「月刊秘伝2015・1月号・生涯一武術家 岩間統正の拳 我らが師 岩間統正」原文A
大道塾の大会でも太氣拳の動きで臨む様になっていました。
今になって考えると、太氣拳の形だけを真似ていたに過ぎず、動きの中身はほとんど備わっていない状態でよくあんなことが出来たものだと、我ながら無謀なことをしていたと思います。
しかし、両腕を前に出した独特の懐の深い構えに対戦相手が戸惑ってくれたこともあって、勝てた試合があったのも事実です。
試合の模様を報じる専門誌
いつだったかは正確に覚えてはいませんが、「もう大会は終わりにしてもいいんじゃないか」と言われたこともあります。
その時は何故、そのようなことを言われるのか、その真意がわかりませんでしたが、大会を目指して練習に取り組むのと、武術としての稽古に取り組むのとでは、目的が異なるということで、それは、現在よく理解できます。
又、怪我を推して稽古に取り組もうとしていると、「動物は、百獣の王と呼ばれるライオンや虎でさえも、ちょっとしたかすり傷でもあなぐらにこもって何日も動かずに傷が癒えるのを待つ。怪我をしていても練習しようとしたり、試合をしようとしたりするのは人間だけだ」とも言われ、ここでも競技試合を目的とした取り組み方と、武術としての稽古の取り組み方の違いを指摘されていたと思われます。
岩間先生との稽古では、その後の食事会も稽古の一環(?)で、ビールを飲みながら、先生のお話を聞かせていただいており、それが又、楽しみのひとつでもありました。
澤井先生との思い出話や他では聞けないエピソードや裏話、太氣拳や武道のこと以外でも、政治や経済の話、囲碁の話など、とても楽しい時間でした。
ある時、岩間先生が澤井先生に、「私は深夜、2階の寝室から階段を降りて1階のトイレに行く時、必ず壁側に身を寄せて辺りの様子を伺ってトイレに入ります。これって私はなんかおかしいんでしょうか?」と言ったそうです。
確かに夜中にトイレに行くだけでそんな行動をとるなど、昔の命を狙われている武士でもない限り、異常な行動かも知れません。
しかし、澤井先生は「武術家として一流の素質がある!」と賞賛されたそうです。
(続く)
月刊秘伝
http://webhiden.jp/magazine/2014/12/20151.php
太氣拳成道会
http://www.joudou.jp/

2