2008/6/21

迷子の警察音楽隊(’07)  その他

先日新作DVDリリースのエラン・コリリン監督のフランス・イスラエル合作。演奏に行く途中、イスラエルの小さな町に迷い込んだエジプトの警察音楽隊員達と、彼らを泊めた現地の人々との、一夜の触れ合いの物語。昨年末、朝日新聞の沢木映画コラムで取上げられており、気になっていた作品。

全体に薄いブルートーンのあっさりした映像、8人の水色の制服を着た音楽隊員と、黒い髪、瞳のカフェの毅然とした女主人(ロニ・エルカベッツ)、イスラエルの砂漠の閑散と広がる土地、細長いシルエットの街灯の間を質素に伸びる道路、店内や室内のレモン色等、派手さはないけれど淡い触感が、一夜のお伽話的ムードに合っていたような。

若い隊員(サーレフ・バクリ)が「マイ・ファニー・バレンタイン」で女性にアピールしたり、イスラエル男性が昔演奏した、という「サマー・タイム」を食卓で歌い始めたり、隊員がクラリネットで自曲を披露したり、音楽も媒介にはなっていたけれど、仲間内では母国語、交流はたどたどしげな英語。

女主人が隊長に、エジプト映画放映が楽しみで、オマー・シャリフに憧れた、等話すシーンがあり、公式サイトを見ると、舞台の’90年代、イスラエルとエジプトは冷やかな隣国同士ではあっても、実際イスラエル家庭でのエジプト映画鑑賞は日常の娯楽で、少し奇妙な状況だった、と。

やはり製作国色でか、隊長役は、エジプト人でなくイスラエル人俳優サッソン・ガーベイ、この二人の絡みが一番多く、それぞれ過去を持つ異国の男女の、束の間の大人の心の交流、という余韻。女主人が出かけた店で注文した、延ばした生地にサラダ、ポテト等を包んだ、厚めのクレープのようなもの等は、どういう味だろうか、と。

「警官が何故そんな(アラブの古い)音楽を?」「では人間には何故魂が必要なのか?」「最近は人は効率性、金儲け、値踏みに忙しく余り音楽を聞かない」「皆、バカね」「時々そう思う」等のしみじみ交わされる会話が印象的。

その他、若い隊員がローラースケート場に付き合い、内気な少年に、並んで座る少女へのアプローチ手順を仕草で伝授するシーン等、画面的に面白味があった。ラストはステージでの演奏シーンではあったけれど、それは今回付録のような感。

やはりその前夜の、見知らぬ異国者達への無償の善意、囲む食卓、飲み物、ぎこちなさもある会話、本来接点のないアラブ人とユダヤ人達が、ある夜共有した時空を超えたような時間。これといって盛り上がりがある訳ではないけれど、イスラエル、という舞台にしては、淡くソフトな余韻の作品だった。(http://www.amazon.co.jp/%E8%BF%B7%E5%AD%90%E3%81%AE%E8%AD%A6%銀の街から

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