2009/1/10

コーラスライン(’85)  アメリカ

「ブロードウェイ・・」の予習に、と思って見たリチャード・アッテンボロー監督作品。やはり順序としてこの作品の方から。’75年4月にスタートしたマイケル・ベネット原案・振付・演出の同名ミュージカル舞台劇の映画化。時間が押してきて、半分位見て、昨日「ブロードウェイ・・」モーニングショーに、後で残りを、と挟む形になったけれど、やはり一部でも見ておいたので、キャラクター、披露した歌、踊り、科白等が重なって浮かんだダンサーも何人かいた。

ブロードウェイのやり手ディレクターザック(マイケル・ダグラス)が、新しいショーのために、男女4人ずつのコーラスを選考。ダグラスは見かけたのは「アメリカン・プレジデント」以来だったろうか。ステージに残った16人、そこに現れたザックのかつての恋人で名ダンサーだったキャシー(アリソン・リード)も加わって、の最終選考の模様。

「ブロードウェイ・・」でも経緯の紹介あったけれど、以前実際各ダンサーに自分について語らせる、という形のオーディションがあり、それがユニークで受け、この舞台の元になった、とのことで、個々の背景、女性ダンサーの数人は映画「赤い靴」がダンスへのきっかけ、一人は百何回も見たり、恵まれて幸福とも言えない環境の中、バレエだけは美しい世界だった、とか、

ダンサーを目指しウエイターをしながら妻子を養う苦労、ゲイだというカミングアウト、「ブロードウェイ・・」で日本人俳優高良結香が勝ち取った役コニー(ジャン・ガン・ボイド)の背の低さコンプレックス等、色んな側面がバラエティ豊か。

ダンス+歌ナンバーで印象的だったのは、黒人リチーが中心の、思春期の性体験の心情を歌った「サプライズ」。リチー役のグレッグ・バージのキレある動き、豊かな声量で伸びあるボーカルがインパクトだった。それとセクシーなビビ(ミシェル・ジョンストン)の、ダンスは上手くても容姿が難点で苦汁をなめ続け、整形して人生が変わった、とバストとヒップを強調するコミカルなパフォーマンス等。

物語的には、そういう個々の個性のアピールパフォーマンス劇に、ザックとキャシーの昔もつれた感情のアヤ、が絡んだ群像劇、という感。元恋人が選考者、という事や、キャリア的には、場違い的なオーディション舞台で、ザックに止められても、捨てられないダンスへの情熱での押しのアピールで、選考の中に、というくだり。

過去の仲が良かった2人の回想シーンも折にあったけれど、やはりそこには、ダンサーとしての純粋な激しい情熱と共に、別れてNYへ旅立ち女優を目指したものの、多忙で自分をかまえない彼に認められたい、という思いもあっての事だった、と漏らした過去からして、微妙な女心も垣間見え、ダンスと歌が中心のオーディション劇+やや大人のラブストーリー風味、という気もした。

舞台は未見、この作品も未見ではあったと思うけれど、ラストのステージシーン、タキシード+帽子スタイルでの軽快な群舞の「ONE」は、メロディーもダンサーの衣装も何処かしらで馴染みあったナンバーだった。

昨日「ブロードウェイ・・」を見たル・シネマロビーに、夏に上映作品として「サガン 悲しみよこんにちは」のポスターがあり、少し驚き。サガンは5年程前他界したかつて愛読作家で、映画化作品も「悲しみよこんにちは」('58)「さよならをもう一度」('61)等初め目に付く限りは見たのだった。

今回は邦題にはなっているけれど「悲しみよ・・」リメイク、ではなくサガン自身の伝記のようで、検索でも余りまだ情報が出てこないけれど、シルヴィー・テステューがサガンを演じるようで、どういう切り口なのか、ちょっと楽しみな作品の発見だった。昨夜「BS選 魅惑のポップススパイダース秘話、名曲探索ラ・カンパネラ」録画、「ラストラブ」保存録画。(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%「ブロードウェイ♪ブロードウェイ」http://www.bunkamura.co.jp/cinema/news/index.html

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2009/1/7

ノー・ディレクション・ホーム(’05)  アメリカ

マーティン・スコセッシ監督のボブ・ディランのドキュメンタリー。スコセッシ作品は、劇場では2年前「ディパーテッド」、DVDでオムニバスの「ニューヨーク・ストーリー」('89)以来。姿は今村監督追悼番組でが最新。

同監督の上映中の「シャイン・ア・ライト」は、気にはなったけれどローリング・ストーンズで結構好みだった「悲しみのアンジー」演奏シーンはないようで、という事もあって見送り、でも昨年ディラン題材の「アイム・ノット・ゼア」は見に行ったけれど、このドキュメンタリーは未見だった、と。3時間半の長編でDVD2枚組み、1枚目PART1は見た。

本人、縁の人々のインタビュー+昔の本人、影響を受けたシンガー達の演奏、当時の街の様子等の映像。ディランは「天国への扉」「風に吹かれて」等、私にとっては耳に残る曲が何曲かある伝説のシンガー、で、人物自身はそう馴染みなく、「アイム・ノット・・」も生粋の伝記、でなく多面的各ファクターで斬った異色作、だったけれど、

この作品でも最初の方で、ミネソタ州の田舎町に生まれ、父が電気屋経営、等という以外は、家庭や家族についての紹介はなく、冒頭本人の言葉が「”自分の家”を見つけたかった」だったけれど、余り生身の、というよりやはり音楽通しての理想の探求者、放浪者、の印象。

音楽への馴染みは、10才の時引越し先にギターやラジオ、78回転のターンテーブルがあり、そこにあったレコードの「ドリフティン・トゥー・ファー・フロム・ザ・ショア」というカントリーを聞き、違う自分になれた気がした、と。

高校卒業後街を出て、ミネアポリス、NYのグリニッジ・ヴィレッジへと渡り歩き、影響を受けた様々なミュージシャンのモノクロ映像。ウディ・ガスリー、が最も強く影響を与えたシンガーのようで、折々登場、「アイム・ノット・・」の放浪者パートで、マーカス・カール・フランクリンが演じた黒人少年の名がウディ、だったのだった。

印象的だったのは、平らに置いた(多分)ギターの一種を弾きながらのジョン・ジェイコブ・ナイルズの浪々と響く歌声、折にギターを叩くようなストロークと同時に「パッ」と強く発しながら歌うオデッタ、という独特な黒人女性シンガー等、それと、一番耳に残ったのが、唯一知っていたジョーン・バエズ。

随分久方だけれど、改めて、神々しい、という感のした澄んだ力のある歌声、何だかディランの歌唱シーンよりも、インパクト残ったかもしれない。ディランは、彼女については、フォークそのもので、圧倒された、パートナーの予感がした、等とコメント。彼女とのジョイントや、本人のディランに関するコメントもあったけれど、密接ぶりが伺えた。

流れた中、馴染みの曲は「朝日のあたる家」と「風に吹かれて」。当時、社会不安の中、「アトミック・カフェ」でもあったような、学校等で、核攻撃に備え机の下に身を隠す訓練シーンとかもあったけれど、心を和ますような、穏やかな声の美しい曲が優勢、ハーモニカを下げたディランの粗い声、は当初業界に受け入れられず、

本人は政治的には無垢に見え、実は余りよく判っていなかったのでは、と苦笑する業界人のコメントもあったりしたけれど、本人の不屈のアピールもあって、NYの人の心を代弁するような、という無骨な歌が、プロテストソング、として巷に浸透、

当時グリニッジ・ヴィレッジは、芸術家の自由な表現の場ではあったけれど、共産主義者への逆風で、暴行シーンも見られたり、自分達は赤子のようなものだった、というコメントもあったけれど、最近見た同時代の「いちご白書」での学生達が、火炎瓶、石、こん棒、座り込み、等で社会の矛盾に立ち向かうしかなかったのに比べ、ヴィレッジのシンガー達には、一応音楽という人の心に訴える武器、があった、とも思った。

ディランはある時期その旗手の一人、だったのだろうけれど、「アイム・ノット・・」のロックスターパートだったと思うけれど、その時もあったように、商業的に見られた変容振りに、ライブで、客席から罵声が飛び交い、それをいなしながら演奏、というシーンも。

当時20才頃の飄々としたディランは、「アイム・ノット・・」の6人の中では、ほとんど抽象的なファクターでの人物、という事もあるけれど、やはり、髪型とか風貌的にも、ロックスターパートのケイト・ブランシェットのイメージが一番近かった。PART1は、’65年「ニューポート・フォーク・フェスティバル」の映像までだった。


1/8追記:DVD2枚目のPART2も、そう年代が進む訳でなく「ニューポート・・」の映像も折に出て、その前後の頃の回顧。’63年のワシントン行進、多くの民衆の前で歌ったディランとジョーン・バエズ、そこでのキング牧師の「I have a dream.・・」の演説をすぐ近くで聞き、今でも影響を受けている、というくだりも。ベトナム戦争や、ケネディ大統領暗殺、逮捕されたオズワルドが撃たれた瞬間、等、当時のニュース映像も。

やはりアコースティックギターをエレキに、フォークからロックへ、という変動ぶりが起こした、反感、ブーイング。観客のみでなく、ピート・シーガーがディランのポップな歌を聞いてコンサートで斧でケーブルを切ろうとしたり、等、敬愛するミュージシャンからの攻撃までも受け、ナイフで刺されたかのようだった、というコメントもあったけれど、基本的に周囲は余り気にしない姿勢、

スタジオでの演奏時にも、日によって拍子を変えたり、と周囲が戸惑う変化ぶりや、「Don't Look Back」('67)というディランの映画を撮ったD.A.ペネべイカーが、状況に応じた変容、と指摘していた自在な適応の才、というのも伺え、

自分が「時代の代弁者」「何がしらの良心」等、社会派、とされることへの不服、見方によれば、やや照れ臭さ、の混じったかのような不本意さ、の感情は、現代の語りや、過去の、質問に苦笑シーンも少なくない、斜に構えたような記者会見、での随所に見受けられ、

ジョーン・バエズが、ディランは座り込み等、抗議運動の類には決して姿を見せず、社会的弱者の気持ちを理解していないと、あんな曲は書けないけれど、彼は、その中心的存在にはなりたくなかった、と、説明、

でも、とても複雑な人で、彼を理解しようとしたけれど諦めた、等とも語り、最も密接なシンガー仲間でさえ、そう言う、捕え所のなさ、も伝説の所以、かもしれないけれど、自らプロテストシンガー、と認め、それも確かにある真摯な一面であっても、そのファクターだけに留まらない、多面性を持ち合わせ、音楽面でも活動でも、レッテルに縛られず自由を求めたい、という意識が強かったシンガー、という感触も、「アイム・ノット・・」と合わせて改めて。

バエズが、彼の歌は、ドアも壁もなく、彼を信望する人達には、心の奥底にあるものに直接訴えてくる、と。それはやはりあるファン層にとって、理屈抜きにそういうものなのだろうし、私にはやや時代も機会もずれた、感だけれど、抑えた照明の場所、黒のジャケット姿で淡々と語る67才の現代の風貌、初めてじっくり本人を見たけれど、余りカリスマ感、というより変動する時代の中自分を泳がせてきたシャープな感性、という印象だった。

ラストは、ライブ映像〜エンドロールにかけて「Like a Rolling Stone」上から11、12番目「風に吹かれて」「Like a・・」の歌詞・訳詞)、ヒットチャート表で、1位がビートルズ「Help」、2位がこの曲、というシーンもあったけれど、タイトルからして、この作品でのディランというシンガーの象徴、という感もした1曲だった。(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%http://www.imageforum.co.jp/dylan/http://www.bounce.com/news/daily.php/10027/ETV特集 今村昌平に捧ぐニューヨーク・ストーリー(’89)ディパーテッドアイム・ノット・ゼア

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2008/12/20

ハロー・ドーリー!(’69)  アメリカ

「WALL・E/ウォーリー」劇中で使われていたジーン・ケリー監督作品。近隣店でDVD在庫見かけたので。原作はワイルダーの「結婚仲買人」、ブロードウェイミュージカルの映画化。ウォーリーが住処の倉庫で、お気に入りビデオとして見ていて、そこへやってきたイヴも見入ったりしていた作品。

結婚斡旋業の未亡人ドーリー役はバーブラ・ストライサンド、ひたすら「追憶」('73)がインパクト。今年春ドラマ版「眉山」でバーブラ歌入り曲「追憶」が流れ、やや鼻白む感あったのだった。それより4年前の出演作のようだけれど、さすがの声量と歌唱力、やはり正統派美人、という訳ではないけれど、コケティッシュ+したたかさ、の女っぷりヒロイン、ではあった。

飼料工場経営者の無骨なホレス(ウォルター・マッソー)に相手の紹介はしたものの、自分が彼に好意を抱くようになって、その縁談話の邪魔をするため、彼の店の都会や恋に憧れる若者達に手を廻したり画策し、恋の取り持ち役もしながら、奔走するコメディ。

舞台は1890年ニューヨークとその郊外の海沿いの街で、馬に引かれてゆっくり走る市街電車、等も背景に見えた。バーブラ達が身にまとう、腰が細くスカート部の広がった色とりどりのドレス、飾りの多い帽子、洒落た小振りな日傘、踊っている時に見えるぺチコート等レトロなファッション、幾つかの恋模様も絡んで、賑やかな歌+ダンスの作品だった。

「WALL・E・・」で映っていた、向かい合うカップルは、バーブラとウォルターだったか、ウォルターの姪と恋人の画家達の方だった気もするし、両方のシーンがあったのか、はっきりと記憶と重ならない。

「WALL・E・・」劇中、「バラ色の人生」が流れたルイ・アームストロングは、終盤レストランのシーンで、オーケストラの指揮者役で登場、渋いダミ声で、バーブラとデュエットしていた。歌ったのは、ミュージカル版の方の挿入曲としてヒットしたらしい「ハロー・ドーリー」、これはラストの教会の結婚式のシーンでも皆が合唱、エンドロールでインストだけが流れていた。昨夜「ラスト・プレゼント」保存録画。(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%83%BC%WALL・E/ウォーリー眉山(’08)

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2008/12/16

ストレイト・ストーリー(’99)  アメリカ

ニューヨークタイムズに掲載された、実話を元にしたデヴィッド・リンチ監督作品。数年前期間限定ビデオ店舗で買っていて未見だった作品。主人公は73才の老人アルヴィン・ストレイト。10年間仲違いしていた兄が脳卒中で倒れた、と聞いて、アメリカのアイオワ州の町から500キロ離れたウィスコンシン州の町まで、小型トラクターを引く芝刈り機に乗って会いに行く、という物語。

日本語吹替え版だったのが惜しかったけれど、冒頭、田舎町でアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)と一緒に暮らす娘ローズ(シシー・スペイセク)の間柄が、日本語だと「とうちゃん」と呼んでいるのが余り違和感ないざっくばらんなムード。リチャード・ファーンズワースは、白髭をたくわえて、頑固さ+人情味のしゃがれた味わい、「赤毛のアン」のマシュー役だったのだった。シシーはどうも、やはり目の辺りが大貫妙子似、という感がした。

車の免許もなく、腰が悪いので歩くのに両手に杖が必要、という身でありながら、自分一人で行かなければ意味がない、と頑固なこだわりで、まず家の芝刈り機で出発するものの、途中で故障して、トラックに載せてもらって舞い戻り、

中古芝刈り機を買って再出発、時速8キロのスローペースで、のどかに広がる緑や黄金色の畑の中の道を行くのんびり旅、途中で出会う人々は、奇妙な旅人の老人に大体好意的、ヒッチハイクしていた身重の訳あり女性と、焚き火で焼いたソーセージを食べながら、家族観について話したり、自転車レース中の若者達に混じって歓談したり、旅の終盤、病人として兄を知る神父に出会い、「カインとアベル」のようで、と、その仲違いについてや和解したいという思いを語ったり、

途中トラクターが坂道で故障、修理の間いた町で、誘われて近所の老人とバーに行き、互いに残る戦争の心の傷跡を語り合い、戦争後は、それを忘れたいため酒びたりになった、とか、射撃の名手だったけれど、夜敵と間違え味方を射殺してしまった、という自分だけが知る悔恨の秘密をこの老人に打ち明けたりするシーンが印象的だった。

途中ミシシッピ川を渡るシーンがあったけれど、馴染みのように茶色でもなくそう広くもない川幅、後で地図で確かめたら、アイオワ州、東隣のウィスコンシン州は五大湖の西側で、かなり米北部だけれど、ここが上流部で、延々河口のニューオリンズまで、大陸縦断して続いているのだった。

ラスト、やはり歩行器を使って家から出てきた兄との再会自体は、「あれに乗ってきたのか」とポツリという以外余り言葉もなく、見つめ合う静かな和解。やはり、内面的にはその行動(への決意)が全て、その実際の道中を描く、ややユニークなゆったりロードムービーだった。

リンチ作品は「エレファントマン」、それと現実と幻想の交錯、の印象、昨年放映とDVDで見た「マルホランド・ドライブ」が最新だったけれど、この作品では、そういう部分は、嵐の夜の光の映像とか、シャープな印象はあったけれど、

幻想的というと、アルヴィンが旅立つ前の夜、ローズが眺めている庭で、過去の事故で引き離されている息子、らしい少年が、白いボールを取りに来て、闇に消えて行く、というシーン位だった。やはり覚えある中では、「エレファント・・」は別枠として、この「ストレイト・・」が一番馴染みやすいというか、好感持てた。

それと冒頭とエンドロールが星が散らばる宇宙の映像、劇中でも、アルヴィンがローズや行きずりの女性と満天の星空を見上げる、というシーンがあったけれど、以前見かけた夜空のイラストの本の表紙と印象が重なり、村上龍がこの作品を元にした小説を書き下ろしていて、未読だったのだった。村上龍は、映画化を聞いた「半島を出よ」が上巻途中のまま中断、だったけれど、やはり内容的にはこの「ストレイト・・」の方が、断然とっつきやすそうな気がする。(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%マルホランド・ドライブ(’01)ストレイト・ストーリー(’00)

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2008/11/30

いちご白書(’70)  アメリカ

先週水曜放映録画を見たスチュアート・ハグマン監督作品。子供の頃シングル盤を買った「「いちご白書」をもう一度」以来、ずっと気にはなりつつ未見だった作品。この曲での「いちご白書」という映画のイメージ、がある種神聖で、見るのを無意識に避けていた、という面もあった。遅まきながら、ではあるけれど、この放映を機にやっと。

原作はジェームス・クネンの体験記、’68年アメリカのコロンビア大学での学園紛争、その渦中にいたボート部の学生サイモン(ブルース・デイヴィソン)と女子大生リンダ(キム・ダービー)との恋愛、学生運動の高揚を描いた青春物語。

冒頭と最後に流れたバフィ・セント・メリーの「サークル・ゲーム」はいつか聞いて知っていた。ジョニ・ミッチェルの作った曲で、本人バージョンもあったのだった。この明るいテンポにのせて、無常な時の流れを歌う曲が、微妙な切なさ的に、絶妙にマッチ。その他挿入曲も、女性シンガーでの「天国への扉」、その他曲名は浮かばないけれど聞き覚えが、というメロディがちらほらと。

作品もコロンビア大学かと思ったら、サンフランシスコ舞台だったのが意外、後でサイトで大学はカリフォルニア大学のバークレー校がロケ地、と見かけた。コロンビア大学は以前N.Y.の旅で立ち寄って、作品は未見でも、ここが「いちご白書」の舞台、という感慨もあったのだった。撮影許可が下りなかったそうだけれど、映画の舞台、ではなかったのがやや残念。SFも別の時行ったけれど、バークレーまでは足を伸ばさなかった。

大学当局が、近所の公園に予備将校訓練ビルを建てようとした事が発端の、学生達のストライキ。学校に立て篭もり、熱く語る学生達、壁にはチェ・ゲバラの大きなポスターが何枚も。折に起こる警官達との衝突。最初は見かけたリンダの方が気になり、興味半分で参加したサイモン、2人の間に生まれる淡い恋、運動に対しても、大学の腐敗、アメリカ自体の状況を憂えていながらも、破壊活動への嫌気も示し、距離を置いた態度。

でも友人が暴行を受けたり、という体験の中、警察は戦争屋じゃなく、平和を叫ぶ市民を暴行している、等と憤り、次第に理不尽さへの意識が高まっていく変化。でも彼らの活動自体、高揚を楽しんでもいるような、一種の若さの中のお祭り、それでも純粋な正義感という筋を内に持つ健気な行動、という印象があったけれど、

終盤、学生達が講堂で幾つもの輪を作って座り込み、床を叩きながらジョン・レノンの「Give Peace a chance」を歌うシーンは、何だか最近の「アクロス・ザ・ユニバース」での「Let It Be」等よりも、臨場感あってインパクト残り、深く響いてきた。

乱入してきた警官が放つ白い催涙ガス、殴られ、棒で叩かれながら引き立てられていく学生達、容赦ない、露骨な”夢”の終わり、血に染まったリンダの顔、そして警官を振り解いて階段から飛ぶサイモン、のストップモーション。このラストは、「いちご白書をもういちど」('76)という本で、知ってはいたのだけれど、久方に何か、熱っぽく込み上げて来るものがあった。実際こういう作品だったのだ、と。

ドキュメンタリータッチでもあり、キム・ダービーの無邪気な瑞々しさ、メガネのブルース・デイヴィソンの、はにかんだような笑顔と若い一途さ。やはり日本でも学生運動を体験した世代だと、この作品に、何処かリアルな感慨あるようで、私はその後の世代だけれど、前から、そういう時代に生まれ、傍観するのではなく学生運動に加わってみたかった、等と思ったりする。

そういう中で、もしかしたら、挫折もあったとしても、もっと違う自分になれたのではないか、とか、もっと真剣な恋愛も、出来たんじゃないか、とも。それは結局蜃気楼を追うようなもの、かも知れないけれど、青春の中で価値がない、とも思えない、何だかそういう苦め甘酸っぱさも残った作品だった。

単行本「いちご白書をもういちど」は、曲の提供者ユーミンと歌ったバンバン編著の、曲と同じ頃の本で、いまだに手元にあり、レコードはもうないけれど、曲自体、やはり改めて懐かしく、「学生集会」とか「雨に破れかけた街角のポスター」とか、ある時代のある層の青春(の風景)、をユーミン的に斬った名曲の一つだった、と。

今回、ばんばひろふみの大人しい印象の相方の名が何だったろうと、検索していて、今井ひろし、と判ったけれど、この曲のブレイク前、高山厳もバンバンのメンバーだった、とは初耳だった。「いちご・・」の一発ヒット、だったけれど、次の「霧雨の朝突然に」も買い、サビのフレーズが、あるクラシックの曲に似ていた覚え。あとシングルはさだまさしの「縁切寺」もあったのだった。また検索中、全く内容は関係なさそうだけれど、同名「いちご白書」という小田茜、安室奈美恵等が出ていたドラマがあった、と見かけたり。

本は、おそらくユーミンが書いたらしき短編小説、後は筆者名が出ているのは東京キッドブラザーズ東由多加のみ、その他バンバンの2人以外にも複数筆者はいるようだけれど、そこら辺は不明、色々と「いちご白書」もたまに絡んで、60〜70年代の頃をラフに回顧しているエッセイ集。

あとがきで、「いちご白書」再映を見たユーミンが、「当時としては、ずいぶんソフトだと感じていたものの、やはりニューシネマの雰囲気が色濃く漂い、今となっては”あせた”という感はまぬがれず、内心心配でした。でも、ラストシーンになった時、私はしばらく忘れていた本当の感激を、本当の涙を取り戻せた気がしました。」等とコメントしていた。

本の中に、「「いちご白書」をもう一度」という映画を作りたい、という文章があって、主役は泉谷しげる、相手役女の子は「同棲時代」で脱ぐ前の由美かおる、監督は黒木和雄さんか藤田敏八さんで、68〜70年代の青春を!ということだけれど、

冒頭の(多分)ユーミンの小説は、昔の知り合いの男女が大学で先輩後輩として再会、カップルになり、歌の通り、授業を抜け出して「真夜中のカウボーイ/いちご白書」を見に行き、ラストで涙ぐむ彼女、正月に急に冬の海が見たい、と言い出し、2人で始発で茅ヶ崎に行ったり、等のくだりが印象的な純愛モードで、彼の方の就職活動もあったり、自然に離れていくのだけれど、別れ際の駅での切ない描写とか、少し読み返してみたけれど、やはり結構好ましい珠玉作、の感触。

小説も知る限りこの1編だけ、本人は小田さんや桑田佳祐のように映画を作る、という意志はなさそうだけれど、昭和回帰ブームの今日、曲自体の色は霞んでいたけれど「22才の別れ」映画化もあったりしたし、先日のこの「いちご白書」放映を機に、誰かが触発され、(出来ればこのユーミン小説を原作に)映画化企画、とか持ち上がらないだろうか、等とふと思ったり、ひっそり深夜放映でもあったし、まず有り得ないだろうけれど。でも一応配役を考えてみたりして、どうも誰もしっくりこず、あてがうなら誰かイメージの真っ白な新人カップルで、と。

そういう曲や本の絡みもあって、何かと思った作品ではあるけれど、タイトルの「いちご白書」は、学生運動に対して大学当局が、それはいちご(”赤”の共産主義色のニュアンスも)を欲しがるようなものだ、という声明から、という事を、劇中の科白で今更かもしれないけれど知ったのだった。そう言えば「アクロス・・」で「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が流れ、絵の具や苺の赤が散乱したりして、ベトナム戦争の悲惨さを現すシーンだったけれど、そういう含みもあったのだろうか、等と今になって思い返したりもした。木曜「風のガーデン 第8話」昨夜「美の巨人たち ドガ」等録画。(http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD754/アメリカの旅<5>いちご白書をもう一度(’75)

★12/5追記:この原作はどんなものか読んでみたい、と思い、角川文庫になっているようで、余り本は増やしたくないし、図書館で数日で取り寄せが出来て今日手元に。当面「ホームレス中学生」があり「クライマーズ・ハイ」も途中のままなのだけれど。コロンビア大学の学生だったジェームス・クネンが19才の時に書き、その後の著作はないようだけれど、当時若者のカリスマ的存在になった、と。背表紙に写真と短い紹介があり、’48年生まれで、今60才位のはず。

本文の後に、作品中、現時点から見れば差別的で不適切と思われる語彙・表記があるけれど、作品が書かれた時代背景や作品の持つ文学性を考慮し、原文のままとした、と但し書き。昨夜「風のガーデン 第9話」録画。(http://www.amazon.co.jp/%E3%81%84%E3%81%A1%E3%81%94%E7%99%BD%E6%9B%B8%

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2008/8/26

俺たちフィギュアスケーター(’07)  アメリカ

昨年公開のウィル・スペック、ジョシュ・ゴードン監督作品。ライバル同士のフィギュアスケート選手が、男同士でペアを組んでの奮闘ぶりを描くコメディ。公開時余り気にならなかったけれど、少し前に見た「スキージャンプ・ペア」の類似で目に付き、先日続いて見た作品。

こちらは「スキー・・」とは違い、物理的には可能だけれど、一応男役ワイルドなウィル・フェレル+女役優雅な演技のジョン・へダーの、やや奇妙でダイナミックな異質ペア。ジョンは「バス男」での飄々とした印象が残っていて、ウィルは「奥さまは魔女」でニコールの相手役だったのだった。今回少しジャック・ブラックのような破天荒ぶり。

犬猿の仲だった2人の対照的キャラクターが、乱闘で追放され、競技に出るため歩み寄りながらのラフな友情、練習、それにウィル・アーネットとエイミー・ポーラー夫婦が演じる悪役兄妹ペアの陰謀、その妹役ジェンナ・フィッシャーとジョンの波乱気味の恋、等も絡んで、漫画的展開ではあるけれど、最後までテンポ的にはそうだれず見られた。

フィギュアは以前割と観戦が好きな方、最近余り詳しく見ていないけれど、やや前の時代、という感もしつつ実在の選手名もちらほら科白の中に出て、一時話題だったトーニャ・ハーディング関係者によるナンシー・ケリガン襲撃事件、等も持ち出され、ウィルに口説かれるシーンに少し登場のケリガンが、似ている、と思ったら、本人が出演していたのだった。

その他、ウィルの女性武勇伝の思い出で刺青の印と共に得意げに、オクサナ・バイウル、ミッシェル・クワン等の名を出していたのも、妙に可笑しかった。オクサナは多分オリンピックで、いつも練習で失敗するジャンプが本番だけ成功、と解説者が言っていて、全身で喜んでいた姿が印象的、それはちょっと検索したらリメハンメルのようで、ケリガン襲撃事件等もその頃だったのだった。

特典映像で、2人はジョンがローラースケート経験があった程度、特訓したようで、出演者達がワイヤーに吊るされながら、の撮影風景もあったけれど、やはりハイライトはラストの演技、悪役兄妹ペアのJ.F.ケネディとマリリン・モンロー役の曰くありげな演技もあったけれど、ウィルの忍者のような氷上への登場、男同士ならではのスケート靴が火花を散らしながらの荒技、策略でのケガにもめげず、フィギュア版ワイヤーアクションというのか、空中回転の大技アイアン・ロータス。何だかファンタジー的なラストシーン。

同じ非現実的ペアでも「スキー・・」とはテイストが違い、実写だし生身の奮闘、波乱もあるラフな青春もの、という感だけれど、やはりバカバカしくも真剣な2人のペアぶり、がちょっと和みで見ものの作品だった。(http://www.amazon.co.jp/%E4%BF%BA%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%83%95%E3%82%http://oretachi.gyao.jp/

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2008/8/24

アクロス・ザ・ユニバース(’07) AOLブログトークスレッド  アメリカ

「アクロス・ザ・ユニバース」

 スレッドマスター:- BLOG
アクセス数:1087
投稿日時 2008/8/24 13:00:14
更新日時 2008/12/28 12:00:10

上映中の「アクロス・ザ・ユニバース」(←関連サイトです)は、60年代アメリカ舞台、ビートルズの33曲をフィーチャーしたミュージカル、の青春物語とのことで気になる作品で、いずれ見てきたいと。

ビートルズはスクリーンでは、4年程前ビートルズフィルムフェスティバルで、「ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!」「HELP」「LET IT BE」を見たのが最新、リアルタイム世代ではないですが、何枚かアルバム録音、折につけカバー含め、懐かしい曲、馴染みある曲はあり、

この作品は女流演出家ジュリー・テイモアが監督、主演はエヴァン・レイチェル・ウッドとジム・スタージェス、その他ジョー・アンダーソン、デイナ・ヒュークス等、

リバプールからアメリカへ父を探しにやってきた青年の、そこで出会った友情、恋等の青春模様が描かれ、ベトナム戦争の影も見えたりするようですが、やはり、各曲が物語の中で、どう使われているのかというのが楽しみです。

ご覧になった方の感想、批評、コメントある方等、自由にどうぞ!(投稿でもメールでも結構です)
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3 >2 コメント有難うございます

投稿者:Autumn(room) 投稿日時 2008/12/28 12:00:10
更新日時 2008/12/28 12:00:10

メルさん、こちらの方にもコメントを有難うございます。
メカの相性が良くないのか、このスレッドはどうもずっと、gooブログとは、TBを受けられても、こちらから届かないんです^^;。

「Strawberry Fields・・」の所は、他にも水中シーンとか、斬新な映像ありましたけれど、苺と絵の具の赤+戦争を絡めて、目と頭にインパクト残ったシーンだったです。

この作品はビートルズへのノスタルジー、もあって見たのでしたけれど、各俳優がそれぞれ持ち味で歌っていて、今聞いて、ビートルズの各曲が、ちょっと新鮮だったですね。



2 TBではご迷惑をおかけしました〜

投稿者:メル 投稿日時 2008/12/28 10:37:49
更新日時 2008/12/28 10:37:49

コメント、どうもありがとうございました♪
TBではお手数をおかけしてしまって、申し訳ありませんm(__)m
時々なぜかうまくいかないことがあるようで・・理由は謎ですが(^_^;

で、この映画ですが、目一杯楽しませてもらいました^^
私もストロベリー・フィールド・・の時のあの映像がとても
印象的でした。
歌詞がそのまま物語になっていくところ、俳優さんたちの歌の上手さ等々
たくさん楽しめる要素がちりばめられてて、そういうのを見つけるのも
楽しかったです♪



1 ビートルズが綴る青春模様

投稿者:Autumn 投稿日時 2008/9/4 16:00:16
更新日時 2008/9/4 16:00:16

昨日見てきましたが、冒頭の海岸シーンの主人公ジュード役ジム・スタージェスの「Girl」から始まって、エンドロールの「Lucy In The Sky With Diamonds」まで、やはりビートルズの懐かしい曲の数々が、各俳優の歌声での目新しさもあって、散りばめられた青春ミュージカルで、

特に耳に残ったのは、恋に落ちたエヴァン・レイチェル・ウッドとジムが、互いへの思いを込めてしっとり歌った「If I Fell」や「Something」、ジムとジョー・アンダーソンのNYでのアパートの大家役デイナ・ヒュークスが歌い上げた「Don’t Let Me Down」等。

エヴァンは「ママが泣いた日」でジョアン・アレンの娘役の一人だったのでしたが、歌声も伸びやか、ジムは面差しがややポール・マッカートニー似、とも思いナイーブかつ線太い印象。デイナはロックシンガーで、ミュージカルでジャニス・ジョップリン役等もしたことがあるそうですが、貫禄の歌いっぷり。ビルの屋上での演奏は、「Let It Be」で「Get Back」等歌ったビートルズの演奏シーンが重なったりも。

「Strawberry Fields」と、映像的に苺やジムの絵具の赤をミックスさせて、ベトナム戦争の暗澹さ、を表現したり、ジムがリバプールに戻りふさいでいた時、心を開かすような「Hey Jude」「Across The Univers」等の曲の使い方、も印象的。

ストーリー的には、自分の存在を知って欲しい、と初めて父に会いにアメリカにやってきた主人公の、アメリカでの青春の高揚と波乱。折に色彩処理した斬新な映像+ビートルズ曲の自由、切なさ、やるせなさ、怒り、愛情等織り交ぜて、60年代の、若者の自由な空気と激しい反戦運動の狭間で、価値観をつかめず、揺れ動く様子もありましたが、

後味的に、登場人物の心情自体は、今一つ底辺からじんわりとは伝わって来ず、確かにビートルズミュージカル、その時々の心情を曲が代弁、という趣で、つぎはぎ的になるにしても、骨格の科白は弱かった気がしました。が、ビートルズ、というノスタルジーと、改めてその多様な広がりも味わった、ユニーク斬新作という感触でした。(修正再投稿)
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2008/8/9

スノークイーン 雪の女王(’02)  アメリカ

日本では未公開のデヴィット・ウー監督作品。先日見たアンゼルセン原作「雪の女王」の実写版で、DVD発見したので。2話構成で割と長編、やや多忙で少しずつ。アニメ版で幼い少年少女だった主人公の2人は、ここでは10代後半、北の町のホテルの娘とベルボーイ、宿泊にやって来た謎の美女(雪の女王)に彼が連れ去られる、という設定。

CGも駆使、素朴な童話、というよりアドベンチャーテイスト、序盤はこじんまりした北の町舞台に、若い二人の仄かなラブロマンス風、でもカイの行方を追うヒロインゲルダの行く手は、アニメ版のように周囲が好意的、というより波乱の旅、雪の女王の姉妹として、春、夏、秋の女王が登場、アニメ版の善良な魔女、に当たる春の女王も、花に囲まれたメルヘン的世界の母性色がより強く、彼女を引き止めておこうとするやや不気味な威圧が強かったり、

アジア風宮殿の夏の女王、山賊の娘の母である秋の女王も、それぞれの形で、彼女を軟禁、監禁しようとするし、アニメ版ではゲルダの純真さに心を動かされ協力した山賊の娘も、この作品ではもっと頑なで、ゲルダが彼女から取っ組み合いバトルで老トナカイと逃げ出したり、という様。

カイの行方を知りたい、と川に靴を流したり、というシチュエーションは同じでも、自分の身も投げ出し流されただけで、川が彼女の役に立ったか微妙で、好意的だったのはそのトナカイや、手品師の少年位で、やはり華やかな映像にしろ、素朴なソフトさのアニメ版とはどうも別物。原作はアニメ版に近そうだけれど、実際の邪魔や波乱も多かったゆえ、それでも旅をあきらめないゲルダの一途さ、という感触はこちらの方が余韻あった。

女王の雪の住まいがゲルダのホテルに繋がっていたり、太眉の朴訥なジェレミー・ギルボード演じるカイが、ゲルダの純真さと女王の冷たい魅力の間で揺れ動く様子も、魔力ゆえ、とはいっても日常の中でふと冷たく危険なものに魅かれる人の心のアヤ、のようなものがアニメ版よりは生々しく、また女王自身にも意外な救いが用意されていたり、とことん悪の化身、という描き方ではなかった。

「グレイスランド」で見かけて以来だった、雪の女王役ブリジット・フォンダの魔力的美貌に対して、ゲルダ役チェルシー・ホッブスの若々しい魅力、また成り行きを見守るホテルの古株従業員女性役ワイダ・キャノンが、メリル・ストリープのややくだけたような、渋い味わいで印象的だった。(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%雪の女王<新訳版/訛の兵隊(’57))

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2008/7/5

ミリキタニの猫(’06)  アメリカ

日本では昨年公開のリンダ・ハッテンドーフ監督作品。今日赤坂区民センターホールで、秋の東京国際映画祭のプレイベントでこの作品上映会、招待券が来ており、丁度見て来られた。NYの路上画家、日系人ジミー・ミリキタニの姿を追ったドキュメンタリー。一昨年同祭の日本映画・ある視点部門賞で最優秀賞だったそうで、公開時やや気になった作品。

当初、ラフな画風的にはそう好みではない、と思ったけれど、見ていく内に、ミリキタニ氏のキャラクターに馴染む、というか慣れてくるにつれて、絵にも味わいを感じてきた。路上のテーブルで製作、悠々と日々を過ごす中、9.11テロが起こり、さすがに路上にいられず、ハッテンドーフ監督宅に身を寄せることになり、

TVで事件を静かに眺める眼差し、描いたWTCの絵に、故郷の広島の原爆ドームの絵と同じような真っ赤な色、立ち込める黒い輪郭の煙。テロ自体については語られることがなかったけれど、NYでの彼の路上生活の中の出来事として、「その日」の喧騒も、まさにドキュメンタリーで映し出されていたのが、印象的。

居候生活、ではあるけれど、同監督が遅く帰宅すると、女性のする事じゃない、と説教したり等、という飄々とした憎めない物腰に、たまに笑いが起こったり。モチーフによく猫を描いていてタイトルにもなったようだけれど、同監督宅の猫もよく画面に登場していた。

一筋縄でいかない反骨精神、絵は5才から独学で始め、170人に絵を売った、と胸を張り、画家としてのプライドを持つこの人物と、同監督の、アーティスト同士、という部分でも、程好いバランスの人間関係的な部分が、そのまま作品になった肌身の温かさ、のような感触も。

また戦時中の日系人収容所での経験が、かなりしこりになってか、絵にも描かれていたけれど、言葉の端々にアメリカ、という国への反感、反動的に日本への愛着、鼻歌も日本の歌ばかりだった。

当時の収容所は「ヒマラヤ杉に降る雪」で描かれていたり、チャップリンの秘書だった高野虎市紹介番組等で触れられていたけれど、同氏はそこで姉と生き別れたまま、またその後、料理人という職を得ながらも、雇用主が死亡して結局路上生活に、という経緯も、当時の日系人の波乱の状況の断片が伺えたりも。終盤収容所の慰霊ツアーで想いのしがらみが溶けていく様子、エンドロールでの短くさり気ない、姉との再会シーンも目に残った。

’01年撮影当時80才、昨年70年ぶりに日本に帰省したり、いまだ元気なようで、赤いベレー帽に髭の風貌、波乱の人生を秘めて、陽気に淡々と過ごす、最近見た中では「胡同(フートン)の理髪師」の90才の老人等もいたけれど、朗々とした活力ぶりも。異色画家にスポットの作品、ではあるけれど、予想よりは、彼の周囲の人々含め、ほっこりとした人間味の余韻の味わいだった。(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%82%http://www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani/

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2008/5/23

マイケル(’96)  アメリカ

4月末放映録画を見たノーラ・エフロン監督作品。シカゴのタブロイド紙記者達と、アイオワ州のモーテルに住み着いていた風変わりな天使との、ロマンティックコメディ。

アイオワ州の広々した土地舞台、ベテラン的渋みだった「ママが遺したラブソング」以来のジョン・トラヴォルタの、余り天使らしくない天使。いかつい身体にとって付けたような白い羽、無愛想な態度、コーンフレークに山盛り砂糖をかけて食べ、煙草を吸い、セクシーダンスしたり、ふと格言めいたことをつぶやいたり、規格外天使、という感。

彼を記事に、という思惑ある3人との、ラフなロードムービー的な所もあって、カントリー曲も作る、という天使研究家アンディ・マクダウェルが、店で歌声披露のシーンも。彼が縁で記者ウイリアム・ハートとアンディが恋に落ち、一旦離れた二人に、駅の看板のミケランジェロの指と指が触れ合う絵のMichelangeloのつづりを、少しずつMichel(マイケル)→angel(o)(エンジェル)と読ますような演出も。3人が連れていた車に轢かれてしまった犬を蘇えらせたり、という一応天使らしき役割も果たしたり、ほのぼの感もあるやや風変わりファンタジーコメディだった。(http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD30385/index.html

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2008/5/20

プロヴァンスの贈りもの(’06)  アメリカ

一昨年公開のリドリー・スコット監督作品。ロンドンのやり手ビジネスマンが、南仏プロバンスの亡き叔父の残した家とブドウ畑で、人生を見つめ直すドラマ。「エディット・ピアフ・・」のマリオン・コティヤール出演、ということでも気になっていた作品。

主人公ラッセル・クロウが、緑柔らかな田舎のプロバンスにやってきて、携帯片手で会社とやり取りの忙しない日常から、徐々に、幼い頃の叔父との土地やワインや様々な思い出の温もり、出会った女性(マリオン)の魅力にもひかれて、土地に愛着を持っていく様子。モチーフのワインの熟成が重なるようでもあって、紆余曲折ありつつも割と自然に描かれていて、

マリオンは「エディット・・」の時の、波乱のシンガーとしての、ある種張り詰めたムードやメイクでの老けた姿とは違い、伸び伸びと土地の大人の女性を演じていた感じ。大らかな叔父役のベテランアルバート・フィニや、ラッセルの子供時代を演じたフレディ・ハイモアもいい味だった。(http://jp.franceguide.com/home.html?NodeID=1129&EditoID=88417「エディット・ピアフ 愛の讃歌」

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2008/5/13

北極のナヌー(’07)  アメリカ

先日新作DVDリリースのアダム・ラヴェッチ監督作品。一頭の白熊を中心に、動物達の姿を追った北極のドキュメンタリーで、フランス発かと思ったら、「アース」「皇帝ペンギン」アメリカ版スタッフ制作、公開時気になった作品。

一昨年の「ホワイト・プラネット」を、白熊とセイウチに絞ったような内容。白熊のナヌー、セイウチのシーラ(と名付けたのはスタッフかと)の子供時代から成長していく姿を追い、「ホワイト・・」よりピンポイントで展開を追っていき易かった感じ。南極でのうごめくペンギンやセイウチ達とは違い、親子単位以外では、単独行動で日々獲物を求めて過ごす白熊の、傍目に孤独な姿、というものも。

弱肉強食のシビアなシーンは少なく、可愛さある小熊から徐々に逞しくなっていく身体、ナヌーと母熊が弱った弟熊を暖めようと寄り添ったり、一人立ちで別れの時、去っていく母熊の姿をじっと見つめていたり、また成長後、自分も双子の小熊を生み、引き連れて歩む姿、等、動物の親子愛、一頭の生のドラマ、的な部分も。

他の動物で印象的だったのは、自在に海中に潜る、ハシブトウミガラスという”飛んで泳げる”鳥の姿。それとやはり温暖化で、年々氷の世界が狭くなっていて、動物達への影響、このままでは後数十年で北極大陸が消滅、という警告のメッセージは「ホワイト・・」「アース」等と同じ。見たのは字幕版だったけれど、日本語版はナレーション稲垣吾郎のようで、手嶌葵のテーマ曲はフルコーラス聞いてみたい気も。昨夜「ワシントンDCの陰謀」録画。(http://www.amazon.co.jp/%E5%8C%97%http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2「アース」「ホワイト・プラネット」

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2008/4/28

星の王子ニューヨークへ行く(’88)  アメリカ

3週間前金曜夜放映の録画を見たジョン・ランディス監督作品。アフリカのある王国のプリンスが、理想の花嫁を求めてN.Yにやって来て、巻き起こす騒動を描くコメディ。

ジャングルの中の豪華な宮殿から、N.Yのクイーンズ地区へ、側近と共にファーストフード店で働くプリンス、先日の「魔法にかけられて」のアフリカ王子版、のようでも。祖国では羊飼いだと装って身分を隠し、生身の自分を認めて欲しい、という王子の人柄に魅かれる店の主人の娘、後半彼が超金持ち、身分が判った途端、掌を返したように優しくなった主人、というシニカルさ、も少し。

プリンス役若い頃のエディ・マーフィは「ドリーム・ガールズ」以来、今回歌唱シーンはなかったけれど、棒を使った身軽なアクション、宮殿での祝いの席の、エキゾチック衣装の女性達のダイナミックなダンスシーンも。

N.Yが舞台、でも冬の質素なクイーンズ地区の街並み、この作品公開は私がN.Yに行った2年前だったようで、この界隈はアメリカに到着時、夜と早朝空港〜ホテル間タクシーで通った位だけれど、どことなく懐かしさ。劇中まだWTCの姿ある対岸の夜景、当時の落書きだらけの地下鉄、等の背景。そこにエスニックな貴族姿の王一行がやって来る姿もミスマッチ、やはりお伽の国+現実世界、一時和みのファンタジーロマンスだった。昨夜「みゅーじん 国府弘子」録画、「Mラバ aiko」一部オンタイムで。(http://www.amazon.co.jp/%E6%98%9F%E3%81%AE%E7%8E%8B%E5%AD%90%E3%83%アメリカの旅<5>

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2008/4/14

シッコ SiCKO(’07)  アメリカ

先日新作DVDリリースのマイケル・ムーア監督作品。アメリカの医療システムの矛盾に斬り込んで行くドキュメンタリー、ムーア作品は初期のもの以外追ってきたので気になっていた作品。

カナダ、イギリス、フランス、キューバ等各国に比べて、いかにアメリカで、国民の医療負担状況が酷いものか、を浮き彫りにしていく内容。利益追求の保険業界のツケが、国民の保険への入りにくさ、支給の受けにくさ、また治療の受けにくさ自体に影を落としている実情の追求。

保険加入出来なかったため、子供や夫を亡くした人々の声、病院からタクシーで寝巻きのまま路頭に置き去りにされる病人の姿、9.11での救助ボランティアで、呼吸器をやられたり、精神的影響での歯軋りで歯を蝕まれた人々が、災害基金への登録が出来ない実態等、に対して、他国での一般人の医療費の負担の軽さ、楽さを表わす声。

同様に国民皆保険制度を提唱しながら、隣国カナダでは成功、英雄とされるトミー・ダグラスに対して、アメリカではヒラリー夫人がバッシングを受け、案を封じ込められた、という対比も印象に。

9.11救援者達の呼吸器初め様々な後遺症は、「ワールド・トレード・センター」の時等にも、情報を目にしたけれど、そのケアの不十分さ、という実態も、今回その一端ではあるけれど、改めて。

やはりハイライトは、お決まりのムーア自ら身体を張った突撃行動、9.11ボランティア病人達を引きつれて、何故かテロ疑惑での投獄者達が、至れり尽くせりの医療を受けている、というキューバのグアンタナモ捕虜収容所にボートで出向き、「せめてテロ容疑者と同等の治療を、救助活動した人々にもして欲しい」、旨拡声器で訴え、警報を鳴らされ、逃げるように向かったキューバの病院で手厚く治療を受け、アメリカにとって警戒する隣の社会主義国で、国内とは段違いの病人待遇を受けられた、というムーア作品らしいシニカルなパフォーマンス。

捕虜収容所は先月ドキュメンタリー「米国”闇”へ」で、そこでの投獄者への虐待ぶり、が摘発されていて、それと裏腹な、医療面での優遇、というのも奇妙な状況で、あの作品の(製作)影響で待遇が180度急変、とも考えにくいし、本作共に、どこまで真っ当な真実を伝えているか、という酌量はあるとしても、アメリカという国の矛盾、が垣間見えるような気も。

医療、という分野だけに内容・映像も「華氏911」程の過激さはないけれど、やはり膨大な資料からの、取材対象の選び方、編集の上手さ、巧みさ、という事もあるかもしれないけれど、基本的にヤラセはないとして、大国の弱点システムの確認作品、だった。

追記:ムーア作品「ボウリング・フォア・コロンバイン」で取材を受けていた、名優チャールトン・ヘストンの訃報が先日あったのだった。新聞社会面にも割と大きく。出演作で見たのは「十戒」「猿の惑星」等か、ケネス・ブラナーの「ハムレット」にも出ていたらしかった。「ボウリング・・」では「全米ライフル協会」会長として、という余り好ましくはない取上げられ方だった(http://www.asahi.com/obituaries/update/0406/)。(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%B3-%E3%83%9E%E3%82%米国”闇”へ('07)

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2008/4/11

サンダーバード(’04)  アメリカ

先週月曜夜放映の録画を見たジョナサン・フレイクス監督作品。マリオネット人形劇のTVシリーズの実写版で、子供の頃再放送だったのかもしれないけれど、モノクロの素朴な隊員達の人形や乗り物のおぼろげな記憶、内容は全く覚えていないけれど、テーマ曲は記憶と同じで郷愁。

サンダーバード号で日夜国際救助する父と息子たちの基地の島に、恨みを持つ悪漢が侵入して乗っ取り、まだ学生の末の息子が仲間の2人と、悪巧みを阻止しようとするSF冒険ファンタジー。一見、離れリゾート地のような美しい島、基地やジャングルを駆け巡る、若者達と追っ手のチェイス、後半のロンドン中心地での攻防等、正義感ポリシーでの機動隊、勧善懲悪ぶりがどこか懐かしいような展開。

空飛ぶ車、家具、ファッション、小物等全てピンクずくめの、一家の味方レディ・ペネローぺ役、ソフィア・マイルズがアクションも見せつつ、紅一点、優雅な味付け、スキンヘッドのベン・キングズレーが、近未来的不気味な悪漢ぶり、だった。(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%

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