2008/11/10

東京日常劇場<哀愁編>('91)−追悼・市川準監督ー  日本

市川短編ドラマのオムニバスもう1本の方。<憂愁編>と同じく2話ずつセットが3組と単独4編、ほとんど2人芝居、「社員食堂」だけが、主演岸田一徳と他の社員達の絡み。

やはり検索での情報が出てこないので、メモしたタイトルと出演者記録しておくと、

「家出娘の父」「伯父さんのアトリエ」/高品格、立原ちえみ、下元勉、鳥越マリ
「夜店」「フリーウェイ兄妹」/ビートきよし、川上麻衣子、小島三児、天衣織女
「マネージャー」/沢田研二、田中律子
「兄貴」「深夜の恋人」/白龍、大場明之、大鶴義丹、中嶋朋子
「社員食堂」/岸部一徳
「だめなヒモ」/勝俣州和、羽田美智子
「放浪癖の妹」/田中裕子、つみきみほ

の10編、<憂愁編>でもあった、2話が並行するペアの組み合わせは、空気感の似たものを選んではいて、見る側に変化を持たせる、という意図なのか、1作品と見て、不思議とそう違和感ない構成。

やはりスタジオセット、具体的な地名は「フリーウェイ兄妹」で、運転する妹に兄が新宿で降りるだろう、等と言っていた記憶位で、やはり特に東京舞台、という色濃くはなかったけれど、冒頭の、家出してピンク映画に出ている娘に会いに来た父の会話の「家出娘の父」、駆け出しの歌手とそのマネージャーの、仕事を掴みあぐねている「マネージャー」の芸能界の一面等やや一時代前の東京、の雰囲気という感も。

「フリーウェイ・・」は、近年余り正統ドラマでの覚えないけれど、動かない車の運転席と助手席の兄と妹を撮影、妹がハンドルをきる仕草、ライト、角度の変化、騒音等で走っている様子に仕立て、ゲームセンターでのドライブゲームのような、妙にレトロ感な映像だった。

印象的だったのは、「兄貴」「深夜の恋人」で、「深夜・・」は終電に乗り損ねたらしい同じバイト先の男女の公園での会話。大鶴義丹と中嶋朋子が、太宰治について話していて、短編「トカトントン」の虚無感のような事が中心、また互いの好きな短編で「ヴィヨンの妻」「きりぎりす」の名を挙げていて、

「ヴィヨンの妻」は、市川監督が次回作として準備していた、とのことだったけれど、先日雑誌で根岸吉太郎監督作品として、浅野忠信、松たか子主演で来年秋公開、と見かけ、そういう流れになったのかと思ったのだった。村上春樹作品からもあえて短編「トニー滝谷」を選んでいたけれど、そういう興味の片鱗が、この時点で、とも。「ヴィヨン・・」は未読、市川作品が実現していたらキャストもどうだったか判らないけれど、太宰作品の斬り方、また市川作品での松たか子、というのもあったとすればどういうものか見てみたかった気が。

今回この作品とか特に、余り生粋の俳優任せのアドリブ劇、には思えなかったのだけれど、終盤大鶴義丹が酔っ払いに殴られてしまう悲哀もあったけれど、2人の間のそっと通い合う共感、のようなムードが自然で好感だった。

大鶴義丹は以前著作小説も幾つか読んで、俳優としては、何か脇役で出演ドラマを見た気もするけれど、一時期追っていた「湾岸ミッドナイト」シリーズの記憶が大半、余り繊細な芸風、という印象は少なかったけれど、今回初めてやや文学青年風、ではあった。中嶋朋子はやはり上手い、と思ったけれど、若い頃の川上麻衣子、羽田美智子らの姿も。また「大阪物語」の前に、すでに沢田、田中夫婦も市川作品に出ていたのだった。

「深夜・・」とペアの「兄貴」で、ラーメン屋台を営み地道に暮らす元ヤクザだった男、そこへ食べにやってきた元弟分、の白龍と大場明之の間の、道が離れた男同士の人生の狭間での朴訥なエール、というのもじんわりするものがあった。

どの作品も、<憂愁編>と同じくやや訳あり風、日常を送っている人々に、何処となく漂うやるせない”哀愁”、それが一番感じられたのは「社員食堂」で、食堂で皆に瓶詰の「うに」を分けたり元GSメンバーだった、と話題の中心になった岸部一徳、実際のタイガース、という設定だったり、だけど、上司と先輩がその席にやってくると、単純な仕事の指示をされ、その威厳はたちまちに消え、その空気の変化への抵抗の「うに」を勧める微妙なやり取り、でも静かに上司に挨拶して去っていく姿、がそこはかとなく印象的ではあった。(http://www.cdjournal.com/main/dvd/disc.php?dno=2191080099■追悼・市川準監督■東京日常劇場<憂愁編>(’91)BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)トキワ荘の青春(’96)会社物語(’88)東京夜曲(’97)東京兄妹(’95)竜馬の妻とその夫と愛人(’02)病院で死ぬということ(’93)たどんとちくわ(’98)「buy a suit スーツを買う」あおげば尊し(’05)

クリックすると元のサイズで表示します
0



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ