2006/8/21

白い船(’02)  日本

これも実話ベースの錦織監督作品。島根の海沿いの小さな小学校から定期的に見えるフェリーとその子供達、教師達との交流の物語。音楽担当は、やはり海のイメージの一時期馴染んだ角松敏生。

あるレビュー欄に、そういう環境に住む子供にとって沖を船が通るのがそんなに珍しいこと?というコメントもあったけれど、劇中平成11年の話ながらファミコン、携帯、TV等への興味は全く見えず、素直に目の前に広がる海の沖合いを通る白い船に心魅かれる子供達。しいて言えば馴染みの小さな漁船とは違う風格に、漠然と未知の世界への憧れを見るのかも。

私は短航路やイベントでフェリーや汽船に乗った事はあるものの、本格的な船旅経験はなく、船への憧れというと、クリスティ原作の「ナイル殺人事件」やオリヴェイラ監督の「永遠の語らい」に出てきたような、優雅なクルーズや歴史を巡る船旅、またゆったり世界一周の船旅等。

でも子供時代を辿れば、井上陽水の「冷たい部屋の世界地図」の茫洋と行き交う船のイメージだったり、”沖を通る船”と言えばやはり10代前半「海を見ていた午後」の影響で、地元の海沿いや高台の岬の喫茶店へ自転車を押して雰囲気を求めに行った”ソーダ水の中を通る貨物船”だったり、後年の実際の「ドルフィン」よりピュアで切実な憧憬。そういう感情も少し思い出すような。

とにかく登場人物が、ピュアな子供達、彼らの夢を現実レベルで紡ごうとするひたむきな教師達、周囲の温かい人々、といい人達ばかりで、最近では似た雰囲気では「機関車先生」以上でしょうか。ヒロイン中村麻美の教師は、子供の心を捉えるのに苦悩している、というには浅薄な気も、ながら清潔感が作品の基調には似合っていたかと。

船に憧れる子供達の土台の舞台として、一部尾道が重なるような、子供達が坂の細い道、階段を駆け巡る小さな町。伝統舞踏神楽や、猟師として生きてきた老人(大滝秀治が渋い味)の思いや回想も。フェリーに近づくため勝手に漁船を出し捜索隊騒ぎを起こした少年達を誰も叱らなかったり、やや不自然に思える反応もありつつ、全体に、優しい御伽話のようでもあり。

”他愛ない夢の実現”を盛り上げた、見方によっては大袈裟、綺麗事過ぎ、ながらファンタジックさと温か味が残り、ヒロインの「船から手を振る、それだけでどうして涙が出るんだろう」という科白に象徴されるような、不思議な究極の素朴さ。ただ、それだけのことが、貴重な時世かも。リピーターも多かったらしい密かな珠玉作(ある意味怪作?)では。(http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2532ハート・オブ・ザ・シー(’03)

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