2008/9/2

旅の贈りもの 0:00時発(’06)  日本

一昨年公開の原田昌樹監督作品。先日「SONGS」でのように徳永英明出演作と知って、DVD発見したので見た作品。大阪午前0時発、行き先不明ミステリーツアーのような列車に乗り合わせた、それぞれ問題を抱える人々が、終点の「風町」で過ごしながら、再生していく物語。

日本海側のどこかの街、という設定だったけれど、ロケ地は広島の呉市等のようで、海岸を臨むこじんまりした街並み、お寺や石畳、狭い路地等、箱庭のような日本的ノスタルジックな場所。劇中の列車は、鉄道マニアに人気の「EF58形150号機」という機関車だったそうで、これも内装や走る姿がレトロな味わい。

失恋したOL(櫻井淳子)、孤独な女子高生(多岐川華子)、リストラされ家族との距離を感じるサラリーマン(大平シロー)等が、その街での出会い、ゆったり流れる時間、人々ののどかな好意の中、誰かに必要とされる実感で、行き詰まりから解放されていく展開。

劇中櫻井淳子が言われていたように、足早にひたすら前を見て歩く事で、見失う、気付かない、踏み潰してしまう物、でもなかなか程好い加減は難しいし、そうしてきた事で失くした物も戻らないけれど、改めて自分の歩幅、の確認は価値ある時間、というような感触も。

「風町」から、はっぴいえんどの架空の「風街」も思ったけれど、大滝秀治、 梅津栄、樫山文枝等のベテラン陣が、旅人達を懐広く温かく迎える住人として、この街の桃源郷のようなムードを創っていた。

タレント志望少女役黒坂真美が、大阪弁の賑やかなキャラクターで訳ありな人々の中和剤的な味、多岐川華子は、多岐川裕美の娘らしくそう言えば、という面差しの強さ。妻の遺影と旅する男役細川俊之は「ラジオの時間」以来か久々に見かけ、やはり渋くはあるけれど、年をとった、と。

徳永英明は、そこに数年前から居ついていた医師役、いきなり、靴擦れで座り込んでいた櫻井淳子の足首をつかむ唐突な登場の仕方。演技力というより、良心的素朴な人柄と2枚目の中間、のような役柄が、キャラクター的に似合ってはいた感も。

徳永版「時代」が劇中流れ、これを聞くとオリジナルの中島版の方が力強く、徳永版はかえって優しいテイストが。エンドロールには「いい日旅立ち」中森明菜バージョンだったけれど、せっかく徳永版もあるのだからいっそそちらの方が、とは。Wikipediaではもう1本「シンガポール・スリング」('93)という徳永出演作もあるようだけれど、余り情報が見当たらない。

この原田昌樹監督作品は初見だったけれど、今年冬癌で他界され、春頃新聞に小さく紹介あった広報映画「審理」が遺作に、と今回作品検索していて知った。ご冥福をお祈りします。旅人の心の揺らぎ、やり取り等短絡過ぎな感もするお伽話、ではあるけれど、女子高生の孤独のはけ口のような携帯メール、危険サイトの誘惑、の今時の空虚さ、もシンクロしながら、一時の人生のエアポケットの安息場としての旅空間で、淡い好感持てた珠玉作、という余韻だった。(http://www.amazon.co.jp/%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8C%E6%97%85%SONGS 徳永英明

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