マスク着用によるスパーリングを経験して組み手に慣れてきたら次に、顔面のプロテクターをヘッドギアに替え、手には掌底も使えるようにシュートグローブを付けて行なう組み手と、素面にて手による攻撃は掌底までとする方式の二通りの組み手を行なう段階的に取り入れるようにした。
太氣拳では、顔面への攻撃は素面にて掌底までとする組み手を実践している所が多いと思われるが、拳が使えないと打撃の技術も限定される。
単に拳を掌底に替えればよいというものではなく、打撃の技術に大きな違いが生じてくる。
そこで、グローブ式と掌底式の両方をやってみて、双方の欠点を補いつつ組み手のレベルを上げてみようと考えた。
グローブを着用するといってもボクシンググローブで行うのと、オープンフィンガーグローブとでは異なってくる。
成道会では拳と掌底のどちらも使えるようにシュートグローブを採用した。
動画はグローブ式の組手。
マスクに比べて、顔への打撃に対しての警戒感は強まる。それでいてヘッドギアを装着することで、素面で行う場合に比べてそのリスクは減少される。
動画では激しく打ちあっているようにも見えるが、素面の状態に比べて顔が腫れたりすると云った外傷はほとんど無かった。
動画は私、馬原浩、井上顕雄、中野浩二、神谷泰による組み手稽古の模様である。
特筆すべきなのは、この当時56歳の馬原さん。
伝統空手五段、極真空手参段の実力の通り、組み手ではその両方の動きが見られる。
成道会ではその人の持っている武道経験が自由攻防の場で発揮されることを否定しない。むしろ、生かすべきと考える。
それにしても56歳にして、体格も小柄で決して恵まれているとは言えないのに、このような組み手稽古に参加するのは余程の信念がないと出来ないことであると思う。
その武術に対する真摯な姿勢は私も尊敬するところである。
しかし、現在の成道会では、年齢による怪我やダメージの回復を考え、50歳以上の組み手は顔面への攻撃は当て止めまでとすることを条件としている。
さらに、55歳以上の組み手は原則として行わないようにして、マススパーリングのみで実技を検証することを規定している。
組み手は必要だが、年齢に応じた武術の取り組み方を模索し、提案することも必要であると考えている。
太氣拳成道会
http://www.joudou.jp/

2