2008/9/30

トキワ荘の青春(’96)ー追悼・市川準監督ー  日本

昭和30年代、豊島区に実在のアパート「トキワ荘」に、漫画家の卵達が集ってきて暮らす日々の様子を描いた市川作品。主役の寺田ヒロオは知らなかったけれど、手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄等の漫画家達が主人公、とのことで気になった作品。

質素な建物、それぞれの部屋で漫画に取り組み、折に触れ一部屋に集い、まるで合宿生活+男子学生寮のようでも。まだ駆け出しで、メンタル的にも経済的にも不安定な漫画家達が、その時期を同士と共に、励まし刺激し合いながら、やり過ごす場所、という一時の”溜まり場”的なやや乱雑な温かさ。

廊下を正面から映した固定のアングルが割りと多く、天井には傘電灯がポツポツとあり、外からのセピア系の自然光のおっとりとした空間、整頓された寺田の部屋、一人が押入れに寝る藤子不二雄ペアの部屋、インクが壁に散ったり乱雑な赤塚の部屋、とそれなりに個性が。

実際最初に住み着いていたらしい手塚治虫(北村想)などは、最初に少し登場しただけで別の仕事場に移ったり、やはりある程度自分の道が見え、個性が確立してきたら、自然と離れていく、という場。本木雅弘演じる、温和な作風の寺田がまとめ役、世話役のような立場で、それぞれのどこか皆マイペースな個性の面々ではあった。

折に彼らの母や姉が訪れる程度で女っ気はない場所に、ある日、合作の仕事で一晩だけやって来た松梨智子演じる、紅一点の水野英子は、仕事中石森、赤塚からふられる軽口もサバサバとさばき、男らしく、画風のイメージとは違いユニークだった。

出版社側との摩擦、それぞれの漫画家の模索、自分の作品で嘘はつきたくない、という寺田に、教科書でなく漫画だ、時流に合わして行かなければならない事位、判るだろう、という出版社側、それに対して「判りたくありません」、という自分の世界へのプライド。

寺田という人の漫画は、忠実に扱っているとしたら、本当に童画風の柔らかなタッチで野球や日常の暮らしを描いているようで、仲間が言うように優しさが持ち味、の印象。自分の事で目いっぱいのはずが、落ち込む仲間を勇気付けたりなだめたり、というキャラクターに添っていたようでも。本木君は「鉄コン筋クリート」の声優以来、あの中では2枚目風貌だったけれど抑え目の熱演、という感が。

藤子不二雄ペアの鈴木卓爾、阿部サダヲがくだけたいい味、さり気なく脇役で母役桃井かおり、娼婦役で内田春菊、寺田兄役時任三郎等の顔も。

寺田が石森(後の石ノ森)章太郎の姉に、漫画に市民権を与えるのは石森かもしれない、僕らのは少し弱いから、等と呟いていたり、石森が手伝ってもらっている赤塚の絵を担当者に見せ、こういう部分は自分よりも上手い、と紹介、行き詰っていた彼に光明が、等のエピソードも印象的。

余り激しく個性が衝突、という描写はなかったけれど、寺田がつげ義春の作品を、認めながらも、自分の傷を漫画で見せる必要はあるのかな、僕のは幼すぎるのだけれど、等と語ったり、つげも寺田の優しい作風を好きだと言いつつ、トキワ荘にはもう来ない、と離れていく、折にそういう芸術家同士の距離感、また惑いつつ筆を折る森安なおや等、挫折の姿も。

やはりこれは男達ならでは、のラフな連結で、女流漫画家達だと無理がありそうな、と思ったら、検索中、好きだった竹宮恵子、萩尾望都等が集った練馬区の大泉サロン、という”女流トキワ荘”もあったそうでやや意外だったけれど、この2人については少年漫画色も混じっていた作風も関係あるのかもしれない、とも。

当時の時代感はCGでなくモノクロ風景写真で表し、バックに流行歌が浪々と流れ、何か特にスパイスが、という訳ではないけれど、何だか見ていて和み感の市川色もあり、漫画ブーム夜明け前の時代を切り取った、レトロ感漂う、ちょっとユニークな昭和回帰もの、という感触。

市川監督訃報は新聞では見当たらずやや意外だったけれど、一昨日ポール・ニューマンはさすがに大きく出ていた。享年83才、と。「スティング」「明日に向かって撃て!」で共演のレッドフォードらの弔辞も。カーレーサーの顔もあり、一昨年「カーズ」で主役マックイーンを諭したり、街のまとめ役のドック・ハドソンの声を担当していたのを見たのが最新だった。遺作は来年1月公開の、ナレーション担当した動物ドキュメンタリー「ミーアキャット」に。(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%AF%http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%AD%BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)「カーズ」http://www.afpbb.com/article/entertainment/newshttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080930

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