第25回全国社会福祉大会が、11月15日に日比谷公会堂で開催され、社会福祉事業従事功労者として、私が厚生労働大臣表彰を全国で302名の中の一人として受賞しました。
大学で法学を学び、紆余曲折を経て卒業後は、都内の民間企業の営業職を5年余り勤めました。学生時代同じアパ−トで起居を共にした諸先輩から、水を得た魚の如く営業職に励んでいると言われた私が、この後、全く関わりのなかった障害者福祉の仕事に携わることになるとは、私も含め知人・友人の誰もが、想像していませんでした。
最初に勤めた障害者福祉施設が、新設の就労支援系事業所(当時は授産施設)であったことから、今までの経験が活かせると思い、不安もなく、障害者の自立支援という目標に、むしろ、やり甲斐を感じて臨みました。
しかし、新設施設の初年度は、支援業務の合間に、植栽等の施設環境整備作業を行い、多忙極まりのない毎日で、午後10時頃までの勤務は当たり前でした。また、施設の運営も福祉制度の変遷の中、ようやく今日、私が勤め始めていた頃から望んでいた企業経営の手法を取り入れられるようになりましたが、当時は民間企業の仕事の進め方と大分乖離していましたので、戸惑うことが多々ありました。一生懸命作業に携わる障害のある方の賃金を少しでも多く支給できるよう、公の機関の協力も得ながら、オリジナル製品の開発等、指導員として5年間努めました。
その後は、法人・施設の健全経営や職員が働きやすい職場作り等の人事管理業務に携わり、他施設への異動を経て、現在に至っています。
福祉の業務に就いて30年があっという間に経過しましたが、未だ社会福祉業務に精通しているとは思いません。しかし、私がこの仕事に携わる中、常に意識していたのは、福祉の現場における課題の解決には、障害者支援のスタッフとしてと同時に、福祉とは一線を画した社会人として当該課題を俯瞰すること。この2つ立場から課題を捉えることが、適正な判断に繋がる手段であるということでした。そして、「他者への思いやりの心を教えてくれた」学生時代に同じアパ−トに住んでいた諸先輩や「お客様の立場に立った営業が、信頼に繋がることを教えてくれた」民間企業で営業職をしていた当時の得意先の方々とのふれあいが、福祉サ−ビスの提供や事業所の経営管理等、円滑な業務を遂行するための貴重なスキルとなりました。
そして、このように長い期間勤めてこられたのは、福祉のことを何も知らないまま就職した私に対して指導していただいた、数多くの有能な施設長の方々と職員の皆さんや地域等の関係機関にご協力頂いてきたお陰であると深く心から感謝いたします。みなさん、本当にありがとうございます。
私には分不相応な表彰ですが、これは、「県立あさひワ−クホ−ム」及び「県立あけぼの医療福祉センタ−成人寮」を指定管理運営する法人職員の仲間と長年、障害者福祉の向上に取り組んできた成果を評価されたものですので、職員の皆さんを代表していただいたと感謝しています。
また、来年度からは、消費税の増税分が社会福祉関係予算に反映されることになっています。このことによって、障害者・高齢者福祉の更なる充実が期待されると同時に、福祉サ−ビス提供の重要な担い手である職員、特に非正規職員の待遇面を含めた職場環境の改善が図れると思われます。
このような受賞は、正規・非正規を含め、福祉に係わる職員の方の日ごろの努力が報われるものです。厳しい職場環境の中、受賞は心の糧ともなります。他の表彰と違ってあまり、メディアにも取り上げられないことから、多くの方にこのことを知っていただくことが、福祉職員の職務のモチベ−ションを高めることにも繋がりますので、ささやかながら、この欄で公表させていただきました。
今後も微力ですが、「笑顔とともに、夢を描ける心豊かな人生を」利用者の方が送れるよう、質の高い支援を誠心誠意尽くしていきたいと思います。
県立あさひワ−クホ−ム施設長 藤井 稔

第25回 全国社会福祉大会 (日比谷公会堂)

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