2008/12/8

最後の戦犯(’08)  日本

昨夜放映の一部録画、一部オンタイムで見たドラマ。近々見る予定の「私は貝になりたい」同様、戦犯に問われた青年の物語、との事でも目に付いて。終戦の直前、上官の命令でアメリカ人捕虜を処刑、3年半の逃亡生活の末、国内で最後の戦犯裁判にかけられた佐田修さんの手記を元にした物語。

「私は貝に・・」は、あらすじでは主人公が、同様に上官の命令で捕虜を処刑、でも銃剣が腕を掠めただけ、との事で、その場で何故それで済んだのか、という状況は、作品を見てみないと何とも、だけれど、この作品では、逡巡しながらも、断われば自分の命がない状況で、やむなく実際処刑、という行為を行った見習い士官の若者、という事実の重み。

その主人公吉村修(ARATA)が、敗戦で、一挙に戦犯に問われる立場となってしまい、母や妹達にも居場所を知らせず、岐阜多治見の陶器工場で偽名で職人修行をしながらの、逃亡、というより隠遁生活。その間にも真面目な人柄が周囲に認められ、出来ていく信頼関係、というのが、改めて、真摯な性質を持つ若者が、殺人に手を染めさせられる、戦争の異様さ、理不尽を浮き立たせているようでもあった。

でも内面、その殺人行為自体の身に染み付いた罪悪感、また、逃げたのは、死刑になるのが怖いからじゃなく、自分は間違った事はしていないのに、裁判にかけられるのが判らないからだ、という母宛の憤りのモノローグ、に見える揺れ動き、親しくなった先輩職人(村田雄治)が、戦場で仲間を裏切り見捨て逃亡してきた、という過去を知って、その気持ちをどうしても聞きたい、と激しく詰め寄る姿、等、

「上官に命じられ仕方なく」という、筋の通る口実、という保身に逃げず、というか、逃げられない自分の行為自体の罪を背負おうとする、当時にしてはまともに純粋な精神、の筋を感じる主人公ではあった。価値観麻痺状況の戦時中、そういう感性を持つ者は、周囲にも見下げられ、自分も苦しいだけ、という場面は戦争もので珍しくはないけれど、

改めて、やむない状況で殺人を犯させられ、それによって深い精神的な苦痛を強いられるだけでなく、自分の命も裁かれかねない戦時中の若者、に対して、現代の、身の危険のない平和で豊かな社会で、具体的な理由なく子供、人を殺す若者、とかの皮肉も思えたりした。

後半の法廷シーンでも、実際は指名されて処刑係になったのに、自ら志願したのだ、と告げ、殺人という罪を自ら認めようとする姿勢にも、そういう潔癖さが伺え、

ひたすら自分の保身に走る上官加藤大佐(石橋凌)の姿等は、ある意味人間の、卑小さというのか、死刑は免れたい、という正直な部分なのだろうけれど、最近見た中で同じ戦犯裁判題材だった「明日への遺言」も思い出したのだったけれど、対照的に、部下を庇って責任を背負おうとした実在した岡田中将(藤田まこと)の高潔さ、というものも改めて、思われたりした。

また当時、そのBC戦犯家族が世間で受ける逆風、というのは、特に「明日への・・」等ではそういう描写はなかったけれど、近所の冷たい目、警察での、病身の姉(原沙知絵)が水を浴びせられたり、の拷問に近いような弟の行方の尋問。戦時中での英雄、が一挙に罪人となる、価値観の180度転換、の怖さ、いびつさ。

取調べ室で、母(倍賞美津子)が毅然と、A級戦犯達は、巣鴨プリズン(戦犯が収容された拘置所)で結構な待遇を受けているというのに、何故戦犯でも犯罪者でもない私ら家族が、こんな酷い仕打ちを受けなければいけないのか?!と憤りを見せる、というシーン等も、当時の市井の人々への不条理の一面、という感で印象的。

結局死刑は免れ重労働5年の刑になり、釈放後母と縁側で光の眩しさを語り合ったりしている、それはやはり命あってこそ、の穏やかだったけれど、それは彼の置かれた状況、潔さ、精神等が認められた判決、というより、刑務所の同室の韓国人青年が、それで済んだのは、アメリカが朝鮮戦争で忙しいせいだ、釈放にはなっても、自分には行き場がないし、戦争は終わってない、等と語っていて、余り美談的な後味、でもなかった。

ARATAは主演クラスでは「ピンポン」以来だったけれど、今回こういう硬派作品の、主人公の潔癖さに似合って割と好感だった。倍賞美津子も「春、バーニーズで」で見かけていたのに続き母役、気丈な物腰、で締めていた。その他新井浩文が、空襲で家族を失った恨みで自ら捕虜の処刑役を志願、裁判では保身に走る上司への憤りを行動で示そうとするのを、主人公にいなされる直情型、生身の戦時中の青年らしさ、がARATAとは対照的に脳裏に残った。昨夜「みゅーじん 岩崎宏美」録画。(http://www.nhk.or.jp/nagoya/senpan/index.html明日への遺言(’08)私は貝になりたい

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