
機上で 劇場でと ここ1ヶ月で結構な数の映画を観ている。
「Broken Flowers」や
「Constant Gardener」は充分お金を払って観るに値する映画だったと満足。(ただし、前者は我が身をオーバーラップさせ落ち込む場合あり。ジャームッシュだもの これからは言葉と言葉の空間に耐えられる人に薦めよう。)
そして昨夜は こちら特有の激しいトロピカルレインの中、DVDを借りて来て家でゆっくりすることにし、ずっと気になっていた
「MONDOVINO」を観た。もちろん 香港トランジットの際に買って来た 白ブルゴーニュを伴とする。
これが本当に面白い映画だった。そしてワインも 南ア生活ですっかり疎遠になってしまったブルゴーニュ、非常に美味しかった。
映画は 仏と米を中心にした世界のワイン市場とワインの作り手にまつわるドキュメンタリー。大きくはないけれど愛情を持って手入れされた 美しいワイン畑を歩きながら 昔からのワインの作り手たちが語る「ワインとは…」がとても意味深長。哲学的言葉たち。
それらの言葉を、自分勝手にワイン以外のものに置き換えたり ワイン作りについて話す父娘の関係に 自分自身と父との関係を重ねあわせなどもし 涙ぐむ最中、あの有名な
ロバート・パーカー氏登場。何故か 彼の年老いたブルドッグ「ジョージ」とともに笑わせる。(それにしても名前が「ジョージ」とは…。まさにこの映画にぴったりじゃないか)。
彼のメリーランド州片田舎の自宅 兼仕事場が思いのほか質素なのに驚き、あのカリフォルニア/ナパのロバートモンダヴィの大企業を思わせる姿が これがワイナリーの新しいスタイルかと認識しながらも ちょっと恐かったり(かくいう私も、ワインの味も知らなかった頃に訪れたことがあったりする)。ボルドーとブルゴーニュのマーケットへのスタンスの違いも 改めて思い知る。ボルドーワインの部分では 英クリスティーまで登場する始末。
マイケル・ムーアが単刀直入に物事を風刺する映画の撮り方をするとしたら、こちらは ずっと奥深いところで何か疑問を持ちかける…そういう映画の作り方。
ブルゴーニュの あとを継いだ息子が 新しいやり方でワインを作っていっていることに疑問を持つ頑固な父が、ワイン作りについて 自分に一番近い感覚を持っていると感じ始めている 別の場所で自分の信じるやり方で ワイン作りを始めた娘を訪れる。その時の会話での娘の言葉。
「最近ではブルゴーニュも 誰の口にでも合う 短期間で飲めるワインを作るようになってしまった。でも、私は自分が好きな ある意味 棘のあるようなワインを作りたいの。そしてとても長い時間をかけて やっと分かりあって飲めるようなワインをね…。…それってお父さんみたいなワインよね(笑。」
本日のワイン