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そのアルバイトと言うのは、喫茶店の店員だった。
その喫茶店は、バンドの練習の後いつも行っていた行きつけの喫茶店で、
伊勢佐木町商店街の結構目立つ良い場所にあって、
ビルの二階で、細い階段を上がっていく。
ドアを開けると広いフロアーで、
シックで落ち着く雰囲気の良い喫茶店だった。
やる事を見失っていた私は、いつの間にか、そのお店に行って、
いつもの場所で一人でコーヒーを飲んでいた。
私はそこのコーヒーが大好きだった。
会計の時にレジスターの脇にアルバイト募集の貼り紙を見て、
思わず口から「アルバイトさせて下さい。」と言う言葉が出ていた。
「んじゃぁ、明日履歴書を持ってきてね。」と言うマスターの言葉に、
あぁ、明日からあの喫茶店でバイトが出来るんだ!と思って嬉しかった。
翌日、言われるままに履歴書を持ってそのお店に行くと、
マスターはいなくて、太った店員がいて、
「お、来たね!よく来た。来ない人が多いからさ、じゃぁこっちに来て!」と言って、
渡した履歴書を見もせず、店から出て行った。
私は、「え?なんで出て行くの?」と、思いつつ、
その太った店員の後を追いかけて階段をおりた。
繁華なメインストリートを抜けてずっとついて行くと、
裏通りに入っていった。
その通りは、通称「親不孝通り」と言われる所で、
その通りの途中にある交差点にある四件のビルは、全部違う組の事務所だとか。
酔っ払ってその通りに入ったら、持っているお金すべて巻き上げられる。
そういう噂の堪えない通りだった。
もちろん私はその通りには近寄らないでそれまで過ごして来たのだが、
太った店員は私をそこに連れて行く。
その通りの中ほどに、私の行きつけのさっきの喫茶店の本店があったのだ!
「え〜?いつも私が行っていたのは支店だったの?」
本店だと言うその店は、支店より小さくて、暗くてぱっとしない所にあった。
扉を開くと、すごく元気な声で「いらっしゃいませ〜!」と、大きな声が迎えてくれた。
しかしそれは私に言ったと言うわけではなく、
扉が開いたら大きな声で言って、お客さんを迎える事になっていたのだ。
とにかくそこで、アルバイトをする事になった。
私の人生で、そのアルバイトは本当にいろんな事を教えてくれた・・・。

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