それは昔のこと
獣たちが鎖などつけることなく自由に奔放に大地を走りまわっていたころ
キカイ、ドウロ、イエ、クルマそんなものは当然ない時代
猿と言ってもいいくらいの人びとは静かに自然と共有しあいながら、その生活を営んでいた
けものを食らい、雨風にうたれ、太陽に感謝し敬い、起こるすべてのことに一喜一憂し生きていた
その人びとの群れの中に、一匹というのか一人というのか一つの物静かなオスがいた
それはほとんどあまり声を出さず、皆の先に立ち、走ることもなく、いつも皆の後ろに気付いたらいるというようなオスがいた
別にのけものにされていたわけではない
そんな心があったかはわからないが、どちらかといえば好かれていたのではあると想う
とにかくそんなオスが一ついた
その時代にもやはり今でいう「名前」というものが存在していた
その一つのオスにも、今でいう「名前」があった
その一つのオスは群れのものたちからこう呼ばれていた
下柳さん
(終)

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