2008/9/10

ありがとう(’06)  日本

一昨年公開の万田邦敏監督作品。新作リリース時DVDで見ようとしたものの忙しなく未見で返却、先日「SONGS」に出ていた薬師丸ひろ子出演、との事でも気になった作品。原作は平山譲の同名小説、阪神・淡路大震災で被災しつつ、還暦でプロゴルファーテストに合格、活躍中の古市忠夫氏の姿を追った、実話ベースの物語。

’95年1月の地震の勃発の瞬間、その後の混乱、神戸の街の壊滅振りが、実際の映像とCGで映し出され、舞台になった長田町を襲った火の手、家屋に埋まった人々が犠牲になった様子等、当時のニュースでは伝わらなかった細部実態の再現。

様々な事件が起こり、忘れていく中、当時、以前住んだ西宮、そこの母校周辺でも学生に被害者が出たり、親族、友人、知人等も大事には至らなかったけれど被害を受け、その後の影響も残ったあの大災害、だった、と。

今福将雄演じる老人の、妻を炎に奪われるシーン、堤防で名を呼ぶ姿等は、現実的な大惨事の中の、一つ一つの、憤りと悲しみの形、を見た思いも。

その炎の中、一人でも救おうと奔走する、「憑神」以来の赤井秀和演じる地域の消防隊員でもあった古市氏の姿。仮設住宅で、気を落とし自分に今までの憤懣をぶつける妻(田中好子)、娘達(尾野真千子、前田綾花)に、炎の中で、究極の場であらわになる人間性、というか、自分が見た「3つの顔」の話をし、

呆然と動けなくなった人、他人はどうでもよく自分の事だけを考える人、ただただ人のためだけに動く人、どれも自然な人間の顔だ、でも自分はどの顔になりたいか?、等、災害で今まで通り行かなくなった人生、でも生かされている人生、を見つめ直す、という辺りが、日常素朴に古市氏の口から出ていた、関西弁トーンでの「ありがとう」という科白にも繋がっていたようで、

実際葛藤もあったようだけれど、震災後土地を奪われたくない地域住民と、行政の摩擦、そのパイプ役として、集会で自治会長として、災害に強い街造りのため、広い道路、公園の必要を説き、当初罵声を浴びつつも賛同を得ていく、飾り気ない豪放な気骨、がボクサー人生で怪我で生死をさ迷い復活した赤井秀和本人の過去の姿に一部重なったりも。

唯一焼け残った車に積んでいたゴルフセットで、プロゴルファーを目指すくだりは、元々クラブのアマチュアチャンピオン、という経歴、でも被災後の事情にしても、体力づくりや筋トレ、自宅でのカップイン練習、のみで2千人中50名程度合格、というプロテストに臨む下準備、としては実際どうなんだろうとは思ったけれど、

彼の前向きな姿が、復興への方向と重なり、トレーニング姿が地域の人々の中に溶け込んでいる様子は、温かみがあった。連日コース練習している並み居る若いゴルファー達に混じり、自分の持つ老練な正確さ、を武器に戦う姿も、小気味いいものがあり、被災という実際的な苦難を経てきたゆえのメンタル的骨太さ、プレッシャーに落ち込むライバルの若者(柏原収史)を励ます大らかさ、も印象的。

「崖にしがみついている、その手を放して、思い切り手を振ってみろ」というのも日常のしがらみの中、なかなか出来にくいものではあるけれど、そういう事が必要な局面も、というメッセージにも。

薬師丸ひろ子は今回テストでのキャディー役で登場、古市氏のショットの正確さを見抜き、その人柄に好感を抱き、励まし、アドバイスを送る冷静な風情、ではあった。エンドロールは、加藤登紀子で知っていた「生きてりゃいいさ」で、河島英五版だった。

アメリカでは9.11題材作品が続々と作られたりして、以前イランの大地震後の現場を行く半ドキュメンタリー的なキアロスタミ作品「そして人生はつづく」を見た時、日本ではこういう大災害現場をリアルに描くのはタブーな感で、阪神・淡路大震災テーマ邦画等は難しそう、等と書いていたけれど、

震災後10年を経て作られた、ドキュメンタリーという訳ではないけれど、何にしてもあの衝撃が舞台の作品、やや漫画的サクセスストーリー風でもあってぎこちなさもあるかもしれないけれど、実話ベースの大逆境からの希望の人生転換、という感慨は残った。(http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%8C%E3%81%A8%)

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