2008/10/30

あおげば尊し(’05)−追悼・市川準監督ー  日本

元教師の父の在宅看護をする主人公の教師、その家族、生徒達の姿を描いた市川作品。原作は未読だけれど重松清の同名小説。この人は、やはり末期患者、家族の物語らしい大林新作「その日のまえに」原作者でもあったのだった。

末期医療題材だった市川作品「病院で死ぬということ」の群像劇的な患者達から、一人に焦点を絞って、その元教師、という背景、また自分もその職に就いている主人公を軸に、「病院で・・」よりは一つのドラマを掘り下げたという感が。

折にフェイドアウトして場面転換したり、ふと外界の風景が入ったり、というのも似ていたけれど、転換の間隔は長く、風景も「病院・・」での四季の美しさや生き生きした人々の様子、というより、冬の楚々とした木や植物、青空や満月といった静物画的なイメージ、が多かった。唯一学校の風景は、傘置き場の色とりどりの傘、運動場の子供達の遠景とか何気ないショットが生命感、を漂わしてるようだった。

市川作品での低学年の子供達、は初めて、やや純朴過ぎな小学生達、という気もしたけれど、インターネット授業を機に流行りだした死体サイト閲覧、それに対する言葉はせいぜいもどかしくも「死ではなく、生に興味を持て」としか、という所で、劇中教師が言っていたように、子供故の好奇心に、道徳やモラルを盾にした歯止め、も難しく、

現実的に、核家族化もあって祖父や祖母、またその死に目を体験する子供が減っていて、その上テレビゲーム、一部映画、番組、インターネット上等でのバーチャル感覚で、人の命、感情、存在そのものを実感出来ず、記号や数字等、でしか捉えられない、という子供(→大人)の傾向、を危惧する声は折に聞いたり見かけたり、日常実際感じる所ではあるけれど、

劇中では、希望者に自分の在宅看護中の父を世話させる、という異例の課外授業、それでも、それが心に訴えたという反応を見せたのは、伊藤大翔君演じる、幼い時父の死を体験しややトラウマになっている、多感な少年だけ。老いた病人の姿、その手を握り、その温もりに、閉じた心を開いていくくだり、元教師の老人の”最後の授業”、言葉よりも体感、というシーンには理屈抜きにじんわりしたけれど、

それでも、クラスの中、一人でも、というのが救いにも、一人だけ、というのが市川作品らしくも思えたりして、この作品に、特に道徳的な意図はなかったのかもしれないけれど、

子供に大々的にアピール、というには渋く地味な作品、ではあるけれど、少なくともこれを見た子供の中に、何らかの形の命の温み、というものを感じこそすれ、死体への興味をエスカレートさせ、無機的な犯罪へ走ったり、劇中、妻役薬師丸ひろ子が、父の葬儀で母が挨拶をしている最中、笑っていた参列者がいて哀しくなった、等とこぼしていたけれど、そういうどうも薄ら寒い麻痺感覚、を養っていく種になる可能性は低いと思う。

顧みれば私自身今更ながら、劇中の子供ではないけれど、様々な状況の中、身近な家族の死、というものに真摯に向かい合ってきたか、これたか、整理は出来たかというと、そう言い切れるものでもないのだけれど、この作品は、個人差で、「病院で・・」同様、やはり淡くあっさり美しすぎ、という批評、感想もあるのだろうけれど、

私にとっては、映像や科白とか総合して、そう押し付けがましすぎず湿りすぎず、突き放しすぎず、適度な距離感、温度、柔らかさで、そういうものへの一種の間接的慰みというのか導入テキスト、という感もして、1本の作品を見るのが妙に長く感じ、労力がいるケースもあるけれど、やはり他のほとんどの市川作品同様、自然と引き入れられ長さは感じなかった。

また唯一の薬師丸ひろ子出演市川作品、ではあるけれど、数ある彼女の出演作品中、今まで見た中で最も、薬師丸、ではなく単に劇中の一登場人物(テリー伊藤の教師の妻)として見た、という感がして、それは、テリー伊藤のオーラ、加藤武、麻生美代子らベテラン陣との脇役共演、という事もあったかもしれないけれど、市川マジック、というのか俳優<作品という図式を感じたりもした。

テリー伊藤の教師、というのは、ラフで不器用さもあり熱血すぎず、予想より意外に違和感なかったけれど、映画出演はこれだけかと思ったら、「花とアリス」に医師役で出演していたそうだけれど、今の所どうも登場シーンが思い出せない。

テーマ曲でありモチーフの「あおげば尊し」の曲は、さすがにやや古めかしい、ラストこの曲流れる葬儀も劇中そこだけ何だか大仰すぎ、という気もしたけれど、人柄を前面に出す訳でなく、エンドロールのモノクロの生徒の間を挨拶交わしながら行く後姿、で現したのみ、昔気質的な正道”教師”としての老父+その死を巡るドラマ、のニュアンスには、似合っている感だった。(http://www.aogeba.com/http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%81%8A%E3%81%92%E3%81%■追悼・市川準監督■BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)トキワ荘の青春(’96)会社物語(’88)東京夜曲(’97)東京兄妹(’95)竜馬の妻とその夫と愛人(’02)病院で死ぬということ(’93)たどんとちくわ(’98)「buy a suit スーツを買う」

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2009/9/12  4:45

 

直木賞作家の重松清による同名小説を原作に、父親を介護する家族を中心に、死とは何かを問う感動のヒューマンドラマ。老いた父の死に直面する主人公に、本作が映画初主演となるテリー伊藤がふんする。そのほか薬師丸ひろ子や加藤武ら演技派の俳優が脇を固めている。“死”の 



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