは殆ど無かった。
だから、誰か客のリクエストじゃない限り、店のマスターなり係りが自分の趣向でどちらかを選択して流していたわけだ。

今ごろわかったゾ、邪美館マスターの趣味!

そのおかげで妙にこのアルバムの個人的な印象とかけ離れた演奏が続く。

“Two's Blues”はベースとのユニゾンで始まるジム・ホールのオリジナル。
ジム・ホールの曲には「Careful」などユニークなリフのブルースがある。

続く“The Answer Is Yes”もジム・ホールのオリジナル。最初はギター一本でテーマを弾く。このソロで弾くギターに憧れたなぁ。リズムインしてからはミディアム・スイングで、リリカルでロマンチックなテーマを持つこの曲の輪郭が浮かび上がる。こういう曲になるとジム・ホールのギターは独特のハーモニック・センスを放ち出して妖艶にさえ思う。
ピアノのローランド・ハナが実に器用なソロを展開する。この人はオールマイティーなスタイルの持ち主なのだけど、ちょっぴり何でも出来てしまう悲しさからか、決定打が無いのがこの曲のソロでは気になった。チェット・ベイカーは対照的にマイペース。ここ、という所に必要な音だけで自分の世界を作り上げている。

ああ、これだ、これだ。。。
“Concierto de Aranjuez”が始まった。
僕的にはこれが最初で、これが全てという印象のアルバム。
トランペットはチェット・ベイカー、そしてアルトはポール・ディスモンド、やがてギターでジム・ホールとメロディーをリレーしながらギターのインタールードを経て、オープンソロへ。
Dm7とAm7を基調に繰り返すのだけど、カンピングでこのAm7に取り入れた9thの音が当時とても印象的に響いていたものだ。
僕はこのアルバムの全ての記憶がそのバックで奏でられるマイナー・ナインスに集約されている。

やがてポール・ディスモンドのソロとなり、ジム・ホールが奏でるDm9とAm9のサウンドがこの上ない哀愁を漂わせてアルトサックスのソロを包み込む。
当時コードの勉強を始めた頃だったので余計にハーモニーの持つ威力に耳が釘付けになっていたんだろう。

チェット・ベイカーのソロも哀愁漂うものだったけど、やはり僕は一つ前のポール・ディスモンドのソロにこの演奏の美しいピークを感じてしまう。

ジム・ホールのアランフェス協奏曲と言えばポール・ディスモンドとマイナー・ナインスなのだ。

エリントンの“Rock Skippin'”はテーマからしてジム・ホールのギターによるハーモナイズが面白い。いわゆるリズムチェンジなのだけど、流石のロン・カーター、単純な盛り上げで済ますような事はしませんね。お見事です。その周りをスティーヴ・ガッドが駆けまわるのですが、ロンはびくともしません。その不思議な緊張感がこのアルバム一のスイング・グルーヴを成立させているようです。

本来のアルバムはここで終わっていました。
つまりA面が1.〜3.、B面が4.5.。
なのでここから先は知らない世界。

ジム・ホールがアコースティックギター・オンリーで演奏する美しい“Unfinished Business”は途中でフェードアウト。その直前でちょっとロン・カーターがロストしているような節もあるのですが、本編に納められなかったのが不思議なくらい美しいテイクです。
これはボーナスとして価値のあるトラックで歓迎。

“You'd Be So Nice to Come Home To [Alternate Take]”は全員ウォーミングアップ中然としたテイクなのでオクラ入りのままで良かったもの。

“The Answer Is Yes [Alternate Take]”もまだ意思の疎通が図れていないテイクなのでボツのままでよかったもの。

“Rock Skippin' [Alternate Take]”もブリッヂの入り方がチグハグな未完成テイク。
いつものようにボツになるにはそれなりの理由があっての事。

マニアでない限り聞かなくてもよいテイクを再発とは言えアルバムに収録する事には疑問を禁じ得なかった。

*追伸と訂正(2016年9月6日追記
通りすがりさんからLPには“Rock Skippin'”も収録されてなかったと御指摘がありました。
僕の記憶違いを正していただけて嬉しいです。
しかし、すると“Rock Skippin'”は二つとも[Alternate Take]だったわけですね。
調べてみたら1997年発売のリマスター版CDに収録されていたようです。
ひゃ〜
御指摘ありがとうございました!



『BEST LIVE 2011(動画)』公開中!


2011年11月24日ブログ『超・満員御礼! 赤松敏弘(vib)meetsハクエイ・キム(p)25-25プロデュース第六弾』http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20111124/archive

TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6

25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』

・当日のセットリストは以下の通り

[1st set]

1.Trisoniqe......(by Hakuei Kim)
2..White Forest......(by Hakuei Kim)
3.Sound of Focus.....(by Toshihiro Akamatsu)
4.[duet] Newtown......(by Hakuei Kim)
5.Ruby, My Dear.....(arr Toshihiro Akamatsu)
6.Axis.....(by Toshihiro Akamatsu)

[2nd set]

1.The Gleaner.......(by Toshihiro.Akamatsu)
2.[Tribute to 1964's Miles]......So What
3.[Tribute to 1964's Miles]......Stella by Starlight

4.[Tribute to 1964's Miles]......Walkin'
5.[duet] Silent Butler.....(by Toshihiro Akamatsu)
6.Kuala Lumpur......(by Hakuei Kim)

[Encore]

1.Dear Old Stockholm
2.O Grande Amor

Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)

Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011

・セットリストの赤文字の演奏をアップしています。
・動画は従来通りMySpace版と、プラグインの関係でMySpaceビデオがご覧になれなかった人向けにYouTube版もアップしています。
・MySpace版YouTUbe版とも、どちらも同じ内容です。


[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部1曲目



★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]




[MySpace版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]



★第二部1曲目



★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]






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CDレビュー→http://www.jazzpage.net/rireki/cd/akamatsu_axis.html

CDレビュー→http://www.jazzfusion.com/cd2010/axis.htm

CDレビュー→http://artist.cdjournal.com/d/axis/4110091003

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タグ: Jazz ジャズ CD



2016/9/6  8:17

投稿者:あかまつとしひろ

>通りすがりさん、
御指摘ありがとうございました。ジャズ喫茶でよく聞いていたアルバムで
したので記憶がデータ頼りになってしまいました。
調べると97年のリマスター版CDに収録との事。
ありがとうございました!


http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20120816/archive

2016/8/31  21:53

投稿者:通りすがりです

(コメントは反映されなくてかまいません)
オリジナル LP に収録されていたのは4曲で、“Rock Skippin'”は入っておりませんので、訂正をお願い致します。


※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

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