2008/11/21

つぐみ(’90)ー追悼・市川準監督ー  日本

よしもとばななの小説「TUGUMI」('89)原作の市川作品。「BU・SU」と同様以前掘り出し物ビデオ店舗で買っていたので見直し。西伊豆の小さな海沿いの町舞台、旅館の娘で生まれつき病弱で短命宣言され、わがままに育った少女つぐみ、その周囲の人々の物語。

久方に見て、記憶薄れていた所もあるし、改めてこういう瑞々しさの作品だったのだった、という部分も割と。つぐみの従姉妹まりあ(中嶋朋子)が引っ越して大学生活を送る東京の街も、少しは舞台ではあっても、海沿いの町がメイン舞台の唯一の市川作品。冒頭、まりあの故郷を懐かしむモノローグと共に映る東京のビル街風景は、「BU・SU」でヒロイン麦子がやはり海辺の町からやってきた東京、と重なる気も。

終盤、まりあがバイトする店として、高円寺駅前の今も健在のYonchome Cafeが登場でやはりちょっと感慨、行ったのは大分前だけれど、劇中だとレストラン風の食事メニューもあるようで、こういうシックなムードだったか、と。今回店に母が渡しに来たつぐみからの手紙の宛先で、まりあの住所が阿佐ヶ谷(実存しない阿佐ヶ谷西)、と気付いたり。

舞台だった西伊豆の松崎という町、まりあが沼津とのフェリーで行き来のシーンもあったけれど、以前見た時より、こじんまりした町の印象、湘南の賑やかさとか、よりは市川作品に似合ってもいそうでも。折に夜の水際等ブルートーン、精霊流しの仄かな灯りが水面に漂ったり、つぐみの家の小さな旅館、つぐみ姉妹とまりあが浴衣で歩く祭りの夜店の並び、とか郷愁的な風景の数々。

やはり当時の牧瀬里穂が、エキセントリックでわがままでかなり皮肉屋、繊細さも秘めた多感で扱いにくいヒロインにはまり役で、浜辺で不良達から守ってくれた青年恭一(真田広之)へのぎこちなくストレートな興味、恋心。牧瀬里穂はこの同年公開だった「東京上空いらっしゃいませ」('90)で「帰れない二人」を歌っていたのも印象的だったけれど、この作品でも、掃除中の風呂場でウクレレを抱えて歌うシーン、があったのだった。恋愛絡みで不良達に愛犬を殺された時見せた、わが身を省みない、激しい復讐に向けた、でも現実的には機能しなさそうな行為。

彼女に振り回されつつ、そういうどこか軌道のずれた一途さを見守る周囲の人々が、その姿に感じる切なさ、のような感情。原作を読んだのも大分前、やはり市川作品的に、多くを登場人物に語らせる訳ではない、やや密度の薄さ、もあるかもしれないけれど、ばなな原作森田作品「キッチン」のように、そういう原作の空気、はうまく汲み取っているのでは、という感が改めて。「キッチン」と言えば、日本・香港合作版のヒロインが富田靖子だったのだった。ラストのやや意表の締め方、も、微妙に市川テイストらしい、というのか。

ブレイク前だった真田広之も、何処か流れ人風で、つぐみが無骨に投げかけた想い、感性を受け止めていく、淡々とした風貌。小さな美術館職員、という職種だったのだったけれど、やはり同じ頃の「ニューヨーク恋物語」での、NYに住む日本人学校の教師役同様、まだ野性味秘めた静かな精悍さ、という味。

中嶋朋子が、実はつぐみ役の方を熱望、という話は聞いたことがあったけれど、「ふたり」での石田ひかりの姉役とか、やはりこの人は個性、クセのある相手を適度な距離で見守り包む度量で”受け”が上手い、と改めて。以前どこかでも触れていたけれど、この作品でレアな水着姿、も。

周囲の大人達の脇役陣も、多くを語る訳ではないけれど、医者の故下絛正巳がおっとりいい味、娘つぐみへの言葉にならない困惑、苛立ち、愛情漂わす安田伸、渡辺美佐子、まりあの父役あがた森魚のムードは、以前より原作の人物の大らかな洒脱さに意外に近い気がしたり、 恭一の兄役で、さり気なく財津和夫が出ていた、というのも、改めて。

当面市川監督追悼としては、これで締めにしようと。訃報を聞いて以来、映画祭での新作「buy a suit・・」、双璧のマイベスト市川作品で手元にビデオがあった「BU・SU」とこの作品以外は、未見で近隣店舗にあった作品を追ってきたけれど、「春、バーニーズで」('06)はTSUTAYADISCUSで見かけたものの貸し出し不能状態、その他「ノーライフキング」('89)「ご挨拶」('91)「クレープ」('93)「きっとくるさ」('93)「晴れた家」('05)は見当たらず、今後入手したらその時に。

結局DVDで見たのは、「東京マリーゴールド」「たどんとちくわ」「あおげば尊し」のみ。この「つぐみ」「BU・SU]「大阪物語」「東京夜曲」「・・兄妹」等さえもDVD化されていないのは意外だった。

★11/26追記:先日本置き場で上村松園の記事の雑誌を探していたら「TUGUMI」単行本発見、手にしたのは久し振り、山本容子の装丁も懐かしい。アップ確認で休み明け連絡した出版社は、以前の中央公論社が、中央公論新社になっていた。この頃まだ「吉本」、ひらがなになったのは5年前だったのだった、と。

またネットレンタルのDMMで「春、バーニーズで」を見かけ、貸し出し可状態のようで、今までTSUTAYADISCUSだけだったけれど、入会して申し込んだら先日到着。1枚単位のスポットレンタル料TSUTAYA・・\525だけれどこちらは\480。見たけれど、感想はもう一度見てからに。(http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A4%E3%81%90%E3%81%BF■追悼・市川準監督■http://www.yonchome.com/cafeキッチン(’89)kitchen キッチン(’97)よしもとばななアルゼンチンババア(’07)BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)トキワ荘の青春(’96)会社物語(’88)東京夜曲(’97)東京兄妹(’95)竜馬の妻とその夫と愛人(’02)病院で死ぬということ(’93)たどんとちくわ(’98)「buy a suit スーツを買う」あおげば尊し(’05)東京日常劇場<憂愁編>(’91)東京日常劇場<哀愁編>(’91)

(C)中央公論新社
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