2008/8/15

明日への遺言(’08)  日本

先日新作DVDリリースの小泉堯史監督作品。原作は大岡昇平の「ながい旅」、第2次大戦後、B級戦犯裁判を戦い抜いた、岡田中将の姿を描いたヒューマンドラマ。蒼井優出演とのことでも気になった作品。

冒頭、民衆攻撃への憤りの象徴としてかピカソの「ゲルニカ」から、モノクロでの実際の空襲、被害者の映像、解説+字幕入りでドキュメンタリータッチで始まり、ほとんどが法廷劇。藤田まこと演じる岡田中将という人物の、感情を抑えた答弁、戦時中、無差別攻撃への憤りを秘めて、自分の立場で処断した米軍兵処刑への自負と覚悟。

ヤマ場、というには静かなシーンではあったけれど、裁判での有利不利を顧みず、その処刑は報復、ではなく処罰だった、と毅然と繰り返した姿が、この人が心身に積み重ねてきた覆しようのない経緯の結晶、である感が。

今日丁度終戦日だけれど、そういう壮絶さは、実際戦争の修羅場を経験していない、自分含めた世代にとっては、黒木作品の「静かな反戦映画」のように、今回主人公の激情を秘めてはいても静かな物腰、でもあるし、余計に実感するのは困難、でも部下の責任を自分で一手に背負おうとする姿は、利己的な幹部の醜態も珍しくないドライな現代人が失くしつつある美点、に思えた。

また、本望である、として「ふるさと」の歌が流れ、青い月明かりの中静かに歩むラストは、時代の波に翻弄されながらも、自らの信念を貫いた誇り、という意味では悲劇の中のある種の崇高さ。

戦時中という混沌の無法ゾーンゆえ、国際法等の遵守がされていたかどうかの判断も不可能な中、敗戦国兵士ゆえ晒される戦犯裁判、という性質自体、当事者には心身共に過酷なもの、とは改めて、ではあるけれど、

法廷シーン自体は、ロバート・レッサー演じる真摯な弁護人、フレッド・マックイーンの検察側のアメリカ人の応酬含め、近年見た「それでもボクはやってない」「ゆれる」等での邦画のシーン、のどうも揚げ足取り的、陰湿な描写に比べれば”フェア”で、作品自体、性質は違っても小泉作品「雨あがる」「博士の愛した数式」等にも通じるような、不器用なまでの誠実さ、という余韻は残った。

また法廷内に、岡田中将の孫の赤子含めて身内が訪れ、中将を見守る空気、戦犯裁判、という響きにはそぐわない温かなアットホームさが流れたのも、やや違和感がしたりもしたけれど、一時緊張がほぐれ和んだシーンで小泉作品らしいという感も。

蒼井優は戦争ものは「男たちの大和・・」以来だったけれど、今回は序盤に証人として攻撃を受けた状況を、気丈に答弁する短い出演シーン、どちらかと言えば、その後の証人の、田中好子の切々と被害を語る姿の情感、の方が残るものがあった。妻役の富司純子は、傍で中将を見守り続ける確かな絆を静かに表現。今回女性陣は背景的に、戦争に傷を負ったり愛する者を失う受身の姿だけ。地味ではあるけれど、やはり戦った、戦わざるを得なかった兵士達の信念と悲哀の硬派物語だった。(http://www.amazon.co.jp/%E6%98%8E%E6%97%A5%E3%81%B8%E3%81%AE%「博士の愛した数式」)

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