急性期病棟の工事着工から半年、今月の末で遂に工事が終了する。患者さんの居住空間や共用部の工事はほぼ終了し、現在はナースステーションとエントランス部分の工事を残すのみ。今はナースステーションの無い状態で、休憩室や保護室の数床をナースステーションのスペースとして使っている。手狭な空間のなかでスタッフには迷惑をかけていると思うが、意外と皆の距離の近さが意外な一体感につながっているようでもあり、悪くない。この感覚も今月末に病棟が完成するまでの一時的なものなのだろう。完成すれば皆の仕事のリアリティーはまた変化するだろうし、それはそれでまた楽しみだ。
今の俺の仕事は大きく2つあって、一つは急性期病棟の立ち上げとそれに伴う治療システムの構築。もう一つは慢性期の統合失調症患者の隔離病棟の治療と管理である。これらは互いに病態像がことなり、急性期病棟は急性発症でまだ発症から日が浅く、早期治療にて早期退院が見込まれる患者群。疾患としてはうつ病、人格障害、統合失調症の急性期が対象になる。入院までは在宅におり、何らかの誘因によって急性に精神変調をきたしたため入院になった患者さんが多い。
もう一つの慢性期の閉鎖病棟は、おおむね発症から10年以上経過していることが多く、年齢も60代以上が殆どで、入院歴も短くて数年、長ければ40年近くも精神病院に入院している患者さんで占められている。治療薬も有効なものがなかった時代、暴力行為によって家族から見捨てられる結果になった患者や、家族が皆高齢で引き取り手が亡くなってしまった患者さんなど、いずれも病院以外に行き場がなく、病院が生活の場になってしまった患者さんたちである。
この二つの群にあたって今試みようとしていることが、集団の力を用いて彼らの健康的な自立する力を賦活し、治療や退院促進に役立てようとする方法だ。
精神的な危機は個人のこころを退行(子供がえり)させる。精神の破綻はこころの発達のもっとも困難だった段階(固着点)に、様々な恨みつらみの感情力に引きずられて引き戻していまう。従来の個人精神療法では、内的な飢餓感はある程度満たすことが可能だが、社会性を伴った成長を働きかけることには限界がある。それは個人精神療法は、一対一の対話を基本技法としている為に、1対他数(3者関係以上)の社会性獲得のモデルになり得ないからだ。2者関係は母子関係のモデルでしかない問題点がある。
母子関係のモデルでは精神病水準から人格障害水準までの治療が可能である。しかし、これ以上の水準、うつ病、神経症など回復には3者関係(父、母、子)以上の対人関係を扱う技法が不可欠だ。これらの考えはフロイドそしてメラニー・クライン以降の精神分析。精神力動理論、対症関係論の成長発達モデルを採用している考え方であるが、人間のこころの成長と社会性の問題は実は密接にリンクしおり、患者さんの病状=発達段階にあわせて集団のサイズをあわせることで、驚くほどの治療効果を生み出すことがわかってきた。
これは精神科の入院治療だからこそ出来る技法であり、外来診療では患者さんの接する世界の集団のサイズまで治療上コントロールすることはほぼ不可能であろう。
患者さんたちにほかの患者さんとコネクトすることをスタッフが恐れず奨励してゆくこと、そして患者さんたちと積極的に交わってゆく治療スタッフの姿勢は、患者さんたちを勇気づけ、互いが互いを助けあう経験に繋がってゆく。患者さんの集団とスタッフの集団は常にパラレルで進行してゆくプロセスであり、患者さんたちの自立はスタッフの自立性につながり、効果的に治療が進んでゆくことに繋がってゆく。
この技法は急性期でも慢性期でも同じように用いることができ、うまく機能すれば治療効率のアップ、患者さんの自立とともに、職場環境の充実やスタッフのやりがい、自由な治療文化の形成に繋がってゆくと思われる。患者さんの治療が病院全体の改革まで繋がってゆくのである。
集団精神療法によって、薬物用法や個人精神療法/カウンセリング的技法ではない、第三の治療パラダイムの視点が広がるのである。
そして、この春から患者/スタッフのグループ化だけでなく、医者たちのグループ化に着手し始めた。具体的には毎朝、短時間のベッドコントロールのためのミーティングを持つことを始めた。毎朝必ず顔を合わせ、議論をいとわず自由に話し合える雰囲気を作ることで、医者たち(医局)の一体感が日ごとに高まってゆくのを感じている。以前ならば決定に莫大な調整が必要であった案件なども、互いに顔を合わせて話し合うことになれたことで、労せず決定することが出来るようになってきた。
まあ大きく書いたものの、そんなことを面白いと思ってやっている訳です。
☆そのほか近況など追記。
先週末はまたまた東京へ。土曜日はそそくさとお仕事を済ませて、夜からは原宿界隈のBangi氏のオフィスにお邪魔。様々な方がたにお会いしてごにょごにょと。沢山のお宝ゲット。いや〜面白かった。また遊びましょう。
戻ってからは夜な夜な病棟のプロモーション用のビデオ作り。iMovieでさくっと作る。FCP数年前に使ったことがあったけど、これは比べ物にならない簡便差で、ちょうど良い。
昨日は同僚との飲み会。イタリアンでワイン飲み。イタリアのチンザノスプマンテが意外にいけた。最近ワインにはまっているため、店主にイタリアワインの蘊蓄を聞いているうちに、オーパス・ワンとch.ムートン・ロートシルトを持ち出してくるので、飲ませてくれるのかと思いっきり期待したら、ビンを見せるだけ、ってなんだよ!
ちなみに今ブルゴーニュ病に罹ってます。