・『川崎展宏全句集 春』がふらんす堂から刊行された。これまで刊行された句集に加え、2009年11月に亡くなられた氏の晩年の句も収録されている。
http://furansudo.ocnk.net/product/1863
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作風は清涼にして瀟酒、即興・存問の俳句の本質をはずさず、虚子の「花鳥諷詠」を遠き地平に据え、「戦後俳句」を俳諧に徹して生き抜いてみせた俳人川崎展宏の全句集。清冽なる詩精神と古典への深い造詣、含羞の笑顔がとっておきの俳人だった。戦争の炎の苛烈なる残像は生涯消えることなく終始表現者展宏の胸中を貫き、それもまた俳句的主題のひとつであり続けた。
既刊句集六冊に「『冬』以降」を加え作品2356句を収録。
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私は栞文を書かせていただいた。
・大学二年生の頃だっただろうか。法学部の英語の教授だった星野恒彦先生の授業に、文学部の私もモグリで参加していたことがあった。星野先生は川崎展宏門下の俳人でもあり、法学部で俳句の授業を開講されていたのだ。
・星野先生に誘われて、川崎さんの「貂」の句会に出たこともあった。ほとんど参加者の句を取らない上に、句評もにべもないといった厳しさなので、驚いた。ただ、その後の飲み会のときには大変ににこやかに話をしてくださった。「相好を崩す」と言うが、川崎さんの笑顔によって私ははじめてその言葉を実感したような気がする。
・酒のつまみにぴったりだということで「だだ茶豆」という山形特産の枝豆を食べさせてもらった。私は今でも「だだ茶豆」は一番の肴だと思っている。
・しかし当時は酒の飲み方をわかっていなかった私は、美味しい日本酒を飲みすぎたせいで、生涯ではじめて「酔いつぶれる」という体験をしたのだった……。飯田橋の駅で動けなくなって、柱の陰に座り込んでふうふう言いながら道行く人たちを眺めていたっけ。
・酒豪だった川崎さんに知られたら、「あんなぐらいで」と呆れられるだろうなぁ。
・その後は私は一人のファンとして川崎展宏の作品を読み続けてきた。軽妙洒脱、しかしあくまで気高さを失わない俳句が好きだったのだ。全句集は座右の書にしたい。